古代の英雄は平穏な学園生活を送りたい〜千年後に転生した俺は古代魔法を隠しながら青春を夢見る〜   作:大塚セツナ

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第53話 取り調べ

 合宿5日目……そして、監獄生活の2日目の朝は、看守の怒鳴り声から始まった。

 

 

「おらっ! さっさと起きろ!!」

 

「そんな怒鳴らなくても聞こえてるし、もう起きているぞ」

 

 

 なんなら暇だったから筋トレをしていたくらいだ。

 

 

「ふん! ならいい、出ろ!」

 

「ん? 釈放か?」

 

「んなわけあるか! お前には取り調べを受けてもらう!」

 

 

 取り調べ……そうか、悪魔としての疑いが掛かっているからか。

 まあ、正直話せることは限られているというか、ほとんど無いんだがな、

 

 

「ルーネス・キャネットくん、私からできるアドバイスは一つだ……審問官には気をつけろ」

 

 

 看守に牢から出される俺を見て、フィルゼが小声で話しかける。

 

 

「審問官? それは一体……」

 

「おらっ! 足を止めるなっ!」

 

 

 フィルゼに尋ねようとするが、看守が急かしてくるせいで聞きそびれてしまった。

 まあいい、行けばわかることか。

 

 

 

 

 

「ここに座って少し待ってろ!」

 

 

 バタンッ! と、看守が勢いよく扉を閉める。

 乱暴な態度だなと思いつつ、部屋を観察する。

 

 部屋は意外と簡素なもので、中央に椅子が2脚と、その間に木製のテーブルがあるのみだった。

 ただし、それ以外に仕掛けがあるみたいだな。

 

 

(魔封じの魔法陣か……)

 

 

 よく見ると床には魔法陣が施されていた。

 これは許可された人間以外の魔法を封じる、結界のような役割だな。

 

 実はこの部屋だけではなく、今俺が付けられている鉄の手錠や、独房の中にも同じ効果の魔法陣が刻まれている。

 なるほど、囚人から抵抗する力を奪うには最適だ。

 

 といっても、俺の魔力を完全に抑えることはできていない。

 多少阻害されている感覚はあるものの、魔法を発動するのに問題はなさそうだ。

 

 

「そんなに審問室が珍しいのかい?」

 

 

 突然背後から声をかけられ振り返ると、いつの間にか、扉にもたれかかる様に腕を組んだ初老の男が立っていた。

 

 白い修道服に身を包んだ男はカツカツと歩き出し、中央にある椅子に座る。

 

 

「さぁ、まずは椅子にかけたまえ」

 

「……ああ」

 

 

 男の指示に従い、もう一つの椅子に座り、男を見る。

 

 黒髪をオールバックにし、垂れた前髪はオレンジがかっている。

 教徒というには、少し強面な顔だが、修道服はキッチリと着込まれている。

 

 

「さて、まずは自己紹介だ……ワタシはアレイセス王国の隣国、聖スペリジア教国から派遣された司祭、アラクという者だ」

 

「そうか、俺は――」

 

「――ルーネス・キャネットくんだろう? 君の詳細は資料としていただいているよ」

 

 

 アラクは懐から一枚の紙を取り出し、それをマジマジと見ながら語る。

 

 

「アーバロル魔導学院に通う生徒で、ブラックの制服の一年生。入学当初は落第生――悪く思わないでくれよ? そう書いてあるんだ。……しかし、春も終わろうという頃から、突如として実力を出し始めた、と」

 

「概ねあっているな」

 

「まあ、単刀直入に聞かせてもらうよ……君は悪魔、もしくは悪魔と契約した魔人なのかね?」

 

「いいや、違うね」

 

 

 もちろん違う。むしろ昔から悪魔には困らされている立場だ。

 

 

「そうか。とても残念だよ」

 

「残念? それはどういう――」

 

「――魂への聖裁(ジャッジメント)

 

「……っ!」

 

 

 突如、体に電流が走るような痛みが襲う。

 

 おかしい……普通の攻撃なら俺の魔鎧を破ることはないはず……。

 

 

「くく……驚いているようだね? これは我が聖スペリジア教国で異端審問官の役職についてるものに与えられる、『神術(しんじゅつ)』という権能だよ」

 

「神……術……?」

 

「普通の人間には効果が無いが――普通とは違う《魂》の形をもつ者には絶対なダメージを与えるのだよ……そう、君のような悪魔にね?」

 

 

 普通とは違う魂……。

 そうか、俺は転生魔法を使ってこの時代にやってきた……それが魂になんらかの変化をもたらしたのか?

 

 悪魔の特殊な魔力が魂に混ざることで、人を魔人へと変化させる……たしかに、悪魔や魔人の正体を暴くには効果的だ……俺という例外を巻き込んでしまうことを除けばな。

 

 

「この神術が効いていることが、貴方が悪魔と関係していることの明確な証拠だ」

 

「……この時代の人間は、悪魔について知らないと思っていたが……なぜ、こんな魔法が……」

 

「――ただの魔法ではない、神術と言っているだろう」

 

 

 突如、額に欠陥を浮かび上がらせて俺を睨むアラク。

 

 

「これは我らが信仰する神が、人間に与えてくださった魔法を超えた力……全く、異端者はこの程度の知識もないのか」

 

「悪かったな……俺の時代にはそんなものは無かったもんでね」

 

「……まあいい、君が悪魔関係者と判明したのは私にとって朗報だからね」

 

 

 朗報だと?

 

 不思議に思い尋ねようとすると、アラクの顔が君の悪い笑顔へと変化する。

 

 

「――おかげで、正々堂々と君をなぶることができるのだからねぇ」

 

「……なるほど、フィルゼが刑務作業を『優しい処遇』と言った意味がわかったよ」

 

 

 こんなイかれたやつに『取り調べ』を受けるくらいなら、多少劣悪な労働でもした方がマシだ。

 

 

「……まあ、今日のところは勘弁してあげよう。せっかくの『取り調べ』なんだから、初日に壊れてはつまらない」

 

「……そりゃ、どうも」

 

「明日からが楽しみだよ……君のその澄ました顔が苦痛に歪むんだからねぇ? フフ、フフフフフ」

 

 

 

 これは……思ったより面倒な場所に連れてこられたものだな。

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