古代の英雄は平穏な学園生活を送りたい〜千年後に転生した俺は古代魔法を隠しながら青春を夢見る〜   作:大塚セツナ

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第58話 協力者

 王都エクサス。

 

 アレイセス王国の中央に位置し、国随一の学び舎・アーバロル魔導学院が座する街。

 活気があり、笑顔に溢れていることで有名な街であるが……今日は少し様子が違う。

 

 

「いたかっ!?」

 

「いえ! こちらにも確認できません!」

 

「ええい! さっさと見つけだすぞ!」

 

 

 なにやら、兵士が慌ただしく動いている。

 誰かを探しているらしく、街の中のあちこちを駆け回る様子は、街の住人たちの噂の窓になっていた。

 

 ま、兵士たちが追っているのは俺とフィルゼなんだけどな。

 

 

「あっちも兵士、こっちも兵士……こりゃ、表通りなんて歩いたら一瞬で見つかるな」

 

「そんな悠長なことを言っている場合か……このあとの作戦はどうなっているんだい?」

 

「ん? そんなものないぞ」

 

「……はぁぁ!?」

 

 

 驚いた顔で振り返るフィルゼ。

 隠れているのに、そんなに大声出すなよ。

 

 

「なっ……なにか策があるから、牢から出たんじゃないのかい?」

 

「いいや? 出ようって思ったから出ただけで、作戦なんて一個もないぞ」

 

「ノ、ノープランでここまで来たって言うのかい!?」

 

「ほら、思い立ったが吉日っていうだろ?」

 

 

 それに、アラクが「取り調べは明日からだ」って言ってたんだ、そんな面倒なことをされるくらいならさっさと脱獄した方がいいだろ。

 俺の回答に納得がいかないのか、フィルゼがその場に膝から崩れ落ちる。

 

 

「あぁ……どうしたって私は、こんなバカの言葉に絆されてしまったのだ……」

 

「失礼なやつだな」

 

「隠れ蓑も協力者1人だって用意してない君が悪いんだろう!?」

 

 

 ……協力者、か。

 アリシアやイリーナたちは、きっと俺のことを信じて待っていてくれているだろう。

 けど、この状態で合流しては、2人が国に狙われる事態に繋がりかねない……。

 

 

「……こんな敵だらけな状況、巻き込んでも心が痛まないやつしか連れ回せないな」

 

「おい、その巻き込んで心が痛まないやつが誰のことなのか聞こうじゃないか!!」

 

「――おいっ! そこの路地から声が聞こえるぞ!!」

 

 

 まずいな、俺たちの話し声が、表通りの兵士まで聞こえてしまったらしい。

 

 

「フィルゼが大声出すから……」

 

「誰のせいだと――って、何回このやり取りをすれば気が済むんだい!」

 

 

 漫才(?)をしながらも、急いで路地の奥へと走り出す俺たち。

 後ろからは、兵士たちの足音や怒鳴り声が迫るかのが聞こえる。

 

 

「おい! あいにく私はこんな裏道には詳しくない! どっちに向かえばいいのだ!」

 

「俺も知らん!」

 

「貴様に聞いた私がバカだったよ!」

 

 

 右、左、また右……と、行き当たりばったりに走り続ける。

 兵士たちの声も増え始め、徐々に追い詰められていることがわかる。

 

 しかし、ここに来て行き止まりへと当たってしまう。

 

 

「くっ……! 引き返さなければ――!」

 

「いや、兵士たちの魔力が、すぐそこまで近付いている」

 

「袋のネズミ……ってわけだね」

 

 

 仕方あるまい……あまり手荒な真似はしたくなかったが、ここは一度兵士を倒して――

 

 

「――キャネットのダンナ! こっちだ!」

 

 

 強硬策に出ようとした時、どこからか俺の名を呼ぶ声が聞こえた。

 驚いて辺りを見回すと、声の主は行き止まりにある建物の2階の窓から身を乗り出していた。

 

 

「ほら、ロープだ!これでこっちまで登ってくるんだ!」

 

