古代の英雄は平穏な学園生活を送りたい〜千年後に転生した俺は古代魔法を隠しながら青春を夢見る〜   作:大塚セツナ

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第22話 目安箱生活 3日目

手直し 第22話 目安箱事案 3日目

 

 

 

 

 行くか! と、息巻いたはいいものの。

 イリーナによると、次の事件が起こりそうなのは翌日……つまり、今日の放課後になるらしい。

 

 

「で、ここがその場所か……」

 

「……本当にこんな場所で起こるっていうの?」

 

 

 俺たちがイリーナに連れこられたのは、学院の中心にもあたる、時計台のある中央広場だ。

 放課後になったばかりだけあって、まだそこそこの数の生徒が、憩いの場として楽しんでいる。

 

 

「え、ええ、間違いないかと……」

 

「まだ人も多いし、事件が起こるとは思えないんだけど?」

 

「い、いえ、聞き込みの結果、今日はこの場所で合ってると思います」

 

 

 聞き込み……か。

 

 

「なあ、その聞き込みって、誰に聞いたんだ? クラスのやつに聞いた感じ、そもそもこの事件を知ってる人間もあんまりいなかったぞ?」

 

「アタシの方もよ。しかも、知っている人の情報でも、日時も場所もバラバラどころか、いつの間にか消えた〜って話ばっかりで、ハッキリとしない情報ばっかりよ?」

 

「そ、そう言えば、説明してませんでしたね……」

 

 

 そう言い、イリーナは振り返り、ローブを外し、髪をかき上げて見せる。

 その露わになったうなじには……。

 

 

「魔法……陣?」

 

「その魔法陣は……死霊使い(ネクロマンサー)の一族か」

 

「私はネクロマン……え? し、知ってるんですか!?」

 

 

 懐かしいな。千年前の戦場にも、数は多くないが確認できた。

 

 

「たしか、死者やアンデッド系のモンスターを操る魔術を使うんだったよな?」

 

「そ、そ、そうなんですけど……。よ、よく知っていますね。マイナーな一族なのに……」

 

「マイナー……?」

 

 

 たしかに、一族秘伝の魔術だったらしく、あまり人数は多くなかったが……、俺の生きてた時代ではマイナーというには、かなり有名な一族だったはずだぞ?

 

 

死霊使い(ネクロマンサー)の一族は、血族が多くて、かなりデカい一派を築いていたはずだが?」

 

「……そ、そういう時代もあったみたいですけど、近代では、その数も減って、一族も影を潜めて生きているんです」

 

「そうだったか……。なんというか、不躾(ぶしつけ)なことを聞いてすまなかったな」

 

 

 イリーナにとって、ナイーブな話だったらしく、少しトーンが落ち始める。

 すると、ローブを被り直したイリーナは、慌てて言葉を紡ぐ。

 

 

「い、いえ! お、お気になさらないでください! ……で、ですが、この魔法陣と一族のことは、あまり公表しないようにと言われてますので、その……どうかご内密に」

 

「……え? アタシたちに言って大丈夫だったの?」

 

 

 たしかに、出会ってまだ1日しか経ってない俺たちに言うには、まだ早いんじゃないか?

 

 

「だ、大丈夫です! ……多分」

 

「多分って……」

 

「こ、こちらから協力をお願いしたんです。信頼を得るには、ま、まずこちらから、と言いますし……」

 

 

 信頼を得るには、か。

 たしかに、何も知らない相手より、秘密の共有をした相手の方が、信頼しやす……、いや待て、その理論だと、俺はマグナ教諭と信頼し合っていることになってしまうぞ?

