古代の英雄は平穏な学園生活を送りたい〜千年後に転生した俺は古代魔法を隠しながら青春を夢見る〜   作:大塚セツナ

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第17話 新たな力を求めて

 色々あった休日が明け、早朝。

 俺とアリシアは、まだ生徒たちが登校していない時間に、演習場に来ていた。

 

 

「ハァ……ハァ……ル、ルーネス……、これ、本当に、やらなきゃ、ダメ、なの?」

 

「当たり前だ、もう30周はしてもらうぞ」

 

「さ、30……っ!?」

 

「こら、足を止めるな。魔力も乱れてるぞ」

 

 

 アリシアには、ある訓練をしてもらっている。

 演習場の中をひたすら走りながら、手に持った特殊な水晶に魔力を溜め続けると言うものだ。

 

 

「そ、そんなこと言ったって……あっ!?」

 

「……また割れたな。安心しろ、水晶はまだまだあるぞ。リル」

 

『はい!! ……ほら、追加の水晶だ』

 

 

 リルの目の前の空間が歪み、ポッカリと穴が開く。

 リルはその中に顔を突っ込み、水晶を取り出し、アリシアへと渡す。

 

 

「さっきも言ったが、その水晶は一度魔力を込めると、常に一定量の魔力を注ぎ続けないと割れてしまう。多すぎても少なすぎてもダメなんだぞ?」

 

「だから分かってるってば!!」

 

 

 千年前、魔法兵の訓練に使われていた代物だ。

 当時、暇つぶしに手遊びとして使っていたものを、リルに預けていたのが、こんなところで役に立つとはな……。

 

 

「……にしても、本当にこれで強くなれるのかしら?」

 

「何を言う。これは大切な訓練だぞ? 魔力コントロールを磨くことができる上に、常に魔力を消費することで、魔力の最大量の向上も狙える」

 

 

 それに、自身の魔力を認識し続けると言うのは、魔法の根本的な理解へと繋がるしな。

 

 

「でも、それだったら走る必要はないんじゃない?」

 

「戦ってる時に、止まり続けていたら、敵からしたら良い的だろうな」

 

「うぐっ……」

 

 

 模擬戦やフィルゼ一派との戦いを見ていると、アリシアは動きながら魔法を発動するのは苦手なように見える。

 この平和な時代ではそれでも大きな問題はないかもしれないが、できることが増えることに越したことはない。

 それに……。

 

 

「基礎体力の向上も、実は魔法力の向上に繋がるんだぞ?」

 

「そうなの?」

 

「ああ、そもそも魔力とは、自身の生体エネルギーの一部を変換したものだ。その証拠に、魔法を連発すると疲労も感じるし、魔力切れを起こすと気絶するようなこともあるだろ?」

 

 

 俺の説明に、心当たりがあったのか、感嘆の声を漏らすアリシア。

 

 

「あ〜、たしかに! よく考えればそうよね!」

 

「だろ? 魔法と基礎体力はわりと直結してる部分があるんだ。だからこそ、この訓練は単純計算だが、通常の2倍以上の効果が期待できるんだ」

 

「……こんなの、授業でもやったことないのに、なんでこんなに詳しいのよ……」

 

 

 ……やはり、この時代は、魔法への理解度が下がっているようだな。

 俺の時代では、基礎中の基礎の知識だったものが、ほとんど伝わっていない。

 

 

「まあ、年の功ってやつだよ」

 

「……同い年じゃない」

 

「さ、休憩は終わりだ、訓練の続きをするぞ」

 

 

 授業が始まるまで、あと2時間はある。まだまだたっぷり訓練できるぞ。

 

 

 

          *

 

 

 

「フィ、フィルゼ様! お待ちを!」

 

「ジャックよ……私は今、機嫌が悪い! お前とて、付いてくると容赦はせんぞ!」

 

 

 付いてこようとするジャックや、他の取り巻きたちを振り払い、足早に教室へ向かう。

 

 

(クソッ、クソッ!! ルーネス・キャネットのやつめ!! テストに続き、この私に2度も恥をかかせおって!!)

 

 

 だいたい、ブラック生の中でも落ちこぼれなはずのあの男が、なぜ急にあんな力を?

 今まで実力を隠していたとでも言うのか? ……いや、あり得ないな。

 実力を隠す理由もなければ、急にそれを誇示する理由もあるまい。

 

 

(なにかトリックでもあるのか? そうだ、そうに決まっている!)

 

 

 それに、あのアリシア・アーガネットという輩にも腹が立つ。

 昨日のカリーナのこともそうだが、模擬戦でライグのことも倒したと聞く。

 

 

(2人とも、私の家臣の中でも3本の指に入る者たちだぞ? それをブラックに堕ちた、没落貴族ごときが……)

 

 

 思考を巡らせているうちに、いつの間にか学院内の森へと迷い込んでいた。

 

 

「ちっ……私としたことが、考えているうちに道を間違えていたか」

 

『いえ、貴方は招かれたのですよ』

 

「っ! 誰だっ!?」

 

 

 突如、話しかけてきた声に驚き振り返ると、木の影から、ローブ姿の男が現れた。

 深く被っているせいで顔は見えないが、声的に男だろう。

 明らかに異質なオーラを放っているローブ男に、たじろいでしまうが、すぐに気を取り直す。

 

 

「招いた、だと? この私に何の用だ?」

 

『貴方、消したい人間がいるのではありませんか?』

 

「……」

 

 

 いきなり図星を突かれ、言い淀む。

 なぜ、このローブ男がそれを知っている? 私とルーネス・キャネットのことを見ていたとでも言うのか?

 

 

『よければ、私がお力を貸しましょうか?』

 

「……ふん、貴様ごときが、この私に? ふざけるのも大概にするのだな」

 

 

 私は、誰の施しも受けない。それは私の貴族としての誇りだ。

 他人に力を借りることもなく、他を圧倒する。

 バッシュロック家に生まれた男児の宿命でもある。

 

 

『ですが、貴方の敵は、貴方よりも強い……そうですよね?』

 

「っ!! 貴様っ! 言わせておけば!! ――水槍(アクア・ランス)ッ!!」

 

 

 この私を侮辱したことを後悔するが良い。

 忌々しいルーネス・キャネットには防がれてしまったが、エリートである私の魔法は、そんじょそこらの人間には防ぐことは不可能だ。

 

 

『おやおや、血気盛んですね』

 

「なっ!? わ、私の魔法が……!?」

 

 

 ローブ男が、腕を横薙ぎに振るうと、私の水槍は空中で霧散させられてしまう。

 自慢の魔法が2日連続で敗れたことに動揺していると、ローブ男はそれを見て、おかしそうに笑う。

 

 

『フ、クフ、クフフフフ』

 

「な、なにが可笑しい!」

 

『どうです? 私の力があれば、貴方もこれくらいの芸当はできますが?』

 

 

 ローブ男の言葉が、ズッシリと心にのし掛かる。

 先程までの反抗心が嘘のように、魅力的に聞こえてくる。

 

 

(たしかに、あの力があれば、ルーネス・キャネット共に、一泡吹かせることができる……)

 

 

 私もバカではない。

 現状、ルーネス・キャネットは、私よりも強い。

 しかし、このローブ男の提案を受ければ、あの力が手に入るならば、それも覆る……。

 

 

「……わかった。君の力を借りようじゃないか」

 

『ククク……、契約成立。というわけですね』

 

 

 ……ああ、あの男を倒すためなら。なんだってやろうじゃないか。

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