古代の英雄は平穏な学園生活を送りたい〜千年後に転生した俺は古代魔法を隠しながら青春を夢見る〜 作:大塚セツナ
「け、剣が……」
「しゃ、喋りましたぁぁぁぁぁ!!?」
『剣……だと?』
アリシアとイリーナが驚いていると、剣の
『我輩をただの剣と一緒にするでない! 我輩は『魔剣』である!』
……やはりそうだったか。
魔剣……俺が居た千年前よりも、もっと前から存在が確認されていた存在。
悪魔の魔力が宿っているというのが通説だが、未だ解明されていない謎多き武器だ。
だが、魔剣には共通点がある。それは――
「その人間は、お前が操っているのか?」
普通ならば、人間が武器を選ぶ。
だが、コイツらにとっては違う。『武器が人間を選ぶ』という思考がある。
魔剣を手に取った人間は強い殺人衝動に襲われ、無差別に周囲を襲うようになる。
斬った相手の血や魔力を吸収することで、やつらは更なる力を得るのである。
『クククク、その通り……この人間は我輩の支配下、思いのままなのであ――』
「さっきも名乗ったが俺様の名前はセンリ! 魔剣を操り、最強の剣士を目指しているんだ! よろしくなっ!!」
『…………』
……どうにも、操られているようには見えないな。
っていうか――
「――そっちは木だぞ」
「ん? ああ、こっちか!」
木に向かって名乗っているセンリに声をかけると、センリは改めて振り返るが……そっちも木だぞ。
「も、もしかしてなんですけど……前、見えてないです?」
「んぉ!? よ、よく分かったな!! そうなんだ……しばらく前から周りが見えなくなってな……なんとなくの気配を感じながら歩いてたんだぜ!」
「包帯……外せばいいんじゃないかしら?」
「包帯……?」
センリは、首を傾げながら、自分の顔をペタペタと触り、包帯の先っちょに気が付いて引っ張る。
すると、スルスルと包帯が解け、隠されていた顔が露わになる。
少し長い逆立った金髪に、夕焼けのようなオレンジの瞳。
中々の好青年が出て来た。
「うおっ!? 前が見えるぞ!?」
「ま、まさか……」
「ほ、包帯があったのに気付いてなかったんですか……?」
「みたいだなっ!!」
「あぁ……分かったわ。アンタ、とんでもないバカなのね……」
アリシアたちは呆れて苦笑いをしているが……俺は警戒を強める。
前が見えてない状態で、ブレードグリズリーを倒しただと? しかもあの速度で……この時代の人間としては、かなりの練度だ。
『我輩を無視するでないっ!!』
「うわ、ビックリした」
「か、完全に忘れてました……」
皆も、センリのことで完全に間が抜けて魔剣のこと忘れていたようだ。
かくいう俺も少し忘れかけてた……。
『我輩をコケにするとは……小僧っ! この小娘どもを切り刻んでやれっ!』
「え、なんで?」
『我輩を愚弄したからに決まっておろう!』
「やだよ、剣士じゃねえなら、無駄に斬らねえよ」
「け、剣士なら無駄に斬るんですか……?」
どっちにしろ危険人物ではあるのか?
「というか、操ってるんじゃないのか?」
『ギクッ!』
「我も耳にしたぞ……完全に支配下にある、とな」
『こ、こやつがバカすぎて我輩の洗脳が意味をなさぬのだ! こんな人間は初めてだ!!』
あぁー……
なるほど、そう言う感じか……。
「はっはっはっ! 『グラン』はいい奴だからな! そんなことしねーよ!!」
『何度もやっておるわっ!! 小僧が我輩の指示通り動けないのがそもそもの原因であって――』
「グランさん……というのは、魔剣さんのお名前ですか?」
『我をそのような略称で呼ぶではない!!』
魔剣が叫ぶ。
『こやつは愚かすぎて我輩の高貴なる名を覚えられぬのだ! 全くもって不愉快だ!』
なるほど……あの感じの男だ。中々苦労しているのだろう。
「な、なら私たちだけでもお名前をお呼びします……!」
「ま、名前くらいならいくらでも覚えてあげるわよ」
「ふむ……これも覇者の勤め。我も記憶しておこう」
『き、貴様ら……!』
魔剣の眼がウルウルと涙ぐんでいる。
本当に苦労しているんだな。
「それで、お前の本当の名前はなんなんだ?」
『ああ、我輩の名は――』
『――ガーヴァテイン・ゲモデウス・ゴルド・ギルティライツ・グランカリバーである!』
「よろしくな、グラン」
「覚えておいてあげるわ、グラン」
「よ、よろしく願いします! グランさん!」
「グランか、記憶したぞ」
これで皆も正式にグランの名前を覚えたな、うん。
『なっ……! き、貴様ら! 名前を覚えると言っておったではないか!?』
「いや、長すぎるわよ」
「お、覚えれませんでした……」
「改名せよ」
みんな散々だな。
グランさんは魔剣なんだぞ、グランさんあんまり怒らせるとどうなるか分からないぞ。なあグランさん?
『ぐ、ぐぬぬぬ……』
『やはり人間なんぞ滅びてしまえぇぇぇ!!』