ブルーアーカイブ 転生者によって歪められた青春の記録 作:雨の日
百合園セイアのヘイローが消えたことを確認したb班の班長はそれでも警戒しながらその体に近づき脈などがすべて停止していることを確認した。
「・・・・・・任務完了だ」
「そ、そんな・・・・・・セイア様」
自分の目の前で死亡したセイアを思い涙を浮かべるミネを無視して班長は無線機をとりだした。そしてそれをc班の班長に渡した。c班の班長は接近戦をよくするため無線機を基本スナイパーに管理してもらっているからだ。
隊長への報告はすんなり終わり、報告中にミネが気絶したためb班の班長が拘束を解き地面に寝かせた。そしてどうするか話し合うことになった。
「私が行ったことを上層部に伝えてもらわないといけないから殺すのはまずいな」
「ああ、隊長も消息不明なだけだからといっていたしな」
「でも人前に当面出られない傷ってどのくらいだ? というか、ここの学生だとよっぽどじゃないとすぐ回復しそうなんだが」
「そうだよな」
班長達は意見を出し合うが中々いい案が出ない。いっそ殺すかっというふうにb班の班長が再度提案しようとしたとき、少し離れた位置で周りを双眼鏡で警戒していたb班の班員が班長達のところに走ってきた。
「報告!」
「どうした?」
「正義実現委員会の隊員が近づいてきてます!」
「戦闘もしたし結構音をたてたからな。いつ来てもおかしくないとは思っていたが・・・・・・」
「タイミングが悪いな」
「どうにかできそうか?」
「4人以上いるので厳しいかと」
「そうか」
正義実現委員会の人員も少数なら問題ないが4人以上いれば応援を呼ばれる可能性がある。走ってきたということは本当に時間がない。班長達は顔を見合わせて一つ頷くとミネの体をc班の班長が俵担ぎして報告があった方とは逆の方に走りだした。
「全班員に連絡! 散開して集合地点の近くの広場に集合! 正義実現委員会をまくぞ」
「全班員に連絡! こちらも散開して集合場所の近くの広場に集合! こちらは仕留められそうなら正義実現委員会を攻撃してもよし!」
「了解!」
b班とc班はそれぞればらばらに分かれながら集合場所に向かっていく。時々、後ろを確認し正義実現委員会がいないか確認しながらのその行動には慣れを感じさせた。まるで何かから逃げてきたことがあるかのように。
c班はほぼ大楯使いのためパトロール中の正義実現委員会生を気絶させるためには身をさらさないといけないため攻撃許可はおりなかった。だがb班は許可ができたため走りながら隠れられそうな場所を探す。
「・・・・・・あそことかどうかな?」
「いや、あそこは気づかれたら逃げ場がない。やめておいた方がいい」
「そうだそうだ」
ばらばらに逃げていたb班とc班は徐々に集合地点に近づくごとに合流していき最後の直線では全員がそろっていた。武器を構えながら油断なく走る集団は夜中に似つかわしくなく目立っていた。
「・・・・・・ん?」
案の定近くにいた正義実現委員会生に気づかれそうになる。ただその時にはすでに班員はそこにはいない。近くの物陰や屋根の上に避難している。ちょっと近くを捜索した正義実現委員会生は勘違いだと思ったのか首を傾げながら道を戻っていく。
「・・・・・・危ない危ない」
「ここで攻撃したら処理が面倒だった」
「確かにそうね」
「どうしてここで倒れているんだって不審がられるのはまずいっすもんね」
「そうだそうだ」
「雑談していないで速くいくぞ」
「了解!」
「・・・・・・大声を出すな。まだ近くにいるかもしれないだろ」
全員無事に集合地点の近くの広場に集合した。ほかの班員より早く到着していたc班の班長は担いでいたミネをおろしており、b班の班長は近くで何かを袋から取りだそうとしていた。
「班長! 結局その人どうするんですか?」
「そうだそうだ」
「殺すのはまずいんですよね?」
「確かにそうね」
「・・・・・・ああだからクモモに任せることにした。こいつの前職は知っているだろう?」
c班の班長の言葉に全員黙り込む。もちろん全員b班の班長のクモモの前職は知っている。クモモの前職は拷問官。それも今はほぼ忘れ去られている学園であり現在自分たちのいるトリニティ総合学園に関係する学校、アリウス分校のである。
アリウス分校の支配者であるベアトリーチェのもとでクモモは拷問官として指示のもと拷問に励んでいた。ただその環境や境遇に転生者である中身が耐えられなくなっていた。ついに死んでしまおうかと思い始めていた時に出会ったのがのちの隊長である。
隊長は自分以外の転生者を探しながら各地を幼いころから歩き回り自分と同様の立場である転生者がいないか探し回りついには迷路であるカタコンペを超えてアリウスまでやってきたのだ。
隊長との出会いにより気力を取り戻したクモモはベアトリーチェを欺きアリウスから脱走に成功。今はこうして隊長のもと班長を務めている。ただ、拷問官としての技量は錆びついておらずクモモからの罰は班員誰もが嫌がるものになっている。
「・・・・・・班長どうするの?」
「早くしないと隊長待っているかもよ?」
「そうだそうだ」
「・・・・・・そうだな。右手でいいか」
クモモが袋から取りだしたのはよく切れそうに光を反射している鮪を解体するときに用いられる出刃包丁だった。その刃には何やら紋様のようなものが浮かんでおり普通の代物ではないと一目でわかるものだ。
「・・・・・・・班長、それはまさか」
「今まで使う機会がなかったものだがこういう時に使うものだ」
「なんかやばいって一目でわかるものなんですけど」
「そうだそうだ」
クモモは包丁を振りあげミネの右腕の付け根に振りおろす。包丁は何も抵抗するものがなかったかのように腕を通過して地面にぶつかった。そしてそれから数秒後に腕はミネの胴体から自然と切り離された。その断面は出刃包丁に浮かんでいた紋様で覆われており血も一滴もこぼれていない。
「キメ、あげます」
「・・・・・・わかりました。預かっておきます」
「え? 班長が渡したんだし有効利用すればいいのに」
「そうだそうだ」
「・・・・・・いえ、さすがに人の腕はちょっと」
b班の班員であるキメはちょっと悩んだ後背負っていたリュックにミネの腕を収納した。その様子をほかの班員が茶化すという端から見るとおかしい光景が繰り広げられている。それも誰も注意しない。まるでよくあることのように。
「あとは・・・・・・」
「・・・・・・班長、まだ何かするんですか?」
「もう十分だと思うんですけど」
「そうだそうだ」
「念のためです」
クモモはとある班員の腕をつかみそして目で何か合図を出した。その班員は嫌そうにしながらも掌を開きミネの額の上に数秒置いた。その様子にほかの班員は顔色を悪くする。c班もクモモたちが何してるかわかるのか同様に顔色を悪くしている。
「・・・・・・そこまでしますか」
「かわいそうになってくるんですけど」
「班長が決めたことなら私は従いますが・・・・・・」
「・・・・・・終わりましたね。さすがに隊長を待たせているでしょうし急ぎましょうか」
「はい!」
端目からは何をやっているのかわからなかった行為は終わったようで全員その場にミネを置いて集合地点に向かった。置いていかれたミネの額には何やら不気味な紋様が浮かんでいたがすぐに見えなくなった。