ブルーアーカイブ 転生者によって歪められた青春の記録 作:雨の日
不良集団との戦闘後その場所にいた全員の視線は紅に向いた。紅も視線を向けられる理由がわかっているので顔色一つ変えずにどうするか考える。ここで種明かしをしても問題ないか。種明かしするならどこまで説明するかなどを。
「・・・・・・私の使っている技術は機密ではないので説明してもいいのですが流石にこの往来では・・・・・・」
「そうですね。誰に聞かれているかわかりませんし。不知火様。防諜の整った場所に心当たりはありますか?」
「ええもちろん。では移動しましょうか」
往来で説明するのは流石に怖かった。ミレニアムや犯罪組織のハッカーであれば普通にそこらの監視カメラをハッキングしたりして情報を抜いてくる可能性があるためだ。そのことがわかっているカヤはすぐに近くにある施設に移動することにした。
その道中、霞沢ミユは奇妙な感覚を味わった。何かが自分の体を通り抜けていく感じがして前や後ろを向いても特に何も見えない。ただ決まって感じた後周りにいる誰かと目が合う。その目がまるでそこにミユがいることを確かめているようで不気味だった。
「ここならいいでしょう」
「そうですね。ここなら問題ないですね」
カヤが案内したのはヴァルキューレ警察学校だった。確かにここなら防諜施設もあるだろうし問題はないだろう。ただ職員が犯罪者と癒着していたりするので油断はできない。カヤはそのことを見た限り知らないみたいだが。
「それで? 紅さん、説明お願いできますか?」
「・・・・・・まず前提知識の確認をしましょうか。みなさんは神秘って知ってますか?」
「神秘?」
「・・・・・・はい。ヘイローを持つ学生たち全員が持っているエネルギーのことです」
「えーと・・・・・・」
カヤは頭を回転させる。神秘についての情報はある大人との取引によって得ていたがその大人もこちらを騙そうとしているような悪い大人だったため正直あまり信憑性の高いものではなかったからだ。
「・・・・・・神秘は個々人で違うのですが共通しているものもあります。それはエネルギーであること。人体から放出されることです」
紅はそういうと目を閉じて下を向く。すると紅の体から紅い光が放出され始めた。周りにいたラビット小隊は驚きながら紅に銃を向ける。
「・・・・・・これが神秘操作の基礎の基礎。神秘の可視化です。わかりやすいでしょう?」
「この体から出ている光が神秘だということですか?」
「・・・・・・そうです。皆さんも可視化していないだけで体から無意識に神秘を放出しているのです。この放出している神秘により銃弾の威力を落としたり銃弾の威力を上げたりしているんです」
紅は近くにいたミユの体に触ると光がミユの体に接触した部分から銀に色が変わり全員の視線がミユに向く。存在感が薄いミユは紅に気づかれないように近づいていたのだが紅にはバレていたようだ。
「興味深いですね」
「・・・・・・神秘操作をしっかり習得すればここにいる面々であれば私と同じように戦車を一撃で破壊することも可能です」
「本当ですか!?」
カヤは自分の戦闘能力の低さに思うところがあったのか紅の言葉にくいついた。口には出さないがラビット小隊も同様だった。戦車を一撃で破壊できるというのはそれだけ魅力的なものなのだ。
「・・・・・・泊様、こちらに数日滞在する許可をいただけますか? 間違った覚え方をするとかなり危険ですので」
「そうですね・・・・・・いいでしょう。サンクトゥス分派への教授は・・・・・・」
「・・・・・・泊様の許可があれば翠がやる予定です。フィリウス分派は桐藤様の許可があれば碧がやる予定です」
「えーと・・・・・・パテル分派以外には教えていなかったんですか?」
「・・・・・・ちゃんとした教え方を確立したのが高等部に上がった時でしたので・・・・・・」
紅はそこで言いよどむ。紅は高等部に進級してすぐにパテル分派に入ったため派閥闘争によりほかの派閥に教えることができなくなっていた。すぐにそのことにカヤは思い至った。
「神秘はほかにどんなことができるんですか?」
「・・・・・・基礎だけならここでもできるので実践させていただきます」
紅はそれからいくつか基礎だという技を見せた。ミユが道中で感じていた奇妙な感覚は紅やほかの随行員が周りに誰かいないか索敵するために自分の神秘を一定範囲に広げた円という技だった。他にも神秘を1か所に集めてその場所の防御力を上げる硬や神秘を体外に放出するのを止めて気配を断つ絶など色々な技があった。
「霞沢さんは常時絶状態といっても過言ではないですね」
「・・・・・・そうですね。自動ドアが反応しないというのはちょっと違うかもしれませんが人に気づかれにくいという点では同じですね」
ミユの存在感のなさも無意識に絶に近いことをやっているのではないかというウルの問いに紅はちょっと引っかかる部分もあるようだが同意した。一応絶状態を極めれれば機械が反応しないというのはあるかもしれないが1年生でそこまで極められるのはよほどの才能持ちしかいない。そんな才能がミユにあるとは思えなかったのだ。
「・・・・・・SRTに入学できているのですしそういう才能があってもおかしくないのかもしれませんね」
「連邦生徒会長は相手の才能を見抜くのもすごかったということでしょうか」
「・・・・・・すごい人ではあったのでしょうが自分がいなくなった後の引継ぎなどを考えていなかった点は評価できません。学生である以上いつかは卒業しいなくなるのですから」
「・・・・・・確かにそうですね。私たちはそのことを全く考えていませんでした」
カヤは紅の言葉を受けて自分の至らなさを改めて感じていた。連邦生徒会長は超人といっていい人物だった。誰もが彼女についていけば問題ないと思考停止していた。特に今の連邦生徒会の室長にはそういう人が多く自分もその1人だった。
だからこそ連邦生徒会長が失踪した今連邦生徒会はほぼ機能停止状態に陥っている。サンクトゥムタワーの制御権を失い業務が滞り始めSRT閉校なんて馬鹿な案が出てきて通りそうになっている。
カヤは連邦生徒会長のように自分がなれるとは思っていない。だが誰か引っ張っていくリーダーが今の連邦生徒会には必要だと感じていた。それは今の連邦生徒会会長代行の七神リンには務まらない。リンは前に積極的に出ていくタイプではないためだ。なら自分がやるしかない。ただそれには力が足りない。神秘操作の習得は自分に足りない力になるとカヤは判断した。
「・・・・・・DU地区の治安維持と神秘操作の訓練を並行して行うのは大変ですのでまずはヴァルキューレだけで何とかなる状態まで改善してからですね」
「不知火様、頑張りましょうか」
「ええ」