義妹は妹キャラとして認めん!という俺に、義妹ができてしまった件。   作:荒井竜馬

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第17話 兄妹での下校

「…………ごめんなさい」

 

 学校からの帰り道。登校して数分後に結構な盛り上がりを見せてしまった美優は、おもむろにそんな言葉を口にした。

 

 朝の出来事を思い出したのか、その顔は思い出しただけで真っ赤になるほどだった。

 

そして、その出来事は顔を両手で隠すほど恥ずかしかったものらしい。

 

「いや、まぁ。友達出来たからいいよ」

 

「え、あの状況で? どういう意味?」

 

「そのままの意味」

 

 美優からしたら俺に迷惑をかけてしまったと思っているのだろう。

 

 俺からしたら、高校に入って同士がわんさか釣れたので、少し嬉しかったりもした。

 

 ラクビー部の宮迫、天文学部の飯田。きっと、彼らとは今後も妹談義に花を咲かせることになるだろう。

 

「迷惑かけてない?」

 

「いや、別にそんなことはないさ。結論、羨ましがられただけだったし」

 

「羨ましい? あの状況で?」

 

 俺の言葉を受けても、美優はどうも納得していないらしかった。

 

 あの状況であんな言葉を口にして、羨ましがられる意味が分からないと言った様子。

 

 まぁ、分からないからこそ、無自覚であんなパワーワードを放ることができたのか。

 

「『い、家ではちゃんと『お兄ちゃん』って呼んでるもん!』。……中々妹度高めの発言だったぞ」

 

「~~っ! そ、そんなつもりで言ったんじゃないんだけど!?」

 

「だから、良かったんだろうな。妹萌えの一端を見た気がする」

 

 美優は無理やりその時の様子を思い出させられたせいか、今朝と同じように頬の温度を上げていた。

 

 美優はその熱に当てられたように揺れている瞳をそのままに、抗議をするように顔をぶんぶんと横に振っていた。

 

 家では甘えてくる妹が、外でもその一端を見せるという描写。

 

これはですね、中々妹度が高めの案件なんですよ。はい。

 

 画面越しだったら確実に悶えてたね、うん。

 

「……それは、お兄ちゃんも萌えたの?」

 

 俺が余裕の表情で微笑んでいたのが気に食わなかったのか、美優は少し食って掛かるようにそんな言葉を口にしてきた。

 

 俺が優位な位置から美優の表情を眺めていたのが、気に食わなかったのかもしれない。

 

「ねぇ、どうなの?」

 

 ぐいっと距離を詰めて近づいてきた朱色に染まった顔。

 

突然詰められた距離を前に、俺は距離を取ろうとしたのだが、美優はそれを許さないらしく、俺の制服の袖を掴んできた。

 

 微かにむくれるようにしながら、下から覗き込むような視線を向けられて、俺は確実に体温が上がっていって行くのを感じた。

 

 これ以上見つめられると、立場が逆転してしまうと思った俺は、美優から視線を逸らしながら誤魔化すように言葉を続けた。

 

「い、妹好きとしてな。萌えないわけがないだろうよ」

 

「ふーん……そっか」

 

 美優はそう言うと、意味ありげな余裕のある笑みを浮かべて、掴んでいた俺の袖を離した。

 

 小さく鼻歌でも歌いそうな横顔を前にして、立場が入れ替わったのは明確だった。

 

「な、なんだよ」

 

「別に、なんでもない」

 

「絶対、何でもないことはないだろ」

 

 これ以上言及してもこちらが劣勢になる。そんなことも冷静に判断できなくなった俺は、美優の余裕を崩そうと躍起になっていたのかもしれない。

 

 そんな俺の態度を横目で確認すると、美優は少しだけ考える素振りを見せた後、口角を少しだけ上げて言葉を続けた。

 

「理想の妹に近づけた気がして、嬉しいって感じかな?」

 

 大人びた表情でそんなことを言われてしまい、俺は今ごろになって自分が劣勢に立たされていることに気がついた。

 

「っ」

 

「あっ、お兄ちゃん、照れてる?」

 

 気づいた時にはすでに遅く、逆に美優に責められるようになっていた。

 

 距離を取ろうとすれば、それ以上に詰められることが分かっていたので、俺は視線だけを美優から逸らして言葉を続けた。

 

「や、やめろ。妹が照れるのに需要はあるが、兄が照れるシーンに需要はないんだよ」

 

 自分でも何を言っているのか分からなくなったころ、制服のポケットに入れていたスマホが震えたのが分かった。

 

 話題を変えるのにはちょうど良いタイミング。俺は慌てたようにスマホを取り出して、その画面を覗いた。

 

 すると、そこには家族用のチャットアプリに数件のメッセージが入っていた。

 

「あ、父さんたち、今日帰り遅いみたいだな。どこかで外で食べてきちゃえだってさ」

 

 入っていたのは父さんと明美さんからのメッセージ。帰りが遅いからご飯はいらないとのこと。

 

 帰りが遅いだけなら、この旨のメッセージは来ないので、多分自分達も外食してくるから、俺たちも外で食べてこいとのことなのだろう。

 

「それじゃあ、少し家で休んだらファミレスでも行く?」

 

「だな、そうするか」

 

 せっかく、外で食べて来いというのなら、その好意に甘えることにしよう。

 

 幸いなことに、家から遠くない距離にファミレスがあるし、そこで軽く食べるのがいいだろうな。

 

 そう思って、俺たちは帰宅して少し経ってから、夕食を食べに家の近くのファミレスに向かったのだった。

 

「「あっ」」

 

「え? あ、春斗じゃん。それに、美優ちゃんも」

 

 そして、家の近くの飲食店に向かうという行動が、俺たちの近くに住む住人と被るということは考えもしなかった。

 

 ファミレスに入ると、そこにはさっきまで同じ教室にいた夏希の姿があったのだった。

 

 一人でファミレスにやってきた顔見知りのクラスメイト。そんな人物と遭遇した場合、どうなるのか。

 

 当然、席はご一緒になってしまったりするのだった。

 

 

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