古代の英雄は平穏な学園生活を送りたい〜千年後に転生した俺は古代魔法を隠しながら青春を夢見る〜 作:大塚セツナ
「んん……ん……」
「お、アリシアも起きたか」
ルーネスに名前を呼ばれ、目が覚める。
ああ、そっか。アタシ、森で眠っちゃって……
「……ごめん」
「……まあ、気にするな」
アタシは、血迷って先輩方を殺しかけて……。
――どうしちゃったんだろう、アタシ。
「……他のみんなは、どうなったの?」
「イリーナたちなら、先に目が覚めてあっちで休んでいるよ。園芸部の先輩方も一緒だ」
ルーネスが指差す方を見ると、森の中のひらけた空間でイリーナたちが園芸部の人たちのケガの手当てをしていた。
「よかった……みんな大したケガはないのね」
「ああ、出来る限り最小限のダメージで済むように戦っていたからな」
「そう……よね」
みんな、ちゃんとやっていたのに、アタシは、アタシは……
「師匠、皆さんの治療が終わりましたよー」
「お疲れ。イリーナ、よくやった」
「へ、へへへ。これくらいなら、私でもできます!」
自信があるのか無いのか分からないけど、イリーナが胸を張って答える。
「そ、それよりも、だいぶ時間を使ってしまいましたし、そろそろホテルを目指しませんか……?」
たしかに……どれくらいの間、寝ていたか分からないけど、そろそろ移動を再開しないと、夜が明けちゃうわ……。
「あ、あぁ……そ、その件なんだが……」
「周りの景色が少し違うし、ルーネスが寝ているアタシたちを運んでくれたんでしょ? ありがとね」
「ホ、ホテルまであとどれくらいかかるんですかね……」
「いやぁ、まぁ、うーん……」
……うん? なんだかルーネスが珍しく狼狽えているわね……。
「ルーネス? どうしたの?」
「なんというか、その……」
「もう! アンタらしくないわね! 男ならビシッと言いなさい! ビシッと!」
「……それじゃあ、驚かないで聞いてくれよ?」
ようやく観念したのか、ルーネスは一度深呼吸をしてから口を開く。
「――ここ、もう目的地なんだ」
「……は?」
「あと、みんなが寝てから、もう丸一日経っている」
ここが、目的地……?
それって、どういう……てか、丸一日って――
「――はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
*
時は少し遡り、俺がみんなを眠らせた後の話だ。
「ふぅ……これで一旦落ち着いたか」
『主! 眠っている者どもを1箇所に纏めて参りました!』
「リル、まだ指示を出してないのに、相変わらず仕事が早いな」
『主の望みであれば、言うより前に叶える……配下の務めであります!』
この魔法は集団を一気に睡眠状態にできるが、魔法耐性が高い者には効果が薄い。
リル程の実力者であれば眠ることもなく活動続行可能なのは想定通りではあったが――
「――まさか、ミケまで起きているとはな」
「ガルルルル……」
レオナ先輩の相棒であるミケが、眠っているレオナ先輩を守るように立っている。
上位獣のホワイトレオーネ程度であれば、今ので普通に眠っているはずなんだがな……。
やはり、正体を偽っているのか。
「ミケ。お前は、いったい何なんだ?」
「……ガウ」
俺の問いかけに、そっぽを向いて無視するミケ。
まあ、正体を偽っているんだ。それなりの理由があるんだろう。
それに、レオナ先輩を守ろうとしているところを見ると、悪意は無さそうだ。
「……ま、話したくなったら、いつか教えてくれよ」
「…………」
「それより、ちょうど良いから手伝ってくれ。みんなを運んで、このままホテルまで直行してしまいたい」
いつの間にか、もう朝日が見え始めている。
さっさとゴールしてしまおう。
「…………ガウ」
「レオナ先輩以外は背に乗せる気はない……って顔だな」
『主よ、そのようなドラネコ風情は放っておきましょう。その任、ワタクシが引き受けましょう!』
「ああ、リル。それじゃあ頼んだぞ」
まあリルなら、全員を纏めて運ぶことは容易だろう。
そこからゴールまではあっという間で、全員を連れて、ホテルへと到着した。
さすが、アーバロル魔導学院が用意したホテルというべきか、ホテルも豪華で、かなりの装飾美だ。
見たところ、7階建てのようだな。部屋数もそこそこ多いそうだが……。
「この生徒数が、あそこに入り切るのか……?」
「んんー、流石はキャネットくん、目のつけどころが良いねぇ」
「うぉっ、マグナ教諭か」
背後からヌルりとマグナ教諭が現れる。
疲れてたのもあり、少し油断していたな。
「到着おめでとう! 君は記念すべき249組目だ!」
「……なにが記念すべきなんだ? めちゃくちゃキリが悪いじゃないか」
「何を言う! トリングスくんたちを退け、なんとか最下位を免れたわけじゃぁないか!」
「俺たちは、そんなに遅れていたのか……」
センリの乱入やら園芸部の対応やら、色々あったからな……仕方あるまい。
「いやはや、一位候補の君が
「……色々あってな」
「まあいい、ゴールした者への、『合宿のルール』についての説明をしようじゃないか」
合宿の……ルール?
「まず、君の目の前にあるホテル……これは、とてもアーバロルの生徒が全員宿泊できるようなものじゃない……それは見ればわかるだろう?」
「まぁ、よく見繕ったところで、各階10部屋っていったところだな」
「ご名答だ! このホテルは、全7階の各階10部屋……合計70部屋しかない」
たしか、アーバロルは一学年1000人の三年制だから……うん、入り切るわけがないな。
「そして、今回の合宿では、ホテルに到着した順位に応じて、1人一部屋与える。というルールになっているのだよ」
「開始前に言っていた『ご褒美』とやらは、それのことか」
「またまたご名答だ。話が早くて助かるよ」
大袈裟に拍手をし、ニヤニヤと笑うマグナ教諭。
出立前に見たばかりなのに、なんだか懐かしいと感じてしまう自分が悔しいな。
「なるほど、残りの2900人近い生徒は、残りの期間を雨風も凌げない野晒しで生活しろと?」
「おいおい、私をそんな人の心がない非人道的な人間のように言わないでくれたまえよ?」
「実際そんなもんだろ?」
「ああー! ひどーい! マグナくん泣いちゃうかもしれないよ?」
体をクネらせ、涙ぐむような動作を見せるが、いい歳した大人が何をやっているんだ、という感想しか出てこない。
「たが! 安心したまえ! 上位70人に入れなかった君たちにもチャンスはある!」
「チャンス……?」
「それはだね――」