古代の英雄は平穏な学園生活を送りたい〜千年後に転生した俺は古代魔法を隠しながら青春を夢見る〜   作:大塚セツナ

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第15話 お買いもの 後半

「お前たち! 一斉にいくわよ!! ――火球(ファイア・ボール)!!」

 

「――火球ッ!!」

 

「――火球ッ!!」

 

 

 私――フィルゼの配下の1人……カリーナのご号令と共に、取り巻きたちが、一斉に魔法を放つ。

 一人一人の火球は、リンゴ程度の小ぶりなサイズだが、10人程の人数による魔法は、それだけで魔道士1人くらいは戦闘不能に追い込めるだろう。

 くく、アリシア・アーガネット、バカな女だ。さてお次はルーネス・キャネ――

 

 

「――炎鞭(フレイム・ウィップ)ッ!!」

 

 

 そう思っていたのもつかの間に、アーガネットの鞭術により、全てかき消されてしまった。

 バカな……!? あの人数の魔法を、たった一振りで……?

 

 

「な、なんて魔法なの……!?」

 

「か、カリーナの姉御、これはマズいんじゃ……」

 

「おだまり! フィルゼ様の前で、恥なんてかけないわ……っ! かくなる上は……」

 

 

 取り巻きに一括を入れたカリーナは、なにやらゴソゴソとしはじめた。

 ほう……アレを使うつもりだな?

 

 

「おーほっほっ!! 私にこれを出させたこと、後悔することねっ!」

 

「か、カリーナの姉御、それを使うのはマズいんじゃ……」

 

「うるさいわね! あの女にやられっぱなしでたまるもんですか!」

 

 

 そう言い、カリーナが自信たっぷりに出したもの、それは――

 

 

「剣……?」

 

「ただの剣じゃないわよ? これはねぇ、魔法が込められていた武器、『魔法剣(マジック・ソード)』よ!!」

 

 

 まさか、アレを使うとはな……。

 父上に頼み、バッシュロック家の宝物庫から出した武器……有効に使えよ?

 

 

「しかも、これは、はるか昔に作られたと言われる伝説級の武器よ!」

 

「な、なんで、アンタがそんなもの持ってるのよ」

 

「これはねぇ……愛しのフィルゼ様が、私に授けてくれた……いわば! 愛の証よ!」

 

 

 ……カリーナめ、また勝手なことを。

 貴様が私の中で、最も信頼のおけるものの1人だから渡しただけといっただろう。

 仕方ない、訂正しておくか。

 

 

「いや、私は愛の証のつもりは……」

 

「さあ! 私とフィルゼ様の愛の力! 見せてやるわよ!」

 

 

 私の訂正の声を無視し、カリーナは魔法剣(マジック・ソード)を振るう。

 すると、剣に込められた魔法が発動し、剣先から、炎の蛇が現れる。

 

 

「さあ、噛みつきなさい! ――火蛇(ファイア・スネイク)ッ!!」

 

 

 火の蛇は、素早い動きで地面を進み、アーガネットの喉元を目掛けて飛び掛かる。

 ふん、終わったな。

 さて、これが片付いたら、カリーナのやつに少々説教を――

 

 

「――風刃(ウィンド・エッジ)

 

「なっ!? わ、私のスネイクちゃんが!?」

 

 

 勝利を確信した瞬間、アーガネットが生み出した風の刃により、火蛇は真っ二つに両断されてしまった。

 力を失った火蛇は、そのまま空中に霧散してしまった。

 バカな……、伝説の武器と呼ばれる代物だぞ!?

 

 

「そ、それならもう一度! ファイア・スネ――」

 

「させないわよ! ――炎鞭(フレイム・ウィップ)ッ!」

 

「きゃっ!?」

 

 

 再び魔法剣を振おうとしたカリーナだが、アーガネットはそれを許さなかった。

 炎の鞭を、魔法剣を持つ手に打ち付ける。

 

 

「あぁぁ! あ、熱い! 熱ぃぃ!!」

 

「カリーナの姉御!」

 

「だ、誰か! 水! 水っ!」

 

 

 炎の鞭を、防御も無しにモロに受けたカリーナは、火傷した手を抑えながら、転げ回る。

 

 

(チッ……仕方ない。まさか、私の手を煩わせるとはな)

 

 

 

 

 

 

 アリシアのやつ、あれはだいぶ痛いぞ……と不便に思っていると、遠巻きに戦いを見守っていたフィルゼが動き出した。

 

 

「何をやっているのだ」

 

「あ、あぁ……フィ、フィルゼ様ぁ……ありがとうございます」

 

「もういい、下がれ」

 

 

 痛々しいカリーナの手を、魔法で生み出した水で冷やしつつ、フィルゼはこちらを睨む。

 

 

「……よくも、私の家臣を痛めつけてくれたねぇ? アリシア・アーガネットくん」

 

「あら、魔導士の戦いに、情けは無用でしょ?」

 

「……まあ、それはそうだね。だが、私の顔に泥を塗った代償は、君に払えるかな?」

 

 

 フィルゼは魔力を溜め始め、それ見た周囲の取り巻きは慌てふためく。

 

 

「ふぃ、フィルゼ様! 流石に街中でその規模の魔法は……」

 

「黙れっ! 君たちも、私の顔に泥を塗ったんだ。コイツらを片付けたら……覚悟しておくのだよ」

 

「は、はい……」

 

 

 相変わらず、取り巻きたちにも厳しいようだな。

 しかし、取り巻きの慌てよう……フィルゼの大技かなにかか?

