古代の英雄は平穏な学園生活を送りたい〜千年後に転生した俺は古代魔法を隠しながら青春を夢見る〜   作:大塚セツナ

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第57話 魔導兵

 

 魔導兵の拳を、ギリギリで避けるフィルゼ。

 だが、その外れた拳が当たった壁が砕け、瓦礫がフィルゼへと直撃する。

 

 

「くっ……!?」

 

「フィルゼ、下がれ!」

 

 

 幸い、大したダメージにはなっていなさそうだな……。

 

 魔導兵へ向かい直し、構えを取る。

 

 

「あいつ……なんであの重装備で、こんなに速く動けるっていうんだい……」

 

「しかも、多少の魔法ではビクともしないってオマケまでついている」

 

「そのオマケ、返品できないかな……」

 

 

 牽制程度の魔法じゃ、大したダメージにならない。

 かといって、俺が下手に魔法の威力を上げてしまうと、死んでしまう可能性が高い……これはまいったな。

 

 

「私の魔法は水……基本的に物理攻撃力が高いわけではない。強い魔法を打とうとしても――」

 

「……!!」

 

「――っと! こんな風に阻害されてしまう!」

 

 

 魔導兵が剣を横薙ぎに振るいフィルゼを襲い、魔法を撃たせる隙を作らない。

 俺は威力が強すぎて、使う魔法が制限される。

 

 この繰り返しで、なかなか糸口が見えてこないな。

 

 

「くくく……ワタシの魔導兵に、なかなか苦しんでいるようだねぇ?」

 

 

 少し離れた位置で、アラクが俺たちを嘲笑っている。

 

 このままでは、他の兵士たちが追いついて、挟み撃ちにあってしまう。

 そろそろなにか攻略法を探さないとな……。

 

 

「アクア・ラン――ス!?」

 

 

 フィルゼが諦めずに水槍を打とうとしたタイミングで、飛び散った瓦礫に足をつまづかせてしまう。

 魔導兵を狙っていた照準がズレ、水の槍はアラクの方へ飛んでしまう。

 

 

「――魔導兵ッ!!」

 

「……!」

 

 

 アラクが叫ぶと、魔導兵が地面を蹴り上げ、その巨体からは想像できないスピードでアラクの方へと向かい、水の槍を横から叩きつけるようにして軌道を無理やり変えた。

 

 再び狙いが逸れた水槍は壁にあたり、形を失ってしまった。

 

 

「う、嘘だろ……? 私の水槍(アクア・ランス)に後出しで追いついたというのかい……?」

 

 

 ……今の動きで、見えたかもしれない。攻略法。

 

 

「フィルゼ、耳を貸せ」

 

「な、なんだい?」

 

「いいから……を……して……するんだ」

 

 

 素早く作戦を伝えると、フィルゼは少し引き気味な顔になる。

 

 

「え、えぇ……き、君、よくそんな子悪党な作戦を……」

 

「今は緊急事態だろ? 手段は選んでられないさ」

 

「いや、でも、私は誇りあるバッシュロック家の次男として……」

 

「四の五の言っている時間はないぞ――ほら来た!」

 

 

 敵の作戦会議など待つ道理はない、と言わんばかりに、再び魔導兵が剣を振り下ろしてくる。

 俺とフィルゼは左右に分かれてそれを避け、体勢を立て直す。

 

 

「手筈通り頼むぞっ! ――火球(ファイア・ボール)

 

 

 俺は真っ直ぐに火球を打ち出す――ただし、標的はアラクだ。

 

 

「なっ――魔導兵ッ!」

 

 

 まさか自分が狙われるとは思っていなかったのだろう、驚いたアラクは、急いで先ほどのように魔導兵を呼びつける。

 

 

「……!」

 

 

 こちらも先ほどと同様に、瞬時にアラクの前へと駆けつけた魔導兵。

 正面から火球を受けるが、まるでものともしないように剣を構える。

 

 ――だが、それでいい。

 

 

「今だっ! いけ、フィルゼ!」

 

「あまり気持ちのいい作戦ではないがね――三ツ又之水槍(アクア・トライデント)ッ!!」

 

 

 魔導兵がアラクを守りに行く間に魔力を溜め終えたフィルゼが魔法を放つ。

 三つの水槍。一つ一つが先ほどまでの水槍よりも2回りは巨大……これなら――

 

 

「なっ……魔導兵ッ!」

 

「……!」

 

 

 フィルゼの大技に気付いたアラクと魔導兵、だが、もう遅い。

 

 魔導兵が腕を交差させ、防御の姿勢をとる。

 3つの水槍のうち、2つは腕と胴体へと辺り大きくその身を後退させる。

 

 そしてもう一つの水槍は、魔導兵の頭部へと命中し――

 

 

「――く、首が、取れ……」

 

「フィ、フィルゼ、やりすぎだ!」

 

 

 なんと、水槍が当たった頭部は、兜ごと吹き飛び、首から上が無くなってしまった……!

