ブルーアーカイブ 転生者によって歪められた青春の記録 作:雨の日
トリニティ総合学園は1年前の百合園セイア暗殺事件から表面上はいつも通りの状態を取り戻していた。セイアの暗殺は当時の上層部とその日夜間のパトロールをしていた正義実現委員会の人間以外には知られておらずミネの片腕欠損による救護騎士団団長の辞退という大きなニュースで広がるのを抑えていた。
セイアが学園にいないことを不審に思われないようにセイアは生来の病弱さからとある場所で療養することになったことを発表しサンクトゥス分派は派閥の長になる人を改めて選ぶことになった。
「誰にしましょう?」
「セイア様は未来が見えているような正確な采配をなさっていましたが私たちにはそのようなことは・・・・・・」
「ほかの派閥との力関係などを考えますと・・・・・・」
「トラブルを起こさなそうな人にしませんと・・・・・・」
「そうですわね。今代のティーパーティーのホストは私たちサンクトゥス分派になるのですから・・・・・・」
ティーパーティーのホストになるということはたくさんある派閥の力関係などを考慮してバランスよく統治する能力が必要になります。分派ごとの地雷に触れないようにするために歴史に詳しく行政を円滑に回すコミュニケーション能力が高いものほど適任です。
ただ、ホストになればある程度好きに規則などを作ることもできるし弾劾するのも中々難しいので自派閥やホストになったものに利益を誘導することもできる。そのため派閥の長になるために水面下での暗闘がサンクトゥス分派の内部で繰り広げられた。
根も葉もない噂を流したり、賄賂や脅迫など大人顔負けの政治闘争を行いサンクトゥス分派は次第に分裂していった。セイアが代表の時はセイアの病弱体質により自分たちでセイアを補佐するんだとまとまりを見せていたのだが今では見る影もない。
「このままだとほかの派閥にホストをとられてしまいますわ」
「それだけは阻止しないといけませんわね」
「ですが下手な人選をすると桐藤様に吞まれてしまう可能性が・・・・・・」
フィリウス分派の長である桐藤ナギサは人たらしであり行政能力も高くホストとしての適性が高い。サンクトゥス分派の長の選出が長引くとナギサが代わりにホストになる可能性が高い。そうするとフィリウス分派に本来サンクトゥス分派が得られたものが行く可能性がある。
これはサンクトゥス分派内でのただの妄想だがおこらないと否定することはできない。人は立場によって変わったりするしほかの分派なのでナギサについて詳しくなく自分たちならやるからナギサもホストになったらやるだろうという決めつけがあった。
ただ、普段のナギサの様子を見ているため自分たちの傀儡としておくった人がナギサに奪われてしまう可能性が高いこともわかってしまう。綺麗で頭も回り多趣味なため様々な方面に伝手がある。そんな人に迫られて落ちないような精神力が高い人物を選ばないといけない。
「ウルさんはどうでしょう?」
「ウルさん? でもウルさんは・・・・・・」
ウル、フルネームは泊ウル。泊家の令嬢で実家は主にホテル経営を行っている。ウル最大の特徴は全盲であることだ。キヴァトスは銃社会でよく銃撃戦が起こるため流れ弾がとんでくることもありウルにとっては正直生きづらいところだろう。
全盲という障害を除けばウルはホストに適した能力を持っている。学力は学年でもトップクラスだし運動も視覚の代わりを聴覚で補いこちらもトップクラス。物腰も両親の教育がよかったのか柔らかく何かと相談しやすい。
「セイア様も似たようなものだったでしょう?」
「確かにそうですが・・・・・・」
「いえ、病弱と全盲は全然違うと思うのですけど」
「何かしら欠陥があるというのは同じでしょう?」
「そんな言いかたはお2人に失礼でしょう」
「・・・・・・そうですわね。すみませんでしたわ」
「ウルさんは頭もいいし性格も悪くない。それに戦闘能力もあの体で私たちよりも高いですしいいのではないでしょうか?」
「確かにそうですわね。派閥の長に戦闘能力は関係ないですけどここでは必要になることもありますものね」
全盲という特徴から弱そうに見えるウルだがトリニティでも上澄みの実力者であったりする。視覚の代わりに発達した聴覚によって銃弾を撃ってきた音でスナイパーの位置を逆探知したり足音から相手の位置を把握したりなどしている。
「異論がある方はいらっしゃいますか?・・・・・・ないようですわね。ならさっそく伝えに行きますわ」
「そういえば今日はお見かけしていませんでしたけど今どちらに?」
「ウルさんは今日は定期健診の日ですわ」
「そうでしたの」
「本人不在の場で決めてよかったのでしょうか?」
「ウルさん本人からどんな決定になろうと従うという言質はとっていますわ。だからこの会議が今日開催できたんですもの」
「ならいいのですけど・・・・・・」
長い話し合いの末、ウルにサンクトゥス分派の長になっていただくことに決定し翌日にウルにその旨が伝えられた。ウルは自分が選ばれるとは思ってもいなかったようでかなりびっくりしていた。
「書類仕事とかどうすればいいんでしょう?」
「そこらへんはこちらでサポートいたしますわ」
「・・・・・・わかりました。決定には従うといっていましたし」
「ウルさん、いえウル様と今後は呼んだ方がいいのでしょうね。ウル様、ティーパーティーのホストとしてのお役目をしっかりと全うしてくださいませ」
「この身がどこまで役立つかわかりませんが全力を尽くしてまいります」