 

 

「さあ、この私の得意属性である、水魔法は、君の炎とは相性が悪いのではないかな?」

 

「くっ……、よりによって……」

 

「さあ! 全てを穿てっ!! ――水槍(アクア・ランス)ッ!!」

 

 

 フィルゼによって生成された水の槍は、真っ直ぐにアリシアを目掛けて発射される。

 その速度は、アリシアの魔法速度ほどではないが、中々のものだ。が――

 

 

「――水槍(アクア・ランス)

 

「な、なにぃ!?」

 

「キャ、キャネットが、フィルゼ様と同じ魔法をっ!?」

 

 

 俺も、女子の背に隠れていつまでも見てるだけというのは、立場が無いからな。

 少し加勢させてもらおう。

 

 

「ル、ルーネス・キャネット! 貴様ッ!!」

 

「悪いが、お前の休日ももう終わりだ。」

 

「なっ――がはぁっ!?」

 

 

 アリシアとの模擬戦の時とは違い。今回は同威力にはしていない。

 少しだけだが、フィルゼの水槍より強めさせてもらった。

 俺の水槍は、フィルゼの槍を霧散させ、そのままやつの腹部へと直撃する。

 

 

「ぐぅぅ……! ルーネス・キャネッ……ぐふっ」

 

「ふぃ、フィルゼ様っ!!」

 

「安心しろ、威力は下げてある。気絶してるだけだ」

 

 

 まあ、今日1日は寝たきりになるだろうから、目が覚めたら、フィルゼの休日は終わっているだろうな。

 

 

「ちっ! お、覚えてなさい!!」

 

 

 古風な捨て台詞とともに、フィルゼを抱えた取り巻きたちは学院がある方向へと走って消えていく。

 

 

 

 

 戦闘が終わり、少しの静寂が流れた後、周りから拍手が鳴り始める。

 

 

「すげえな! あの貴族たちをやっちまうなんて!!」

 

「ニイちゃんも嬢ちゃんもカッコよかったぜ!!」

 

「よっ! 未来の大魔導士!!」

 

 

 歓声にあまり慣れていないのか、アリシアは照れくさそうに縮こまるが、その口元は少しニヤけている。

 

 

「なんだ、嬉しそうじゃないか?」

 

「う、うっさいわね! べ、別に喜んでなんかないし!」

 

「みんなアリシアに感謝してるんだ。少しは答えてやると良いぞ? 未来の大魔導士さん」

 

「か、からかわないでよ!!」

 

 

 そんな軽口を叩いてると、騒動の原因となった商人がこちらへ歩いてくる。

 

 

「やあやあ! 君たち、助かったよ!」

 

「い、いえ、当然のことをしただけです!」

 

「いやいや、君たちがいなかったら、うちの商品を持ってかれていたところだったよ! ……それにしても、魔法剣(マジック・ソード)を相手に、すごいじゃないか! アレは、伝説級の武器だよ?」

 

 

 伝説級……か。

 あの魔法剣と呼ばれていたもの、俺の時代から存在するものだが……あれは、伝説級なんて代物じゃない。

 本来、アレは子供が遊ぶ用のものだ。要はただのオモチャ。

 

 それが伝説級の武器だなんて……、やはり、この時代は魔法に対しての知見が低いようだな。

 

 

「ああ、そうだ! よかったらうちの商品でも見ていくかい? お礼として、たっぷりサービスさせてもらうよ!」

 

 

 恰幅のいい体を揺らしながら、商人はニコニコと、ある店を指差す。

 おそらく、この商人の店なのだろう、視線を向け、看板を見ると……。

 

 

「ん? あれって、マグナ教諭の買い出しリストに載ってた店じゃないか?」

 

「え? あ、ホントね」

 

「マグナ教諭って……、ああ、君たちがそうだったのか!!」

 

 

 商人は、ハッとした顔で店の方へと走っていき、何かを持って、またこちらへ戻ってくる。

 

 

「さっき、あの貴族連中に奪われそうになった商品! あれを予約していたのはマグナさんだよ!!」

 

「へえ、変な偶然もあったもんだな」

 

「ま、色んな意味で、結果オーライってわけね」

 

 

 それにしても、なんだこれ? いやに大きいな。それに、結構ズッシリくる。

 

 

「お代はもう支払ってもらってるから、そのまま持っていってくれて構わないよ。さて、お礼の方だが……」

 

「ああ、いや、実はまだ買い出しが残っていてな……急がないと門限に間に合わないんだ」

 

「おお、そうだったのかい。なら、また時間がある時にでもいつでも来てくれ! いつでもサービスするよ!」

 

「ありがとう。また今度行かせてもらうとするよ」

 

 

 さて、言ったとおり、そろそろ時間も無い。さっさと残りの買い出しを済ませて、マグナ教諭の元ろう。

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