義妹は妹キャラとして認めん!という俺に、義妹ができてしまった件。   作:荒井竜馬

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第22話 兄妹お出かけデート③

 なんか下手に動いたら、怪しい気がして俺は試着室に背中を向ける形で美優の着替え終わるのを待つことになった。

 

 すぐ後ろで聞こえるのは衣擦れの音。すとんと何かが落ちるような音は、ジーンズスカートが床に落とされた音だろうか?

 

カーテンで仕切られただけという状況が、衣擦れの音によって勝手にその景色を妄想で補完しようとしてくる。

 

そんな邪念でまみれた思考を頭を振ってかき消そうとするが中々消えず、すぐ後ろで同い年の女子が着替えているという状況に動揺を隠せないでいた。

 

 ……なんでこんなことになったんだ。

 

あれ? そういえば、前に義妹ならではのイベントがあるって教えたことがあったな。

 

 確か、その時に夏希とお着替えとかお風呂を一緒に入ったことについても問われた気が……なるほど、そういうことか。

 

 なんで急に水着を買いに行くことに付き合わされたのか、その本当の理由について、俺は一つの解を導き出すことに成功していた。

 

 それから少しして、背後からカーテンが開かれる音が聞こえてきた。

 

「えっと、着たんだけど、どうかな?」

 

 美優に言われて振り返ると、そこには淡い空色の水着を着た美優の姿があった。

 

 空色の小さなフリルを拵えてあるビキニに包まれた乳房は、綺麗な形と女性らしい膨らみを露にしていた。

 

 下に視線を映せば、白くて程よく引き締まった脚がすらりと伸びていて、思わず生唾を呑み込みそうになってしまった。

 

 ていうか、美優って着やせするタイプだったのか。

 

 普段も胸が小さいと思ったことはなかったが、こうして水着姿になるとその大きさに少し驚きもした。

 

「お、おう、可愛いんじゃないか」

 

「そ、そうかな?」

 

 俺が当たり障りのない言葉を口にすると、美優は恥ずかしそうに視線を逸らしながらも、口元を微かに緩めていた。

 

 まぁ、可愛いと言われて嫌な女子はいないよな。実際に、似合っているし。

 

「……それにしても、考えたな」

 

「考えた?」

 

「ああ」

 

 美優は俺が何のことか分からないのか、きょとんと小首を傾げていた。

 

どうやら、まだバレていないと思ているらしい。

 

俺は小さく笑みを浮かべると、先程行き着いた答えを推理小説の主人公のように語りだした。

 

「これは、義妹ならではのイベントってやつだな? 夏希みたいに一緒にお着替えも、お風呂も入れない。そこで、それに変わるイベントで代用しようと思ったんだ。それが、水着を選ぶというイベント。このイベントは、美優が俺のすぐそばで着替えることで、衣擦れの音を奏でて、俺に美優が着替えている所を妄想させる効果がある。そして、海でもプールでもない所で、裸に近い体を晒す。これは、お風呂とまではいかないまでも、更衣室内で裸になることから、お風呂イベントに近いイベントと言えなくもない。何よりも、義妹の水着姿を見て何も思ないわけがないからな。お風呂イベントに近い興奮を覚えるイベントだ」

 

 俺は犯人を追い詰めるように、無駄に周辺を歩いた後、ぴっと人差し指を美優の方に突き立てた。

 

「つまり、今回の水着選びは義妹ならではのイベント。理想的な兄妹に近づくための、イベントだったって訳だ。違うとは言わせんぞ?」

 

 決まった。

 

 俺は水着姿の美優にどや顔を向けて、全て気づいていたふうを装うように口元を緩めた。

 

「……へ?」

 

「あれ?」

 

 しかし、目の目にいる美優は犯行がバレたような犯人の顔でも、犯行を誤魔化そうとして慌てるような顔ではなかった。

 

 ただ純粋に言っていることの意味が分からないと言った様子。

 

「え、え? 着替えてる所を妄想? 興奮を覚える?? ……あっ」

 

 そして、俺の言葉を思い出した後、その顔をみるみるうちに赤くしていった。耳の先まで赤くした頃には、控えめに自らの体を抱くようにして隠そうとしていた。

 

 これは……やっちまったみたいですな。

 

「いや、ち、違くてだな。……いや、だめだ、違くはないのか」

 

「~~っ!」

 

 俺が犯行を認めると、美優は抑え込んでいた羞恥の感情が溢れてきたのか、微かに潤ませた瞳でこちらに睨むような目を向けていた。

 

 辱めに遭わされたような表情。気まずさと後ろめたさから、俺は目を逸らして深く頭を下げていた。

 

「ご、ごめん」

 

「も、もういいから……顔上げて」

 

 美優にそう言われて顔を上げると、美優は自らの体を隠すようにしていた腕を後ろ手で組んでいた。

 

熱を帯びているような瞳を揺らしながら、その視線はこちらから逸らしていた。

 

「おかしくは、ないんだよね?」

 

「お、おかしい? えっと、なにが?」

 

「水着。その、お兄ちゃんが変な目で見ちゃうくらい、似合ってるってことだよね?」

 

「も、もちろん。いや、もちろんって言うのは、変な意味じゃなくてだな。いや、変な目で見ていたことは否定できないんだけどーー」

 

「わ、分かった。分かったから」

 

 美優はそこまで言うと、こちらに背を向けて試着室のカーテンを閉めた。

 

 それから、しばらく物音がしないなと思っていると、美優が少し大きめの咳払いを一つした。

 

「これ、買うからお兄ちゃん先に、店の外に出てて」

 

「お、おう」

 

所々声を裏返しながらの美優の言葉に従うように、俺は水着売り場を急いで後にすることにした。

 

「……お兄ちゃんのえっち」

 

 更衣室越しに小さく呟くような言葉が聞こえた気がしたが、俺はそれに気づかないフリをして更衣室から離れた。

 

 水着売り場から出て、俺はすっかり熱くなってしまった体を冷ますように、深い息を吐いていた。

 

「『……お兄ちゃんのえっち』は、さすがに妹過ぎんだろ」

 

 最後の最後で右ストレートを顔面に入れられて、俺は一人心の中で激しく悶えることになったのだった。

 

 

 

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