古代の英雄は平穏な学園生活を送りたい〜千年後に転生した俺は古代魔法を隠しながら青春を夢見る〜   作:大塚セツナ

42 / 61
第40話 抜き打ちテスト

 その日の夜。

 アーバロルの生徒たちは守りの中でバーベキューをしていた。

 

 あのクラーケンの亡骸も、せっかくなのでバーベキューの食材の中に混ぜてもらった。

 

 

「クラーケンを食べるなんて……一応、上位獣なのよ?」

 

「なーに、千年前は子供のおやつにもなっていたぞ」

 

「どんな時代なのよ……」

 

 

 ずっと戦争ばっかりしていたからな、食べれるものはなんでも食べる時代だった。

 ……にしても、やっぱり感覚が狂うな。

 

 先日のゴブリンキングダムといい、クラーケンも大戦時代では、今の等級に習って言うなら零級……その辺にいくらでもいる雑魚モンスターだったんだかな。

 あの頃の強敵たちはどうなっているんだろうな。

 

 

「師匠〜このクラーケンさん、美味しいでふよ〜」

 

「貴重な筋肉のもとを分けてもらって、園芸部一同感謝するぞっ!」

 

「押忍っ!! あざっす!!」

 

 

 タンパク質に引きつられてか、いつの間にか園芸部の方々が集まってきていた。

 

 

「まあ気にするな。トリングス先輩も一緒に戦ってくれたしな」

 

「いいや、結局、トドメはブラザーが刺したんだ。俺はただ、力任せに振り回していただけさっ!」

 

「いや、本来力任せに振り回せるような相手じゃなかったんだけどな……」

 

 

 俺たちが談笑をしていると、周りのガヤガヤが収まり始めた。

 なんだ? と思って振り返ると、急速で作った台の上にマグナ教諭が立っていた。

 

 手に持ってるのは……見たところ、声を拡大して伝える魔道具か。懐かしいな。

 

 

『えー、テステス。あー、みなさんお食事中申し訳ないね』

 

 

 拡大された声は奥の方にいた俺たちの方までしっかり響いている。

 まだ気づいてなかった者たちも、その声でマグナ教諭の方を見る。

 

 

『学生諸君! 夏合宿初日……楽しんでいるかね!』

 

「うぉぉぉぉ!!」

 

「クラーケンは出たけど、海は最高だぜぇぇ!!」

 

 

 マグナ教諭の呼びかけに、学生たちはテンション高く応える。

 よかった、クラーケンの件で意気消沈してる者もいるかと思ったが、そんなことはなかったらしい。

 

 

『さて、合宿初日! どんな場所に泊まるのか、気になっている者も多いんじゃないかな!』

 

「おぉぉぉ!!」

 

「どんな豪華なホテルなんだー!」

 

 

 たしかに、それは俺も気になっていた。

 ビーチにも、このバーベキュー会場にもそれらしき建物も無いように見えるが……ん?

 

 

(なんか、マグナ教諭がオフモードの時のイヤらしい笑い方になっているような……)

 

『君たちが泊まる場所……それは、ここだっ!!』

 

 

 マグナ教諭が大きく手を振りかぶり指を指す。

 差した方向に期待を向けて目をやると――何も無い。

 正確に言うと、森しかない。

 

 

「……?」

 

「なんか、見えるか?」

 

「いや、なんも無いよな?」

 

「この森を抜けた先とかか……?」

 

 

 周りの生徒たちも、違和感を感じてザワザワと騒がしくなり始める。

 それを見て、おかしそうにニヤッと口角を上げるマグナ教諭。

 ……イヤな予感がする。

 

 

『何人かは気づき始めたようだが……君たちの宿泊する施設はこの森を抜けた先にある!』

 

「なんだよ、また移動か〜」

 

『移動ではあるが、ただの移動と思っていると――死ぬよ?』

 

 

 マグナ教諭の目が鋭いモノとなる。

 

 

『この森は学院が用意したモンスターを大量に放っている』

 

「えぇぇぇ!!?」

 

「な、なんでそんな事を……!?」

 

『簡単な事だ……君たちには、強くなって貰わないと困る――まあ、抜き打ちの試験だと思えばいい』

 

 

 強く……か。

 

 

『先日の集団幻覚騒ぎなど、今後『何が起こるかわからない』からね』

 

 

 たしかに、あの事件には謎が多く残っている。

 フィルゼに悪魔の力を渡したもの……悪魔本人なのか、また別の魔人なのかは分からないが、『魔人化』の技術を持っている犯人がまだ見つかっていない。

 

 フィルゼのような被害者がまた出る可能性はある。

 

 

『そこで、学院として『合宿』を行うことになった、というわけだよ』

 

 

 なるほど、最初から、ただの『旅行』ではなかったわけか。

 

 

『ま、それだけじゃツマラないだろうから……』

 

 

 そう言い、パチンッと指を鳴らすマグナ教諭。

 すると、生徒たちの体から何本かの半透明な糸が出始める、糸はドンドンと伸び、他の糸と結合し始める。

 

 俺の体からも糸が伸び……アリシア、イリーナ――そして、生物部部長のレオナ先輩と結ばれた。

 

 

『それぞれ、何人かと結ばれたと思うが……それは、この試験に挑むための『チーム』だ』

 

 

 チームか……ウィガール大森林での試験の時を思い出すな。

 

 

『学年やクラス、ブラックやレッド、ホワイトのような色も関係ない、ランダムなチームだ』

 

 

 なるほど、それで学年が違うレオナ先輩もチームに組み込まれたわけか。

 

 

『ついでいうと、ホテルに辿りついた順番に応じて『ご褒美』もあるから、そこは楽しみにしておくといい』

 

 

 ご褒美……ねえ。

 まあ、何にしてもこんな試験なんて、さっさと終わらせるに限る。

 まずはチームのメンバーと作戦を――

 

 

『あ、そうだ言い忘れてたけど、あと10秒でこの会場に張った魔除けの結界が解除されるから。モンスターが流れ込んでくるよ――それじゃ、私は先にゴールで待ってるよ』

 

 

 そう言い、マグナ教諭は拡声魔道具を捨て、どこかへと走り去っていく。

 よく見ると、いつの間にか他の教師陣も居ない……なるほど、事前に避難しているわけか。

 

 

 クソ教師どもめ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。