義妹は妹キャラとして認めん!という俺に、義妹ができてしまった件。   作:荒井竜馬

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第15話 義妹VS幼馴染①

 翌朝、教室に向かうと視線が一気に集まってきた。

 

 まぁ、ある程度は想定していたけどな。

 

 結局、兄妹であることがバレてしまったので、美優とは一緒に登校することになった。

 

 一緒に登校することになった理由としては、『一緒に登校した方が兄妹感があるし、一緒にいーこーうーよー!!』と美優がごねてきたからだ。

 

あとは、別々に登校したらどこで美優が質問攻めにあうか分からなかったから。

 

 自分で兄妹の関係をばらした以上、最低限の責任くらいは取らないとな。

 

 ……まぁ、あとは美優のファンに俺がボコられるのを防止するためでもある。

 

 さすがに、一緒に登下校している所を俺だけ攫うような輩はいないはず。

 

 美優に同級生の義兄がいるという噂が落ち着く間までは、一緒に登下校をした方が互いにとってもいいと思う。

 

 クラスで美優が質問攻めにあうようなことは、貞治の立ち回りのおかげもあって、今の所見ていない。

 

 それなら、クラスで過ごすときくらい別々でいても問題はないだろう。

 

 そう思って、俺はこちらに向けられている視線を無視しながら、自分の席へと向かった。

 

 俺に倣うように、少し離れた窓際の席に腰を掛けた美優に視線を向けると、いつのまにか美優は学校モードの美優になっていた。

 

 美優の態度が人見知りよるものだということはクラスメイトにも伝わり、少し美優に対するクラスメイトの印象も変わったのかもしれない。

 

 美優に向けられている視線も、心なしか以前よりも親近感のような物が込められているように思えなくもなーー

 

「はーるーとっ!!」

 

「えぶっ!」

 

 俺がそんな考え事をしながら自分の席に座ろうと屈んだ瞬間、背後から可愛らしい声と共に、細い腕が首に巻き付いてきた。

 

 バッグハグとかいう可愛らしいものではない。食い込んできたその腕の形を見るに、その形がチョークスリーパーであったことが分かった。

 

 あれだ、朝から俺は〆られているのだ。

 

 そして、朝からこんな常識外れの絡み方をする人物は一人しかいない。

 

「ちょっ、ぎ、ギブだ! 夏希(なつき)!」

 

「なんだよ、もうギブとは情けない」

 

 俺が何度もタップすると、夏希はゆっくりとチョークスリーパーしていた腕を緩めた。

 

 中腰できつくなっていた体勢から解放されて、俺はそのまま椅子に腰を下ろして呼吸を整えていた。

 

「あれ? 顔真っ赤じゃん、春斗」

 

「息が止まると、人は顔が赤くなるんだよ。覚えとけ」

 

 俺は首元を触りながら振り返って、そこにいる女の子の方に視線を向けた。

 

 栗色の軽くウェーブのかかったショートボブ。くるりとした大きな目からは、活発な性格がひしひしと伝わってくる。

 

 豊満な胸元と少し大きめのお尻は、高校生離れしたスタイルをしており、多くの男子の注目の的になっていたりもする。

 

 宮原夏希。一目見れば分かる陽の素質を持った女の子だ。

 

「あっ、もしかして、一瞬当たった胸の感触を堪能してたな? いやらしいー」

 

「……頼むから話を聞いてくれ」

 

 確かに、締め付けられたときに背中に当たる双丘の感触を意識してはいたが、堪能するには酸欠状態というのは好ましくない。

 

 今度からは別のやり方を試みてもらいたものだ。

 

「油断してる春斗が悪いんだぞ」

 

「理不尽過ぎるだろ。ていうか、高校入ってから、こんな絡み方はしてこなかっただろ。なんで急に昔みたいな絡み方してきたんだよ?」

 

 なぜ彼女のような陽の人間が、俺なんかに絡んでくるのか。

 

 それは俺と彼女の出会いが高校からではないからだ。すでに顔見知りだったこともあり、クラスでも結構会話をしたりする女の子だったりする。

 

 だが、こんなふうに絡まれたのは久しい。

 

 というか、高校に入ってからこの絡み方をされたのは初めてだ。

 

「いや、こっちの方がちゃんと吐くかなって思って」

 

「なにお前、朝から俺に吐しゃ物ぶちまけさせるのが目的だったの?」

 

「違うっての。……雪原さんとの関係とか、私知らなかったんだけど」

 

 夏希はそう言うと、視線を俺から窓際の席に方に向けた。

 

 俺も倣うようにそちらに視線を向けると、そこにはこちらに冷たい視線を向けている美優の姿があった。

 

 氷点下くらいまで下がりきった瞳を向けられて、俺は喉の奥の方が締まる感覚に陥った。

 

「……ひゅっ」

 

「どうしたの?」

 

「いや、気のせい、だよな?」

 

 なんか驚くあまり変な声が出てしまった。

 

 そうだ。氷姫と言われるくらい美優は周りに対して素っ気ない態度を取ってしまったりするのだ。

 

 だから、今のもその一環。……そういうことで、いいんだよな?

 

「それでぇ? 同い年の男女二人が一つ屋根の下。何か起こらないはずがないですよなぁ」

 

 夏希はそう言うと、演技がかったような声色で俺の肩を揉みながらそんなことを言い始めた。

 

 なんか知らないうちに変な茶番劇が始まったようだ。

 

「お姉さんに教えてみ、思春期の弟のために私が相談に乗ってあげよう」

 

「お姉さん? お姉さんっていうよりも妹だろ?」

 

 俺が鼻で笑いながらそんなことを言うと、どこか遠くの方でガタッと椅子が激しく動く音が聞こえてきた。

 

 俺には関係のないことだろうと思い、俺はそのまま言葉を続けた。

 

「わんぱくで、道も分からないくせに勝手にどこかに行くから、俺も苦労しーーどうした?」

 

 俺の肩を揉んでいた夏希の手が止まって、代わりにビクンと小さくその手が跳ねた気がした。

 

 首だけ夏希の方に振り向いてみると、夏希は俺ではなくなぜか前の方に視線を向けていた。

 

「いや、春斗。前、前」

 

「前?」

 

 夏希に言われて視線を向けてみると、そこにはいつ間にか俺の前にやってきていた美優の姿があった。

 

 あれ? さっきまで自分の席にいなかったか?

 

「春斗君、随分楽しそうだね。宮原さんのこと、『妹』の私にも紹介してもらえる?」

 

 やけに『妹』というワードを強調したような美優は、作ったような笑みを浮かべながらそんな言葉を口にしていていた。

 

 え? 今これ何が起こってるの?

 

 もしかして、俺が夏希と仲良くしてたから嫉妬をして……いや、何か違う気がするな。

 

 ただの嫉妬ではない何かの感情。対抗心?

 

 そんなよく分らない感情を燃やしている美優と、それに対して正面から向かい合おうとしている夏希の姿がそこにはあった。

 

 

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