義妹は妹キャラとして認めん!という俺に、義妹ができてしまった件。   作:荒井竜馬

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第9話 ブラコン妹の朝

「――お兄ちゃん、お兄ちゃん」

 

「んんっ」

 

 小さく肩を揺らされながら、聞こえてくるのは俺を呼ぶ優しい声だった。

 

 アニメか、ゲームかをつけたまま寝てしまったのかと思って、俺はその声に誘われるように目を開けた。

 

 すると、そこには制服姿で黒髪ツインテールの女の子が立っていた。

 

 少し幼く見える髪型が少女の魅力を掻き立てて、歳は近いはずなのに、未だにブラコンが抜けきらない『お兄ちゃん大好き妹』の仄かな香りをさせていた。

 

「お兄ちゃん、そろそろ起きないと遅刻するよ?」

 

「……ん?」

 

 朝目が覚めると、そこには制服姿で俺のことを『お兄ちゃん』と呼ぶ女の子が、俺を起こしに来てくれるという状況。

 

 つまり、そういうことだろう。

 

「俺が知っているゲームの世界に転生した系、ってことか。まぁ、俺なら迷わず妹ルートに突き進むわけだが」

 

「お兄ちゃん?」

 

 分からない点があるとするなら、この目の前にいる妹は誰だろうか?

 

 あらゆる妹が攻略対象のゲームを嗜んできた俺からしても、このキャラクターがいる世界は知らないな。

 

「ん? もしかして、美優か?」

 

「もしかしなくて、もそうだけど? なんだと思ったの?」

 

 美優は俺がおかしなことを言いだしたかのように、眉に少し力を入れて小首を傾げていた。

 

 それに合わせるように揺れるツインテールを見ながら、俺は見慣れた美優の面影と目の前にいる美優を見比べていた。

 

 なるほど、確かに美優だな。

 

「いや、ついえっちなゲームの中にでも転生したかと思ってしまってな。あっ……なんでもなに、忘れてくれ」

 

「……なんで初めに出てくるのが、えっちなゲームなの?」

 

 ついぽろっと出てしまった言葉を拾われてしまい、美優はこちらにジトっとした目を向けていた。

 

 寝起きでする発言としては、少々パンチが強すぎたかもしれない。

 

 というか、このままでは俺が変態みたいに扱われてしまう。

 

 そう思った俺は、慌てて誤解を解くことにした。

 

「ち、違うんだ! 別にえっちなゲームをやりたかったんじゃなくて、実妹ヒロインってもうエロゲとかえっちなジャンルの中くらいしかいないんだよ! だから、何が言いたいかって言うと……よ、世の中が悪いんだ!!」

 

「いや、そんな理由で世の中を恨まれても」

 

 美優は俺の反論に対して、ジトっと向けていた目をさらに強くさせていた。

 

 確かに、美優のような一般人からしたら、どうでもいい話題なのかもしれない。ただ、我々実妹派からするとこれは由々しき事態なのだ。

 

 もう、アニメーションで実妹とのラブコメを観るような未来はやってこないのだと思うと、押し寄せてくる悲しみで胸が苦しくなるのだ。

 

 俺は続けてそんな反論をしようと思ったが、今の段階で引かれ始めているのに、これ以上突き進むのは悪手だろうと思い、俺はその思いを胸の奥にそっと隠したのだった。

 

 しかし、俺はそれ以上何も言っていないというのに、美優はため息を吐きながらツインテールをほどき始めた。

 

 もしかしたら、あまりにも俺の発言が気持ち悪かったのだろうか?

 

「え、ツインテールほどいちゃうのか?」

 

「うん。なんかブラコン妹に起こされるシチュエーションっていうのがあったから、やってみたかったの。ブラコン妹っていうと、ツインテールなのかなって思って」

 

「まぁ、あながち間違ってはいないか」

 

 古典的な妹。妹のテンプレートとしてツインテールというのは外せない。おそらく、遺伝子レベルで刻み込まれた共通認識なのだろうと、俺は思う。

 

「学校にはしていかないのか?」

 

「いきなり学校にしていくのもあれかなって……あれ? なんか少し残念そう?」

 

 美優は俺の表情をきょとんとした顔で見つめていた。どうやら、テンプレートと言いながら、俺は顔に出てしまうほど美優のツインテール姿に見惚れてしまっていたらしい。

 

「残念ではないかと言われれば、嘘になる、かな」

 

 さすがに、これだけ色々反応しておきながら、認めないのは潔くないだろう。

 

 そう思って認めてみると、微かに美優の頬が朱色に染まったような気がした。

 

「素直でよろしい。じゃあ、素直に答えてくれたお礼に、家ではたまにしてあげてもいいかな」

 

 そういうと、美優はくすりと笑った。

 

 ブラコン系妹がたまに見せる、少しだけ大人びたような笑み。それを自然とやってのけるほど、美優はブラコン系妹に入り込んでいるらしい。

 

 だから、そんな義妹の表情に心を揺さぶられるのは当然のことなのだろう。

 

 俺はそんなことを一人胸の中で思うのだった。

 

 

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