古代の英雄は平穏な学園生活を送りたい〜千年後に転生した俺は古代魔法を隠しながら青春を夢見る〜   作:大塚セツナ

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夏合宿編
第37話 臨時合宿


「海だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「ひゃ、ひゃっほ〜〜う」

 

「ゴーマッスル!!」

 

 

 アリシアとイリーナが華やかな水着姿で海へと飛び込む。

 その姿はキラびやかで、健全な男子たちの視線を釘付けにしている。

 ……1人変なマッチョも混ざっていたが。

 

 

「ミケよ、我のために砂の宮殿を作るのだ」

 

「ガ、ガウ?」

 

『スゥ……スゥ……』

 

 

 横を見ると、浜辺で過ごしている者たち、そして木陰でスヤスヤと寝ているリルもいる。

 

 

「ふぅ……」

 

 

 リルの上に寝そべりながら、辺りを見回す。

 

 青い空、青い海、白い砂浜……そして遊びまわるアーバロル魔導学院の生徒たち。

 

 俺たちが夏を満喫している理由は昨日に遡る。

 

 

 

             *

 

 

 

 

「臨時合宿?」

 

「そう! お疲れの君たち学生のための措置だよ!」

 

 

 教壇に立つマグナ教諭が爽やかな笑顔で述べる。

 オフモードのいつものマッドな怪しさはなりを潜めており、なんだか違和感がある。

 

 

「先日の爆破事故や、生徒たちの集団幻覚事件のこともあるからね。なーに、慰安旅行の一種だと思うと良いさ!」

 

 

 フィルゼたちの一件は、もちろんだが公表することはできず、マグナ教諭の言ったようなものに隠蔽されていた。

 校舎や設備の復旧が完了し、休校が明けたと思ったらいきなりこれか。

 

 

「クラスも学年も問わない学院全体でのお泊まりイベントなんて、君たち学生にとって青春を味わういい機会じゃないか」

 

(青春……か)

 

 

 俺の現代での『青春を謳歌する』という目標……。

 このイベントは、それを達成する大きな一歩になるかもしれないな。

 

 

「先生〜、合宿って言ってもどこに行くんスか〜?」

 

「そこの君、いい質問だね」

 

 

 生徒の質問にニヤッと笑ったマグナ教諭はチョークを持ち、カッカッと音を立てて黒板になにかを書き記す。

 

 

「ここ、アーバロル魔導学院は、王都エクサスから見て東側に位置するのはご存知だろう?」

 

 

 そうか、今書いているのはアーバロルとエクサスの地図か。

 あまり意識してなかったがこう見ると学院のサイズはイかれているな。

 エクサスよりは2回りほど小さいが、それでも敷地面積がいち学校のそれではない。

 大きすぎて、雪だるまを横に倒したような歪な形だ。

 

 

「アーバロルより東側にあるのが、ウィガール大森林……約一月前、オークキングの討伐もあったことで有名だね」

 

 

 マグナ教諭の余計な一言により、視線が一つに集まる。

 ……こうも見られると、なんだかムズ痒いなな。

 

 

「では、ここで質問だ。大森林より南……学院から見た南東側には何があるかね?」

 

 

 南東……、千年前と地形が大きくは変わっていないとするとあの辺りは――

 

 

「――海、か?」

 

「正解だ! いやぁ、キャネット君は流石だねぇ」

 

 

 おい、いつものネットリが漏れ出てるぞ。

 

 

「キャネット君の言う通り、南東にあるのは海――クルーデン海域だ!」

 

「え、先生、もしかして合宿先って……」

 

「そう! このクルーデン海域さ!」

 

 

 「うぉぉぉ!!」と教室は一気にお祭りムードになる。

 まあ、海水浴ともなればテンションが上がるのも致し方あるまい。

 

 

「合宿期間は明日から丸々1週間だ! 今日の授業は午これで終わるので、午後は各自旅行の準備に当てたまえ!」

 

 

 

             *

 

 

 

 と言うわけで、合宿初日。何事もなく移動を終え、こうしてビーチで余暇を過ごしているわけである。

 

 ことの成り行きを思い返しながらウトウトしていると、浅瀬でイリーナたちと水かけ遊びをしていたアリシアがこちらへ駆け寄ってきた。

 

 

「ちょっと、ルーネス! なんで日陰で寝ようとしてるのよ!」

 

「なーに、海辺ではしゃぐのは若者の特権だ。俺はゆったり老体を労るとするよ」

 

「なにを年寄りみたいなことを……」

 

「だって俺、千年前の人間だし」

 

 

 千と余年、長く生きてきた俺が今さら水遊びなんて……ねえ?

 

 

「アンタ、転生したんだから肉体的には10代半ばじゃない」

 

「ははは……勘のいいやつめ」

 

「もしかして……泳げないから海に入らないの?」

 

 

 ……おいおい、大戦時代を生き抜いた俺が泳げないだって?

 アリシアがそんな世迷言を言うとは、俺も舐められたものだな……。

 ここは大人の余裕でクールに論破してみせるか。

 

 

「お、おお、俺がおよおよ泳げないわけが、な、ないじゃないか! あ、アリシアも冗談が上手いなぁ、は、はははは!」

 

「動揺しすぎよ」

 

「だ、大体、我々人間は陸上で生きることに特化した生き物なのであって、泳ぐなんて魚に任せて置けばいいと思うんだよ!」

 

「はいはい、言い訳はいいから! 浅瀬でいいから一緒に行きましょ!」

 

 

 そう言い、アリシアは動揺している俺の腕を掴み海の方へと引きずっていく。

 

 

「や、やめろ! 俺は人間として生きるんだ!」

 

「人聞きが悪いわね! まるで、アタシが人体改造するマッドサイエンティストみたいじゃない!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 嫌がる俺に構わず、ズリズリと引きずるアリシア。

 

 この時の俺たちはまだ気付いていなかった。

 

 

 ――この合宿が、とんでもない事件の前触れになることを。

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