勘違いTS魔王様は悪役令嬢になる。   作:ハニラビ

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TSはいいぞ。(挨拶)TS要素薄くてごめんな(懺悔)気軽に感想とか書いて頂けたら作者が喜びます。


オープンワールドだと道草が本編みたいな事あるよね

 

 部屋をノックする音が聞こえる。どうやら誰か来たようだ。

 

 

「どうぞ。」

 

「失礼するね、溺れたって聞いたよ。体調はどうだい。」

 

「・・・オレールお兄様。」

 

 

 どうやら見舞いにやって来たようだ。ハウゼン家長男オレール。やはり兄妹なのか、贅肉は標準装備だ。血を争えないのかと思いもしたが、次男と三男は別に太ってはいない。つまりは自業自得というものだろう。

 

 

「そのまま楽な姿勢でいい。まだ、無理はしてはいけないよ。果物なんかを後で運ばせるから元気が出たら食べるといい。」

 

「・・・感謝します。」

 

「お礼なんていらないよ。このくらい家族として当然さ。」

 

 

 ハウゼン家においてオレールの在り方は逆に珍しいものだった。他者に気を使えるという一点で美徳レースの最前線を独走出来るのだ。ハウゼン家の性格が終わっているだけか。

 オークみたいな見た目のくせに性格は温厚そのもので優しさが歩いているようだ。

 

 

(しかし、こやつの評判はよろしくないらしい。記憶を思い返しても愚鈍だとか暗愚などと、賢さを称える言葉を聞かぬな。)

 

 

 魔王が感じたのは違和感だった。彼が行動で見せたのは単なる優しさだけでなく、気配りと配慮だ。つまり無能に出来ることではない。

 今だって顔色を確認した後は自然と視線を別の方へと向けられるように窓際まで移動している。家族とはいえ年若い女性をジロジロと見ないようにとの気遣いだ。

 

 評価と一致しない。つまり何らかの秘密があると言うことだ。

 

 

(これでも魔王として場数はこなしてきておる。こやつに何かあるかなんて一目で分かる、この手で間違えたことはないのでな。)

 

 

「どうしたんだい。」

 

「いえ。」

 

 

 こちらが見つめる視線に柔らかな笑みと共に返してくる。見るものが見ればチャームポイントに思えることだろう。

 

 

(こやつに問題があるのか、それとも評価を下している他の者に問題があるのかだな。)

 

 

 つまり何らかの障害がこやつの正当な評価を邪魔をしていることになる。

 記憶の中の情報を整理していく。賢いとの評判は聞いたことがない。家督を継ぐ気がないのではないかと言われる始末。食事には多少こだわっているようだが、別に大した浪費をしている訳でもない。公爵家長男でありながら何とも慎ましい生活。

 

 

 なんだか、楽しくなってきた魔王は一手踏み込んでみた。

 

 

「わたしは一体なぜ道を誤ったのでしょう。」

 

 

 必要なのは相手に自分が弱いと思わせること。相手の真意を引き出す上で使いやすい手だ。それに兄妹関係や自殺をしようとしたという事実も加点だ。

 因みにだが、オレールお兄様はユーリが自殺しようとしたのではないかという事に気がついている節がある。『ただ池で溺れた』人間に対する反応とは少しずれていたからだ。それこそ終始割れ物でも扱っているかのような対応だった。

 

 

「・・・、何のことだい。勿論相談したいことがあるのなら聞くよ。」

 

「お兄様、わたしの口から言わせるつもりですか。」

 

「・・・それは、そう、だね。悪かったよ、でも、僕よりもエヴァンスかウィルの方がいいんじゃないか。ずっと賢いから。」

 

 

(ふははは、悪くない手であるが余から逃げ切れるとは思うでないぞ!余は魔王であるからな、こうやって立場の下そうな奴にちょっと圧をかける事なんてお手のものだ。)

 

 

 こんな魔王様いやだろ、魔族も今頃泣いてるよ。魔王はめんどくさい女ムーブをすることで話を逸らそうとするオレールを引き戻した。

 身内になら大抵甘いだろうという考え方だ、そこは鍛えた話術で戦えよ。

 

 

「いいえ、オレールお兄様だからこそお聞きしているのです。」

 

「・・・どうして僕を選んだのか聞いても。」

 

「あなたが優しいからです。」

 

 

 秘技、取り敢えず無難に褒める。煽ておけば大抵の奴はいい気になるのだ。心の余裕が生まれたらその部分につけ込む。

 

 

「わたしが悩んでいるようにオレールお兄様も悩んでいる、そうではありませんか。」

 

 

 垣間見える知性は暗愚とは程遠いものだ。彼は正しく評価を受けていない。たった数言の会話の中で魔王は結論を出した。

 

 

(こやつの受け答えに問題はない。つまり原因は他者。正当に評価されない最たる原因は、

 

 

オークのような見た目

 

 

であろう!)

