古代の英雄は平穏な学園生活を送りたい〜千年後に転生した俺は古代魔法を隠しながら青春を夢見る〜 作:大塚セツナ
モンスターと生徒たちが入り乱れる広場では、危なかくて魔法も使いづらい。
ということで、俺たちは急いで森の中へと移動していた。
「はぁぁ……きゅ、急に走ったのでなんだか疲れました……」
「鍛え方が足りぬな……我は息一つ乱れておらぬぞ」
「いや、レオナ先輩はミケに乗っているからじゃないですか」
「ガウ」
やはり、レオナ先輩がいるというのはイレギュラーな感じがするな。
……日中のトリングス先輩はいつの間にかしれっと混ざっていたが。
「ってか、いきなりモンスター放つなんて悪役のすることじゃない!?」
それは本当にそう。
「まあ、マグナ教諭のすることだ。あまり気にしても意味がないだろう」
「はぁ……それもそうね。とりあえず、ホテルがあるっていう方向を目指しましょ」
「そうだな……リル、頼めるか?」
マグナ教諭や教師陣は先にホテルに向かっていると言っていた。彼らの匂いを辿れば正確な場所を見つけるのは容易いだろう。
『ウゥ……』
「……ん?」
リルが気まずく目を逸らしている。
何事かと思い、コッソリとリルに尋ねる。
「どうしたんだ?」
『そ、それが、この森なのですが、なんというか、悪臭が多くて鼻が鈍ると言いますか……』
「悪臭……?」
「ルーネス! モンスターよ!」
俺がリルと話していると、いつの間にか茂みからモンスターが姿を現していた。
アイツは――
「うっわ! 臭っ!?」
「な、なんですかこの匂いぃ……!?」
現れたのは、頭に大きい赤黒い花を持ち、体はツタでできている植物型モンスター――ラフレジアスだ。
普通の植物に擬態して獲物を狙うモンスターだ。
その特徴は頭の花から放たれるガスで、それを近距離で直に嗅いでしまうと、錯乱状態になってしまう。
「なるほど、リルの鼻が効かないのはアイツが理由か……」
さては、マグナ教諭がリル対策として森に何体か放っているんだな?
相変わらず、イヤらしい手段を取る奴め。
「こんなクッサイモンスター! さっさと燃やしてやるわ!」
「おい、待て」
「なによっ!」
手の中に炎を生み出しているアリシアを急いで止める。
「森にいる間、火属性の魔法は禁止だ」
「な、なんでよ!?」
「山火事でも起こしたいのか?」
俺の言葉に、グッと言葉を詰まらせるアリシア。
森の中でアリシアの火力を振り回せば、どれだけ燃え広がるのか、想像に容易いだろう。
「威力と範囲を下げて出来るならいいんだが……そういうのは苦手だろう?」
「えーえー! そうですよ! どうせアタシは火力だけのガサツ女よ!」
「いや、別にそこまでは言ってないんだが……」
なんだか、不貞腐れてしまったな……。
俺たちがそんなやり取りをしているうちに、ラフレジアスが動き始めた。
「シャァァァァ!!」
「そいつのガスは絶対に吸うなよ! 錯乱状態に陥るぞ!」
「分かってるわよ! ――
アリシアから放たれた風の刃は、ラフレジアスのガスを霧散させ、本体へと直撃する。
「ギィェェェェェ!!?」
ラフレジアスが断末魔を上げその場に崩れていく。
「え? や、やけにアッサリですね……」
「奴は状態異常を期す性質はあるが……その耐久は脆いものよ」
「へ、へぇ〜レオナ先輩、詳しいんですね」
「うむ。我は生物部……モンスターもまた、生物である」
そう言い、近くにあった木に触れるレオナ先輩。
「例えば、この木は少し傾いている……いわゆる
「た、たしかに、言われてみれば傾いていますね……」
「森の中では、こうした木々を把握しておくとよい。遭難を避けれるぞ」
懐かしいな……俺も大戦時代は、ああいうサバイバル知識に助けられてきた。
「……まあ、我は植物より動物が専門。詳しく知りたいなら、園芸部の暑苦しき男に尋ねるとよい」
「暑苦しき……ああ、トリングス先輩のことね」
「……ヤツのことだ。植物型のモンスター相手にもあの勢いで愛でに行っていることだろう」
想像がつくな……。
まあ、流石にこんな分かりやすい状態異常モンスターに引っ掛かるわけは――
「うぉぉぉぉぉぉぉ!! お花さんはどこだぁぁぁぁぁ!!!」
「お花さんっ! 君は何でそんなに可憐なんだぁぁぁ!!」
「園外部ぅぅぅ!! ファイアァァァ!!」
「オォォォォ!!!」
森の奥から、なにやら複数の野太い叫び声が聞こえる。
「あの声って……」
「
「噂をすれば……ってやつね」
まあ、トリングス先輩がたなら、あの状態でモンスターに襲われても心配ないだろ……多分。
「錯乱した園芸部に巻き込まれる前に、さっさと進むとしよう」