古代の英雄は平穏な学園生活を送りたい〜千年後に転生した俺は古代魔法を隠しながら青春を夢見る〜   作:大塚セツナ

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第14話 お買いもの 中編

「はぁ〜! 美味しかった!」

 

「うっぷ、あのパフェ、分けてもらったものの、とんでもない甘さだったな……」

 

「そう? むしろ、もうちょっと甘くても良いくらいだと思うけど?」

 

 

 信じられん……。あの甘さを、あんな量食べて、余裕だと……?

 

 

「なによ、甘いもの苦手だったの?」

 

「……いや、多分、甘いものに慣れていないんだろうな」

 

 

 思い返してみれば、大戦時代、甘味なんて娯楽品、あまり食べる機会に恵まれていなかった。

 そして、記憶が戻る前の俺も、あまり甘味を食べていた記憶がない。

 そんな男が、こんな娯楽にまみれた平和な世界の甘味に挑戦するのは早かったのかもしれないな……。

 

 

「ふぅん……、ま、アンタ、無骨そうだし、イメージ通りかもね」

 

「……ちょっとずつ慣れていこうと思う」

 

「そうしなさい、スイーツを楽しめないなんて、人生の半分は損してるんだから♪」

 

 

 ……女というものは、こんな胃もたれを易々と乗り越えるのか……、世界は広いな。

 次は、リルにも食べさせてやるか……。

 

 

「おい、あっちの方で揉めてるらしいぞ」

 

「なんでも貴族様らしいぞ」

 

「ひぇ、近付いたら何されるかわかんねえな」

 

 

 俺が胃もたれで苦しんでいると、街の住人たちがざわざわとする声が聞こえる。

 揉め事か? こんな休日の昼下がりに暇な奴もいたものだな。

 

 

「貴族……ね。やっぱり、粗暴な人が多いわよね」

 

「そんなことはないと思うぞ」

 

「え?」

 

 

 俺のいた時代にも、そういう落ちぶれた貴族も少なくはなかった。

 そういう連中には、何度も足を引っ張られることや、やっかみも多かった……たが。

 

 

「貴族としての、高貴な精神の持ち主もいる。貴族全員が粗暴なわけじゃないさ」

 

「……」

 

「それに、貴族じゃなくたって、荒くれ者は多い。貴族だなんだと、立場ではなく、その人間が持つ『魂』を見るべきだな」

 

 

 かつて、共に戦った仲間たちも、色々な者がいたが……、そこに貴賎はなく、対等な戦友として接していた。

 

 

「……ありがと。なんだか、ちょっとスッキリしたわ」

 

「ん? 何か言ったか?」

 

「ううん、なんでもないわ」

 

 

 ……まあ、アリシアがいいならそれでいいか。

 

 それにしても、俺たちに関係はないとはいえ、こんな往来で揉め事とは……一体どこのどいつだ?

 

 

「おい、あの貴族、たしかアーバロル学院の制服を着てたよな」

 

「ああ、なんでも、バッシュロック家のご子息がなんとか〜だってよ」

 

 

 ……なんだか、聞き覚えのある名前だな。

 

 

 

         *

 

 

 

「ほら、さっさと出すもの出しなさい!」

 

「このお方は、あのバッシュロック家のご子息、フィルゼ様だぞ!!」

 

 

 会計を済ませ、急いで駆けつけてみると……、予想通り、フィルゼと、その取り巻きたちがいた。

 今日は取り巻きの数が多いな……、全部で10人近くもいるぞ?

 ……もはや部活だな。

 

 

「アレって……」

 

「ああ、同じ学年のホワイトの生徒だ」

 

 

 学院内だけじゃなく、こんな街の住人にまで絡むなんて……、どれだけ暇なんだ。

 

 

「おい、フィルゼ。何をしているんだ」

 

「はぁ? この私を呼び捨てに……、ちっ、ルーネス・キャネット。なぜこんなところにいるのだ」

 

「休みなんだ、街にくらい来るさ」

 

 

 俺の声に振り返ったフィルゼは、あからさまに苛立った様子でこちらを睨んでいる。

 俺も、わざわざ休日に会おうとは思わないさ。

 

 

「私は今機嫌が悪いんだ。さっさと消えたまえ」

 

「同じ学院の生徒が、こんな往来で揉め事を起こしているんだ。見過ごすわけにもいかないだろう」

 

「ちょ、ちょうどいい。アンタ、コイツらの友達かい? なんとかしてくれよ!」

 

 

 声の方に視線を向けると、フィルゼと揉めていたであろう、年配の男がこちらに助けを求めて来た。

 

 

「なにがあったんだ?」

 

「そ、それが、この兄ちゃんたちが、うちの商品を売れって言うんだが。こいつは予約の入ってるものだから売れないって断ってるのに、しつこくって……」

 

「商人風情が、この私の命令に逆らおうとするんだ。おかしな話だろう?」

 

 

 ……どう聞いたって、10対0でフィルゼが悪いじゃないか。

 

 

「おい、やめてやれ。商品が欲しいなら、キチンと金を出して、正当な手続きで買う。……これくらい、子供でも知っているぞ?」

 

「アンタ! 平民ごときがフィルゼ様に逆らうっていうのかい! いくわよ! お前たち!」

 

「了解! カリーナの姉御!!」

 

 

 取り巻き唯一の女――カリーナとかいうやつの掛け声とともに、フィルゼの取り巻きたちが、ズラッと並び、俺とアリシアを囲む。

 ……なぜだ、正論を言っただけなのに。

 

 

「ったく、せっかくの休日が台無しだわ」

 

「アリシア、下がってて良いぞ。どうも、俺が売られた喧嘩らしい」

 

「いいわよ、これくらい手伝うわ。それに……」

 

 

 持っていた荷物をドサっと乱雑に置き、拳の関節を鳴らし始めるアリシア。

 その目は、獣が獲物を見つけた時と酷似している。

 

 

「買い物で歩き回っていたからストレスが溜まっていたのよ。憂さ晴らしにはちょうど良いわ」

 

「……サンドバッグを見つけた、ってわけか」

 

 

 これは……フィルゼたちが可哀想だな。

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