 

 

「なるほどね……その、ねくろまんさー? ってやつの力で、色んな情報をゲットしたってわけね?」

 

「そ、そうです。事件の噂も、学院内に漂ってる幽霊さんたちに聞きました」

 

 

 そうか……。目撃情報も少ない事件だが、幽霊たちは、犯人に見つかることなく、現場を見ることができたわけか。

 

 

「へぇ〜! 便利な魔術なのね!」

 

「え、えへへ。そ、そんなことないですよ〜」

 

 

 そう言いながらも、ニマニマする口元は抑えられていない。

 気弱な性格に見えていたが、存外、褒められると弱いタイプか。

 

 

「そういえば、場所はここでいいとして、後どれくらいで事件は起こりそうなんだ?」

 

「そ、それは……正直、放課後のこのくらいの時間帯、ということまでは絞れたんですが、それ以上は……」

 

「しばらく張り込んでみるしかない、か」

 

 

 まあ、どうせ何時までかかるかわからないと思っていたんだ。

 イリーナに確証があるなら、それに乗ってみるのも悪くないだろう。

 

 

 

          *

 

 

 

「だいぶ減ってきたわね」

 

「ああ、もう数える程度しかいないな」

 

 

 1時間もすると、寮に戻る生徒も増え、中央広場にいる人間はもう、俺たちを含めても10人もいなかった。

 

 

「……なあ、本当にこの場所なのよね? 実は違う場所で事件が起こってる〜なんてことはないのよね?」

 

「は、はい、そのはず……です。幽霊さんたちも、他の場所で何か起こっているのを見たものは、い、いないそうです」

 

「2人とも、静かに。……何かいるぞ」

 

 

 魔力探知に反応があった。

 なにか黒い魔力の塊が近くに現れた……、この反応、どこかで見覚えがあるような……?

 

 

「でさぁ、そこで俺ぇ、カマシてやったわけよ!」

 

「ヒヒッ! マジィ!? ゲヒャヒャ!!」

 

 

 先ほどからたむろしている不良風の男たちの声が響く。

 俺たちが集中して辺りを見渡していると、草むらから黒い影が、不良生徒たちの方へと飛びかかる。

 

 

「ハハ……っ!? な、なんだテメェ!?」

 

「き、気持ち悪りぃ、こっち来るんじゃ……ガッ!?」

 

 

 黒い影は、瞬く間に不良生徒の片割れの首を掴み、宙へと浮かす。

 うろたえたもう1人の不良生徒は、慌てて魔法を放とうとする。

 

 

「くっ! 相棒を離しやがれっ!! ――火球(ファイア・ボール)ッ!!」

 

『――フン』

 

「ぐぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

 黒い影は、捕えていた不良生徒を盾にし、放たれた火球を防ぐ。

 火球を当てられた不良生徒は悲鳴あげ、そのまま気絶したようにグッタリしてしまう。

 

 

「なっ! す、すまねぇ、相ぼ――ぐっ!?」

 

 

 誤射してしまったことに動揺しているところを殴られ、もう1人の不良生徒も吹き飛ばされ、気絶してしまう。

 

 

「見てられない……、ルーネス! イリーナ! 行くわよ!」

 

「へ? あ、は、はいぃ」

 

 

 無闇に突っ込むのもどうかと思うが、このまま見過ごすわけにもいかない。仕方ない、俺も行こう。

 

 

「そこまでよ! アンタが失踪事件の犯人ね!?」

 

『ッ!?』

 

 

 突然の乱入者に驚いたのか、黒い影が動揺したように動きが止まる。

 

 

「お縄につきなさい! ――火球(ファイア・ボール)ッ!!」

 

 

 アリシアの放った火球は、先ほどの不良生徒とは比べ物にならない速度で黒い影へと迫る。

 アリシアの魔法速度と威力、当たればひとたまりもないし、波の相手では避けるのは難しいだろう。しかし――

 

 

「なっ!? わ、私の火球をっ!?」

 

 

 黒い影は、動揺から脱し、スルリと身をかわし、火球を避ける。

 これは少し予想外だな。正直、アリシアがいればすぐに捕縛できると思っていた。

 

 

『……チッ』

 

「あっ! こら、待ちなさい!」

 

 

 俺たちの人数を見て不利と判断したのか、抱えていた不良生徒を放り投げ、黒い影は森の方へと走り去る。

 

 

「追いかけるわよ!」

 

「ま、待ってください〜、そ、そんなに早く走りなっ……」

 

「すまない、少し乱暴になるぞ」

 

「へ? きゃぁ!?」

 

 

 俺は、イリーナを抱え、先行するアリシアを追いかける。

 アリシアを1人で行かせるわけにも、イリーナを現場に置いていくわけにもいかない。勘弁してくれよな。

 

 

「さて、飛ばすぞ」

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