古代の英雄は平穏な学園生活を送りたい〜千年後に転生した俺は古代魔法を隠しながら青春を夢見る〜   作:大塚セツナ

45 / 61
第43話 我輩の名は――

「け、剣が……」

 

「しゃ、喋りましたぁぁぁぁぁ!!?」

 

『剣……だと?』

 

 

 アリシアとイリーナが驚いていると、剣の鍔(つば)にある眼球が俺たちの方にギョロっと焦点を合わせてきた。

 

 

『我輩をただの剣と一緒にするでない! 我輩は『魔剣』である!』

 

 

 ……やはりそうだったか。

 

 魔剣……俺が居た千年前よりも、もっと前から存在が確認されていた存在。

 悪魔の魔力が宿っているというのが通説だが、未だ解明されていない謎多き武器だ。

 

 だが、魔剣には共通点がある。それは――

 

 

「その人間は、お前が操っているのか?」

 

 

 普通ならば、人間が武器を選ぶ。

 だが、コイツらにとっては違う。『武器が人間を選ぶ』という思考がある。

 

 魔剣を手に取った人間は強い殺人衝動に襲われ、無差別に周囲を襲うようになる。

 斬った相手の血や魔力を吸収することで、やつらは更なる力を得るのである。

 

 

『クククク、その通り……この人間は我輩の支配下、思いのままなのであ――』

 

「さっきも名乗ったが俺様の名前はセンリ! 魔剣を操り、最強の剣士を目指しているんだ! よろしくなっ!!」

 

『…………』

 

 

 ……どうにも、操られているようには見えないな。

 っていうか――

 

 

「――そっちは木だぞ」

 

「ん? ああ、こっちか!」

 

 

 木に向かって名乗っているセンリに声をかけると、センリは改めて振り返るが……そっちも木だぞ。

 

 

「も、もしかしてなんですけど……前、見えてないです?」

 

「んぉ!? よ、よく分かったな!! そうなんだ……しばらく前から周りが見えなくなってな……なんとなくの気配を感じながら歩いてたんだぜ!」

 

「包帯……外せばいいんじゃないかしら?」

 

「包帯……?」

 

 

 センリは、首を傾げながら、自分の顔をペタペタと触り、包帯の先っちょに気が付いて引っ張る。

 すると、スルスルと包帯が解け、隠されていた顔が露わになる。

 

 少し長い逆立った金髪に、夕焼けのようなオレンジの瞳。

 中々の好青年が出て来た。

 

 

「うおっ!? 前が見えるぞ!?」

 

「ま、まさか……」

 

「ほ、包帯があったのに気付いてなかったんですか……?」

 

「みたいだなっ!!」

 

「あぁ……分かったわ。アンタ、とんでもないバカなのね……」

 

 

 アリシアたちは呆れて苦笑いをしているが……俺は警戒を強める。

 前が見えてない状態で、ブレードグリズリーを倒しただと? しかもあの速度で……この時代の人間としては、かなりの練度だ。

 

 

『我輩を無視するでないっ!!』

 

「うわ、ビックリした」

 

「か、完全に忘れてました……」

 

 

 皆も、センリのことで完全に間が抜けて魔剣のこと忘れていたようだ。

 かくいう俺も少し忘れかけてた……。

 

 

『我輩をコケにするとは……小僧っ! この小娘どもを切り刻んでやれっ!』

 

「え、なんで?」

 

『我輩を愚弄したからに決まっておろう!』

 

「やだよ、剣士じゃねえなら、無駄に斬らねえよ」

 

「け、剣士なら無駄に斬るんですか……?」

 

 

 どっちにしろ危険人物ではあるのか?

 

 

「というか、操ってるんじゃないのか?」

 

『ギクッ!』

 

「我も耳にしたぞ……完全に支配下にある、とな」

 

『こ、こやつがバカすぎて我輩の洗脳が意味をなさぬのだ! こんな人間は初めてだ!!』

 

 

 あぁー……

 なるほど、そう言う感じか……。

 

 

「はっはっはっ! 『グラン』はいい奴だからな! そんなことしねーよ!!」

 

『何度もやっておるわっ!! 小僧が我輩の指示通り動けないのがそもそもの原因であって――』

 

「グランさん……というのは、魔剣さんのお名前ですか?」

 

『我をそのような略称で呼ぶではない!!』

 

 

 魔剣が叫ぶ。

 

 

『こやつは愚かすぎて我輩の高貴なる名を覚えられぬのだ! 全くもって不愉快だ!』

 

 

 なるほど……あの感じの男だ。中々苦労しているのだろう。

 

 

「な、なら私たちだけでもお名前をお呼びします……!」

 

「ま、名前くらいならいくらでも覚えてあげるわよ」

 

「ふむ……これも覇者の勤め。我も記憶しておこう」

 

『き、貴様ら……!』

 

 

 魔剣の眼がウルウルと涙ぐんでいる。

 本当に苦労しているんだな。

 

 

「それで、お前の本当の名前はなんなんだ?」

 

『ああ、我輩の名は――』

 

 

 

『――ガーヴァテイン・ゲモデウス・ゴルド・ギルティライツ・グランカリバーである!』

 

 

 

「よろしくな、グラン」

 

「覚えておいてあげるわ、グラン」

 

「よ、よろしく願いします! グランさん!」

 

「グランか、記憶したぞ」

 

 

 これで皆も正式にグランの名前を覚えたな、うん。

 

 

『なっ……! き、貴様ら! 名前を覚えると言っておったではないか!?』

 

「いや、長すぎるわよ」

 

「お、覚えれませんでした……」

 

「改名せよ」

 

 

 みんな散々だな。

 グランさんは魔剣なんだぞ、グランさんあんまり怒らせるとどうなるか分からないぞ。なあグランさん?

 

 

『ぐ、ぐぬぬぬ……』

 

 

『やはり人間なんぞ滅びてしまえぇぇぇ!!』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。