古代の英雄は平穏な学園生活を送りたい〜千年後に転生した俺は古代魔法を隠しながら青春を夢見る〜   作:大塚セツナ

8 / 61
第8話 ライバル?

「それでは、試験の結果を張り出しておきますので、各自確認をしておいてください」

 

 

 朝のホームルームが終わり、教室の前の方に紙が張り出される。

 皆次々と見に行くが、少しガッカリした顔で離れていく。

 結果はチーム評価と個人評価に分かれているようだな。

 チーム評価の方は、香水の力で多くのモンスターを倒したフィルゼ率いる俺のチームが一位だが、個人評価は――

 

 

「これは……なかなか、酷い結果ばかりだな」

 

『昨日の森でのものですね』

 

 

 ああ、そうか、昨日の森にはリルがいたからか。

 俺たちのところは、フィルゼの香水のせいもあり数も集中していたが、他の連中も、リルの魔力に怯え、入り口付近に避難したモンスターが多かったんだろう。

 まだ学生の身で、大量のモンスターを捌ける人間も限られているゆえの……この結果か。

 

 

「さて、俺の名前は……、うん、ダントツの1位だな……」

 

『主の力であれば、当然です』

 

「とはいえ、ゴブリンキング1匹だけで、こんなにポイントが入るとは思わなかったな」

 

 

 あの時代、ゴブリンの群れのほとんどにキングがいた。

 今は上位獣と言われてるらしいが、正直、今の分類で言うと、当時は低位獣どころか零獣くらいの扱いだったのに……千年で、人類が弱くなったのか……?

 

 

『主、主の下にある名前、さっきの女では?』

 

「ん? あぁ、本当だ」

 

 

 目を向けると、そこにはアリシア・アーガネットという名が記されていた。

 

 

「意外とポイント高いな。他のレッドやホワイトの生徒たちを抑えての2位か」

 

『意外とやるようですな』

 

 

 内訳を見ても、そこそこ強いモンスターも倒しているみたいだし……なんでブラック生なんだ?

 これくらいの実力があるなら、貴族で固められてるホワイトはともかく、レッドくらいにはなれると思うんだが……。

 

 

「アンタ……、噂のゴブリンキング殺し、だったのね」

 

「お、アリシアじゃないか」

 

 

 噂をすればなんとやらだな。隣の教室から、わざわざやってきたらしい。

 

 

「昨日は人混みに隠れて見えなかったけど、まさか、こんなヒョロヒョロなやつが……ねえ」

 

「これはまた、随分な評価だな」

 

「アタシが1位になれると思ってたのに……」

 

 

 たしかに、アリシアのポイントは、他の追随を許さないレベルだ。

 俺がいなければ、間違いなく個人評価は1位だっただろうな。

 

 

「決めたわ! ルーネス・キャネット! アンタをアタシのライバルとして認めてあげる!」

 

「……俺は、友達になりたいんだけどな」

 

 

 突然のライバル宣言に面食らう。

 友達にならないか声をかけた人間に、まさかライバルと呼ばれるとはな。

 

 

「覚えておきなさい! 1番はこの、アイリス・アーガネットということを!」

 

 

 そう言い残し、足早に去っていき、本日の2度目の、置いてけぼりをくらう。

 

 

「また、嵐のような女だったな」

 

『なんだか、面倒な予感がしますな』

 

「やめてくれ。お前の勘はよく当たる」

 

 

          *

 

 

 リルの勘が当たっていたことが分かるのは、予想よりも早かった。

 一時眼目の終了のチャイムが鳴ると同時に、廊下からドカドカと足音が聞こえる。

 

 

「さあ! そっちも、一時限目は魔法薬学の小テストだったでしょ! 点数は!?」

 

「100点」

 

「くぅ! 98点よ! 覚えてなさい!」

 

 

 典型的な三下セリフを吐き捨て、自分の教室に戻っていく……もしかして、今日ずっとこんな感じなのか?