 

 

「何も殺すまでしなくていいだろ!?」

 

「ち、違っ! わ、私はそんなつもりじゃ……!」

 

「おやおや、君たちは何を勘違いしているのだね?」

 

 

 俺たちが慌てふためいていると、アラクがニタニタと笑いながらこちらに問いかける。

 

 

「勘違い……だと?」

 

「ワタシの魔導兵を、そんな攻撃で倒せたと思っているのかね?」

 

「倒せた、って……申し訳ないが、今ので君の仲間は……」

 

 

 フィルゼが、申し訳なさげな表情で顔を伏せる。

 しかし、アラクの笑顔は一層増すばかりだった。

 

 

「仲間? それが勘違いだというのだよ」

 

「勘違いって……」

 

「さぁ! 再び動き出すといい、魔導兵!」

 

 

 アラクが叫ぶと、なんと、頭部を失ったはずの魔導兵が振り返り、後ろへと歩き出した。

 

 

「あ、歩き出した……?」

 

「ど、どういうことなんだい……? 彼は死んだはずじゃ……」

 

 

 歩き出した魔導兵は、転がっていた自らの頭部を拾い、あろうことか、再び自らの首と接合するように鎧の上に装着したのだ。

 

 

「なっ……や、やつは不死身なのかい……!?」

 

「チッチッ……残念ながら、その回答では50点だ」

 

 

 アラクがわざとらしく指を横に振り、肩をすくめる。

 

 頭部を取り戻した魔導兵は、スタスタと歩き出し、アラクの隣に立ち、剣を構える。

 

 

「こいつはただの兵士じゃない。中身の無い鎧そのものなのだよ」

 

「な、なんだって!?」

 

 

 ……そうか、ずっと抱いていた疑念はそれか。

 

 必要なはずの関節や、視界を確保するための隙間すらない鎧。

 重さすら感じさせない、人間離れした動き……ずっとヒントは出ていたじゃ無いか。

 

 あの特殊金属とやらのせいで、中の人間の魔力を感じにくいのだと思っていたが、なるほど、最初から中に人間などいなかったのか。

 

 

 ――なら、話は早いな。

 

 

 

「私が操る――文字通りの傀儡さ」

 

「そ、そんな……そんなもの、倒しようがないじゃないか!」

 

「そうさ! 死という概念すらない最強の兵士っ! これがワタシの最高――」

 

「――(オリジン・ブレイド)

 

「――けっ……さく……」

 

 

 腕を振り下ろし、不可視の斬撃で魔導兵を切り裂く。

 すると遅れて、ズルズルと音を立て、魔導兵の体が縦に割れ、その場に崩れ落ちる。

 

 

「ワ……ワタシの……魔導兵が……」

 

 

 いきなりの敗北に、アラクはポカンと口を開けて固まってしまった。

 

 中身が人間じゃないなら、わざわざ力を抑えて戦う必要もない。

 さっさと戦闘不能にして先に進んでしまえばいいだけだ。

 

 

「さて、先を急ごう。フィルゼ」

 

「き、君は本当に……いや、もう何も言うまい」

 

 

 フィルゼが何をかを言いかけて、諦めたように肩を落とす。

 いったいなんなんだ?

 

 

「……ん? ……ヤバいな、フィルゼ急いで駆け抜けるぞ」

 

「はい? なんだい、さっきからマイペースにも程が――」

 

「今ので天井が崩れそうだ」

 

「――な、なんだってぇぇぇ!?」

 

 

 力を制御しなくていいと分かり、思わず魔力を込めすぎてしまった。

 流石に監獄ごと崩壊するほどではないが、この付近の天井が崩れるくらいの威力はあったみたいだ。

 

 

「おい! アラク! さっさと避難した方がいいぞ!」

 

「ワタシの、最高傑作が、一撃で……」

 

「巻き込まれても知らないからなー!」

 

 

 ……まあ、死にはしないだろう。放っておいて、今は逃げさせてもらおう。

 

 

「よし、フィルゼ! 一気に抜け出すぞ!」

 

「ああ……君と一緒に逃げることを選んだ過去の自分を恨むよ……」

 

「……前向きに生きようぜ!」

 

「やかましいよ!!」

 

 

 起こりながらも、さっさと走り出すフィルゼ。

 ……案外、たくましいやつだな。

 

 

 

 さて、天井が崩れ落ちる前に、俺も走り出すとするか。

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