古代の英雄は平穏な学園生活を送りたい〜千年後に転生した俺は古代魔法を隠しながら青春を夢見る〜   作:大塚セツナ

61 / 61
第59話 作戦会議

 

 あのあと、俺たちはマチェットから提供された晩飯を食べ終わり、一息ついていた。

 

 

「ふー、美味かった、ごちそうさま」

 

「初めて食べる味だったが……実においしかったよ、ありがとう」

 

「お? 強盗の小僧はオークナイトの肉は初めてだったか」

 

「オークナイ……!?」

 

 

 驚いて椅子から転げ落ちそうになるフィルゼ。

 

 

「モ、モンスターを、た、食べるのか!?」

 

「あん? 当たり前だろ、何言ってるんだ?」

 

「や、やはり私を恨んでそんなものを……!?」

 

 

 どうやら、フィルゼはモンスターを食べるのは初めてらしい。

 庶民の生活では、安くて美味いってことでよくあることだが……そうか、貴族にはその文化が無いのか。

 

 

「バカやろう、オークナイトの肉は、普通のオークと比べて筋肉がある分、噛み応えもジューシーさもあって人気なんだぞ?」

 

「こ、これが庶民の普通なのか……?」

 

「ま、オレの仕入れたスパイスが合わさることで、より美味くなってるがな!」

 

 

 たしかに、スパイスが効いてたな。

 大戦時代は、狩ったモンスターを味付けもしないで食べることもざらだったから、俺には少し濃く感じたが……それでもペロリと完食してしまった。

 

 

「……それはさておき、現状の確認をしておきたい」

 

「あ、ああ……」

 

 

 俺が合宿してたところを捕らえられてから、監獄から脱走して、街を逃げ回り……おおよそ2日経っている。

 

 俺とフィルゼは兵士たちに追い回され、マチェットに匿って貰っているが……いつまでも世話になるわけにもあるまい。

 

 

「さて、どうしたものか……」

 

「……それにしても、マチェットさんは、追われているのが私たちだって、よくわかりましたね?」

 

「商人の情報網をなめんな、うちのマチェット商会は、情報の速さでここまで成り上がったんだぞ?」

 

 

 なるほど、いつの世も商人の噂は早い、というわけか。

 

 

「……ちなみになんだが、悪魔や魔人、という言葉に心当たりはあるか?」

 

「ああ、詳しい情報は出回ってないが、なんでも大昔に絶滅したモンスターみたいなやつ……って噂は聞いたことあるぜ?」

 

 

 どうやら、一般には詳細までは知らされていないようだな。

 国の方で存在を秘匿している……となると、大勢の生徒の前で公開した、宰相ラディールや護衛のパイス、やつらの行動は不可解だ。

 

 

「まさか、お前らガキたちにそんな眉唾もんの疑いをかけるなんて……宰相の独断らしいが、とうとうボケちまったのか?」

 

「宰相の、独断?」

 

「おう、なんでも宰相のラディール様が、国王の反対を押し切って行動を起こして、この騒ぎになったらしいぞ?」

 

 

 ……国としての判断ではないのか。

 それが本当なら、上手くいけば、この事態を治めることもできるかもしれない。

 

 

「……国王に、直訴しにいくか」

 

「なっ!? しょ、正気かい!?」

 

 

 フィルゼが椅子を倒して立ち上がる。

 

 

「この騒ぎの中、国王のところに行けば、捕まるのがオチだぞ!?」

 

「このまま逃げ続けてもどうしようもないだろ、国の外にでも亡命するのか?」

 

「それは……そう、だけど……」

 

 

 段々と言葉を詰まらせるフィルゼ。

 

 

「そんなに不安なら、どこかに隠れるか、逃げるといい。お前の正式な釈放も、俺が頼んでみる」

 

「……私の場合、犯した罪は消えない。その見込みはないだろう」

 

「逃げてる途中で聞いた話だと、真犯人によって精神錯乱状態だったんだろ? それを引き合いに出せば、なんとかなるかもしれないだろ」

 

 

 フィルゼがローブ姿の男と話している時、段々と誘惑に負けるような思考に陥っていたという。

 おそらく、悪魔の魔力の影響だろう。

 

 悪魔の魔力は、常人には抗い難い、強い魅力のようなものある。

 近くにいるだけで精神が侵され、正常な判断能力が徐々に奪われることも、そう珍しいことではない。

 

 

「……わかった。君の策に乗ろうじゃないか」

 

「そうか、なら上手く行った時の合流場所を――」

 

「ただし、私も付いて行く」

 

「……いいのか? 無理をしなくてもいいんだぞ」

 

「言っただろう? 私は借りを作るのは嫌いなんだ、君にばかり動いてもらうわけにはいかないさ」

 

 

 ……そうだな、フィルゼはそういうやつだった。

 

 

「よし、そうと決まれば、どうやって王宮に潜入するかだが……」

 

「それなら、オレに任せてくれ!」

 

 

 マチェットが立ち上がり、胸を叩く。

 

 

「実は、ちょうど明日の朝方、王宮に商品を品卸ろしする予定だったんだ。その荷物の中に隠れれば、すんなり行けるだろうぜ!」

 

「……いいのか? 巻き込んでしまうことになるぞ」

 

「あの時の礼をまだ返せてないんだ! これくらい手伝うぜ!」

 

 

 そう言い、親指を立てニカッと笑うマチェット。

 匿って貰っているというだけで、お釣りが必要だというのに……。

 

 

「……ありがとう。この恩は、いつか返させてもらう」

 

「へへっ、それなら、今度ウチの商品を買いに来てくれればいいさ!」

 

「……バッシュロック家で、貴方の店の在庫まで全て買わせてもらうとするよ」

 

「お、そいつはありがてぇや! 売れ残った商品の処分に困ってたところだからな! ガッハッハっ!」

 

 

 バシバシと音を立てながらフィルゼの背を叩くマチェット。

 王宮と取引する規模の商会ならば、バレた時のリスクは大きいことは理解しているだろうに……なんとも豪快な男だ。

 

 

「よしっ! となりゃ、荷物に隠れる場所を作らねえとな……オレはちょっくら作業してくるから、お前さん方はさっさと寝ちまいな! 奥に仮眠室があるから、好きに使ってくれ!」

 

 

 そう言い残し、階段を下がって行くマチェット。

 頼もしい協力者ができたものだ。

 

 

 

 

「さて、明日の朝は早い……俺たちも眠るとしよう」

 

「……ああ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。