古代の英雄は平穏な学園生活を送りたい〜千年後に転生した俺は古代魔法を隠しながら青春を夢見る〜   作:大塚セツナ

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第56話 地上を目指して

 

 

「待てぇぇぇ!!」

 

「クソ囚人がぁぁぁぁ!!」

 

 

 当たり前だが、あの騒ぎのあとにコッソリ脱獄することは叶わず、俺とフィルゼは大量の看守たちにと絶賛おにごっこ中だ。

 

 

「くっ――水槍(アクア・ランス)ッ!!」

 

「――凍路《アイス・ロード》」

 

 

 看守たちの足元を凍らせ、その状態でフィルゼの水槍を当てる、すると――

 

 

「うぉぉ!?」

 

「お、おい! こっちに来るなっ!」

 

「んなこと言ったって止まらな――うわぁぁぁぁ!!?」

 

 

 ――踏ん張りが聞かなくなり、どこまでも後退し続ける。

 オマケに床が滑るせいで元の位置に戻るまでも一苦労だ。

 

 普通に倒すことも考えたが、彼らはただ単に自分の職務に従っているだけ……無駄に被害を大きくするのも良くない。

 これが、何度も囚人を追い払うことで見つけた、俺たちの正攻法だ。

 

 

「……だが、これだとイタチごっこだ。出口は一体どこだ?」

 

「この牢獄の地下は10階まである。私たちが囚われていたのは地下5階で、階段を二回上がったから――」

 

「残り3階層か」

 

 

 しかし、一階一階が迷路のような複雑な構造になっていることを考えると、かなり面倒だな。

 

 

「……天井をブチ破るか?」

 

「おいおいおい、そんなことしたら指名手配されてしまうんじゃないかな!?」

 

「どうせ脱獄犯だし」

 

「君はただの冤罪だろ? ……私と違って」

 

 

 ……フィルゼの顔が、少しだけ暗くなる。

 

 

「……君は、どうして犯罪者の――君の仲間を傷つけた私を、脱獄に誘ってくれたんだい?」

 

「随分と今更だな」

 

「君の実力ならば、1人で脱獄することだってできたはずだ」

 

 

 たしかに、俺単独でも脱獄は容易だった。

 リルが戻ってから共に出ることもできた。

 

 けど――

 

 

「――お前が、過去を償いたがっていたからだ」

 

「私が……」

 

「人間は間違った時、あんなことやらなければよかった、という後悔をしてしまう」

 

 

 決してその気持ちが間違っているわけではない。

 だが、それは『過去』を……文字通り、過ぎ去ったものに縋っているだけだ。

 

 

「だがフィルゼ。お前は過去と向き合い、それを乗り越えようとしている。――それは『未来』を捨てていない証拠だ」

 

「……未来、か」

 

「未来に希望を見出すってのは、俺も気持ちがわかるからな」

 

 

 なにせ俺は、そのために千年も時を超えてきた男だからな。

 

「だから、そんなクヨクヨしてばかりいないで、前を向いて生きようぜ!」

 

「……ありがとう」

 

「ん? 何か言ったか?」

 

「ふっ、なんでもないさ!」

 

 

 先ほどとは打って変わって、清々しい笑顔を見せるフィルゼ。

 表情がコロコロと変わって、愉快なやつだな。

 

 

 

「おやおや、脱獄犯がいると聞いて様子を見にくれば――やはり君たちか」

 

「アラク……!」

 

 

 いきなり、走っている俺たちの進路を塞ぐように、物陰からアラクが現れた。

 

 

「随分と監獄内をメチャクチャにしたようだ……これは、神も君たちを見放してしまうぞ?」

 

「あいにく、神とやらとは会ったことが無くてな。面識がないやつに救われようって気はないな」

 

「私はとうに神に見放されているだろうね……いつか会うことがあれば謝っておくよ」

 

「……なんとも度し難い異端者どもだ」

 

 

 俺たちの軽口を聞き、ピキピキと額に血管を浮かべるアレク。

 

 

「……で、どうする気だ? お得意の神術とやらは俺には効かないぞ」

 

「えぇ、非常に、甚だ不愉快だがその通りだ」

 

「なら、怪我をしないうちにさっさと道を開けるんだな」

 

 

 我ながら、随分と小悪党じみた発言だな。

 

 

「残念ながら、立場的にそうもできないので――」

 

 

 アラクが、人差し指を立てながらニヤリと笑う。

 この魔力の流れ――

 

 

「――伏せろ、フィルゼ!」

 

「――ッ!!」

 

 

 フィルゼが素早く身を屈めた瞬間、壁をぶち破って影が現れる。

 

 その影はそのまま俺へとぶつかる。

 

 

「……くっ!」

 

 

 思ったよりも重い衝撃が俺の体にのしかかる。

 咄嗟のことで勢いを止めきれないと思い、体を捻り、逆に影を押し込むことで軌道を逸らす。

 

 狙いをズラされた影は、そのままアラクの近くの壁に激突し、砂埃が辺りに舞う。

 

 

「な、なんなんだい、今のは?」

 

「さあな、敵であることは間違いなさそうだ」

 

 

 砂埃が少しずつ収まり、影の姿が見え始める。

 

 

「あれは……騎士、なのかい……?」

 

 

 見え始めたソレは、視界を確保するための目元や、動きを阻害しないための関節部の隙間すらない……まさに、全身を包み込むような鎧だった。

 

 

「ククク……どうだい? 『魔導兵』の力は」

 

「魔導兵……?」

 

「全身が魔法を軽減する特殊金属の鎧でできた、最強の兵士さ」

 

 

 魔法を軽減する特殊金属……これは、魔導士を殺すための兵士だな。

 

 

「ああ、最初に忠告しておくが、こいつの強さは――低級魔人に匹敵すると自負している」

 

「ま、魔人に……!?」

 

「……驚いたな」

 

 

 アラクの言っていることは虚勢ではない。

 あの魔導兵からは、時計台の屋上のフィルゼほどではないが、魔人化したジャックたち程度の魔力を感じる。

 

 現代の魔法技術で、どうやってアレを作ったというのだ……?

 

 

「さあ、君たちは、ワタシの可愛い魔導兵を相手に、どこまで遊んでくれるのだね?」

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