「あれは――」

 

「ルーネス・キャネットくん! 今はあの者を信じるしかないぞ!」

 

 

 フィルゼに急かされ、男の指示に従い、ロープを頼りに2階まで駆け上がる。

 

 

 

 

 

「ふぅ……間一髪だったな!」

 

 

 無事、2階に上がり兵士たちを掻い潜った俺たちを、男が親指を立てて労ってくる。

 

 

「まさか、アンタに助けられるとはな」

 

「ん? なんだい、ルーネス・キャネットくん、君の知り合いかい?」

 

「……おいおい、フィルゼ、お前にも見覚えがあるはずだぞ?」

 

「んん?」

 

 

 フィルゼは男を凝視し、悩ましげな顔をみせる。

 数秒悩んだ末、ハッと目を見開く。

 

 

「あ、あなたは……!」

 

「どうやら、ようやく思い出したらしいな」

 

 

 男の正体、それは――

 

 

「まさか、あの時の恩人と、強盗……2人を同時に助けることになるとは思わなかったぜ」

 

「以前、私が襲った商人!」

 

 

 そう……以前、俺とアリシアがマグナ教諭のお使いをしている時、フィルゼ一派に襲われているところを助けた商人だったのだ。

 

 

「商人のおっさん――そういえば、名前を聞いてなかったな」

 

「おっと、オレとしたことが――日常の困りごとからドラゴン討伐の補助までなんでもお任せあれ! 天才商人マチェットの魔道具店へようこそ!! ……で有名な、マチェット様だぜ!」

 

 

 すごいな、全く知らない。

 

 

「ま、まあなんだ、ありがとうな、マチェット」

 

「なーに、あの時の礼もまだできてなかったからな! 気にすんな!」

 

 

 そう言いながら右手を差し出すマチェット。

 俺もそれに応じ手を差し出すと、マチェットは力強く手を握り、ブンブンと振り回すような握手をしてくる。

 

 その様子を、どこか気まずそうに見ていたフィルゼが、意を決したように声を出す。

 

 

「あ、あの……」

 

「ん? なんだ、強盗の小僧」

 

「強盗って――いや、その通りだな……あの時の非礼、すまなかった!」

 

 

 そう言い、深々と頭を下げるフィルゼ。

 まさか、あのプライド高いフィルゼが頭を下げるとは……少しずつ、アイツの中で何かが変わってるのかもしれないな。

 

 

「マチェット殿の取り扱う商品は、とても品質が高いことで有名……どうしても手に入れたくなり、あのような暴挙を……本当に申し訳ないと思っている」

 

「……顔を上げな」

 

 

 厳しい表情でフィルゼの話を聞いていたマチェット。

 

 だが、顔を上げたフィルゼを見ると、ニカッと笑顔を見せて右手を差し出した。

 

 

「えっ……?」

 

「おら、お前も手ェ出しな!」

 

「あ、は、はい……」

 

 

 おずおずと差し出されたフィルゼの手を、俺の時同様、力強く握るマチェット。

 

 

「おし! よく謝れた! これであの件はチャラだな!」

 

「え、そ、そんな、私はまだ誤っただけで、謝罪金の一つも――」

 

「ヘッ! ガキがそんな回りくどいことしよいとすんじゃねぇよ!」

 

 

 そう言い、マチェットは鍛えられた太い手で、ガシガシとフィルゼの頭を乱暴に撫でる。

 

 

「ガキは間違えたら真っ直ぐ謝る! それが出来りゃ充分よ!」

 

「あ、ありがと……いだっ……ございます……いでっ」

 

 

 ぐわんぐわんと頭を揺らしながらも、礼を述べるフィルゼ。

 

 その顔は、痛がりつつも、なんだか照れ臭そうな表情を浮かべている。

 

 

「よーし! お前ら腹減ったろ? 飯食ってけ!!」

 

 

 

 言われてみれば、昨日の昼から何も食べていなかったな……ここは、お言葉に甘えるとさせてもらう。

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