 

 

 

 

 二時限目終了後。

 

「古代魔導論で勝負よっ!」

 

 

 三時限目終了後。

 

「魔導的観点から観る呪術論でっ!」

 

 

 四時限目終了後。

 

「モンスター生態論ッ!!」

 

 

 昼食時。

 

「早食いで勝負っ!!」

 

 

 

          *

 

 

 

『なんなのですか! あの女っ! ワタクシと主の貴重な休み時間までっ!!』

 

「まあまあ」

 

『というか早食いってなんですか!? もはや関係ないでしょう!』

 

 

 それは確かにそう。

 

 

「だが、良いものだな。ライバルというのは」

 

『あれがライバル……ですか? 全て主の圧勝だったではありませんか』

 

「いや、ともに切磋琢磨し、競い合う。これぞ、ライバルというものではないか?」

 

 

 ……たしか、千年前にも何人かいたな。ああいう『バカ(戦友)』たちが。

 当時は、戦争というのもあり、あまり余裕がなく交友を深められなかったが……今度は、共に同じ時間を過ごしてみたいものだな。

 

 

『む、主。昼休憩が終わる時間です。そろそろ準備の方を進めたほうが良いかと』

 

「お、いつの間にかそんな時間か」

 

 

 たしか次の授業は……演習場での模擬戦だったな。

 

 

 

          *

 

 

 

 

「さあ! もちろん、私と戦ってもらうわよ!」

 

 

 演習場に着くと、当たり前のようにアリシアが俺の元へ駆け寄ってきた。

 そうか、今日も合同授業だったか。

 よく見ると、レッドやホワイトの生徒もいるな。

 

 

「俺は構わないが……。他に組む予定だった人とかいないのか?」

 

「ギクっ」

 

 

 え? 今、ギクって言った? 口で?

 

 

「べ、別に、ア、アタシのレベルになると? 組む相手がいないっていうか〜?」

 

「ああ、友達、いないのか」

 

「ギクギクっ!?」

 

 

 もはや、そういう鳴き声みたいだな。

 汗をダラダラ流し、口笛を吹くときのような顔をしているが、掠れた音しか出ていない。

 

 

「無理に誤魔化さなくてもいいぞ?」

 

「な、なによ! アンタだって友達いないんでしょ!? どの時間も、そこの犬っころとしかいなかったじゃない!?」

 

『誰が犬っころだ、貴様!』

 

 

 珍しく、リルが半ギレになっている。

 まあ、一日中絡まれていたんだ、我慢の限界だったんだろう。

 

 

「え……? 使い魔が喋ってる……?」

 

『はっ!? も、申し訳ありません! 主の言いつけを破ってしまいました!』

 

「落ち着け、問題ない」

 

 

 幸いなことに、アリシア以外は離れた場所にいたためか、気付いてない様子。

 これ以上騒ぎ立てなければ気付かないだろう。

 

 

「悪いが、リルのことは内密に頼むぞ。騒ぎになるとマズいんだ」

 

「あ、アンタ、何者なのよ……?」

 

「お前と同じ、ただの学生だよ」

 

 

 こちらを訝しんでいるものの、騒ぎ立てる様子はない。

 まあ、最悪、リルが喋ること自体がバレるのは仕方ないが……、こんな街中にフェンリルがいると知れたら、軍が出てきてもおかしくない。

 それは、俺の学園青春生活が続けられなくなる、ということになってしまう。

 

 

「ま、まあ、今はいいわ! それよりも、私と戦ってもらうわよ!」

 

「構わないぞ」

 

「逃げようたって……え、いいの?」

 

 

 さっきまでの威勢はどこへやら、拍子抜けした顔をしている。

 なんだ? 一日中勝負を挑んできたのに、急に怖気付いたのか?

 

 

「いつもだったら、この辺で断られるのに……」

 

「ん? なんか言ったか?」

 

「な、なんでもないわよ! それじゃ、早速やるとしましょう!」

 

 

 なんだか、急にご機嫌になったアリシアを訝しみながらも、皆が集まっている方に行く。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。