古代の英雄は平穏な学園生活を送りたい〜千年後に転生した俺は古代魔法を隠しながら青春を夢見る〜 作:大塚セツナ
「――寝床争奪バトルぅ?」
「こ、こう言うのはなんですが……」
「ダサい、わね」
アリシアたちの辛辣な視線が突き刺さる。
やめろ、そんな目で見るな。俺じゃない、マグナ教諭がダサいんだ。
「ま、まあ。要するに、毎日出される試験やその他の要素を総合し、夕方に発表される順位で、その日の宿泊できる階層や場所が決まる、というわけだ」
「な、なるほど……それで、丸一日寝ていた私たちと、それを介抱していた師匠は……」
「園芸部とそろって、最下辺――つまり、野宿ってわけだ」
まあ、結界を張れば安全は確保できはするが、眠っているやつらを外で放っておくというのは、いささか絵面が酷いからな。
「わ、私たちのために師匠まで……申し訳ないです……」
「気にするな、野宿は慣れている」
大戦時代は、野営なんてほぼ毎日だったからな。
それに、俺の睡眠魔法の効きが良すぎたのが原因だし。そんなに気にされても困る。
「それに……もう動き始めているから大丈夫だ」
「え……?」
「キャネットくん! そっちの調子はどうだい!」
「我らは、ノルマはすでに終えているぞ」
アリシアたちに説明をしていると、ちょうどよく、トリングス先輩とレオナ先輩が戻ってきたようだ。
あの顔を見ると……成果は上々なようだな。
「俺の方も上々だ。アリシアも起きたことだし、ペースを上げていこう」
「よし来た!」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ! どういうこと!? 説明しなさいよ!」
おっと、起き抜けのアリシアを置き去りにしてしまったな。
「ま、簡単なことだよ」
合宿2日目に出された試験……ようは、3日目の寝床を決めるための試練だ。
それは――
チーム対抗で
「あるものって、一体何を取り合うって言うのよ?」
「それは……こいつだ」
ポケットに入れてあったものをアリシアに手渡してやる。
「これは……魔石、かしら?」
「ああ、中級モンスターの魔石だ」
魔石……モンスターの体内で生成される、結晶化された魔力の塊だ。
全てのモンスターの中に魔石があるわけではないが、一定確率で採取することができる。
魔力量によって大きさが変わり、もちろん、大きければ大きいほど価値が高く、魔道具などの触媒になることもあれば、そのアメジスト色に輝く特性から、変人な金持ち連中が装飾品として集めてることもあるらしい。
「中級の魔石って……なんでまたそんな高価なものを」
「せ、専門店に売れば、金貨1枚は貰えますよ……」
金貨1枚……だいたい10,000ルドか。
銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨――と、10枚で1つ上の高価と同価値になる。
銅貨1枚でリンゴひとつ、宿屋は安いところであれば銀貨1枚で泊まれると考えれば、破格の値段だな。
これを各チームに配り、奪い合わせるとは……アーバロル魔導学院、さすがは貴族の名門校といったところだな。
「一つのチームに1つ、この魔石が配られている。次の日の入りまでに持っている魔石の数が多いチームごとに順位が決定されるらしい」
「アーバロルの生徒数を考えるとチーム数は……」
「だいたい6、700くらいだな」
「……気が遠くなる数ね」
だが、マグナ教諭の話によると、この合宿は意外と参加者が多くないらしい。
元々この合宿はあくまで自由参加とのこと……ということは、せっかくの1週間の休暇という見方もできる。
貴族の多い学院なだけあり、実家に戻り休息を取るものも多く、実際の参加者は全体の三分の一程度とのことだ。
「――とはいっても、最低でも200以上のチーム……まあ、多いことには変わりあるまい」
「た、たしかに……ランキングで上位を取るためには、10個以上は取らないといけませんしね……」
「試験内容が発表されてからほぼ丸一日……試験時間の半分が過ぎたことを考えると、もうどのチームが何個持っているかも分からないわね……」
そう……俺たちは、圧倒的に出遅れている。
せっかく倒した相手チームが魔石を持っているかどうかすら分からない。
しかも、ウチのチームは俺やアリシア、殺傷力が高いメンバーがいる……つまりは、加減をしながら戦わなければいけない……。
そんな中で魔石を大量に集める……土台無理な話である。
「――普通なら、な」
「普通ならって……何か策でもあるっていうの?」
策、か……こりゃ、策って言うには少し荒っぽいかもな。
「ふふ、ふふふふふふ……」
「し、師匠が、悪い人の笑い方してます……!」
さあ、この試練……攻略してやろうじゃないか。