 

 

「オレールお兄様。今が、変わる時なのではありませんか。」

 

 

 痩せれば解決ですよお兄様!などと供述しているのが魔王だった。やはりオークの見た目で人族の中で生活するのは難しいであろうと。

 オークに見えるようでオークでないことを知っている魔王だからこそ先入観なくオレールのことを見えたのだ。何言ってんだお前。

 

 

「僕は優しいんじゃない・・・ただ、臆病なだけだよ。・・・でも、君になら。ユーリ、少しだけ僕の話に付き合ってくれるかい。」

 

「・・・?もちろんです、オレールお兄様。」

 

「ふふっ、僕のことをお兄様だなんて呼んでくれるのはユーリだけだよ。」

 

 

 そうしてオレールは己の過去を話し始めた。ここで魔王はなんか思ってたのと違うと思い始めた。おめーの推理(笑)って何だったんだよ。

 

 

 

 

 オレールにとって平穏だった時間は多くなかった。ハウゼン家長男という立ち位置は相応に重いのだ。

 何か手を打つ必要があった。そうしなければ文字通り血で血を洗う状況になっていたことだろう。

 

 次男であるウィルは父であるアイザックを目の敵にしている。三男のエヴァンスもウィルに追従しており良好な関係とはいえなかった。

 二人の目的は権力の簒奪。ただ、彼らの気持ちも分からないものではなかった。父アイザックに人望はなかった。この人に追従したいとは思えない。ただし厄介にも才覚は本物だった。だから、彼は公爵家を維持し続けられている。

 

 

 そんな中で長男という立ち位置は争いにしかならなかった。

 

 

「だから、僕は無能を演じたんだ。僕がハウゼン家を継ぐことはないと分かるようにね。」

 

「・・・なるほど、やはりそうだったのですね。」

 

(ええ、知らないが?容姿がコンプレックスだとか、これから痩せようとかそんな話をする感じじゃなかったか?え?・・・え?)

 

 

 オレールは逃げた。アイザックの側につくことも、ウィルやエヴァンスの手助けをする事もしない。長男という立場も隅っこに押しやって空気であろうとした。

 

 

「実際エヴァンスたちは僕からマークを外しているしね。アイザック父様は・・・気づいている節があるけど気にしてはいないようだ。」

 

 

 オレールは罪でも告白するかのようにユーリへと告げた。

 

 

「だから、臆病なだけなんだ僕は。」

 

「それは違うのではありませんか。」

 

 

 魔王、ここで渾身の一手。予想が外れて恥ずかしくなったからとか言ってはならない。あいつは必死なんだ。主にプライドで構成されているからね。

 

 

「貴方の気質は臆病故のものではありません。」

 

(本当に臆病な奴は誰かの後ろに隠れるのだ。そんな奴はごまんと見て来た。しかし、こやつは一人で立っているではないか。)

 

 

 今のオレールは一人で戦っているも同然であった。それを見て臆病などと筋違いの評価を下す気にはならなかった。

 

 

「血を分けた家族と争うのが、怖いのでしょう。それは優しさの現れではありませんか。」

 

(そうであってくれ!)

 

 

 どこまでも締まらない魔王様であった。お前船降りろよ。

 

 

 

 

 

【オレール視点】

 

 オレールのことを優しいなどと評価するものはいない。怠け者とか、愚鈍だとかいったものが適切だ。事実そう思われるように行動したのだから。

 だからユーリの発言は意図したものなのだろうとすぐに理解した。本音で話さないかと。

 

 ユーリは変わった、いや変われたようだ。何があったのかは分からないが、それは死んでしまってもいいと思えるくらいの出来事だったのだろう。真っ直ぐな瞳がこちらを見ていた。いつかの誰かを彷彿とさせるような瞳だ。

 これまで意識して接触を減らしていた。交流が無ければ火種は生まれないから。会話をしなければそこに心は生まれないから。

 

 

「血を分けた家族と争うのが、怖いのでしょう。それは優しさの現れではありませんか。」

 

 

 その言葉は何処までも甘い、オレールを肯定する言葉。その言葉を発する彼女はまるで王様のようにも、女神様のようにも見えた。

 

 

 どうして道を踏み外してしまったのか。それはユーリが問いかけてきた質問であったが、同時にオレール自身にも当て嵌まるものでもあった。

 

 

(一人で考えて、一人で納得してしまったからだ。・・・こうして誰かに声をかけられてようやく理解できた。)

 

 

 本当の気持ちを理解できた。家族と争いたくはない、それ以上に家族で争ってほしくない。自分は責務を放棄して全てを投げ出していた。

 それをこの小さな女神様は気づかせてくれた。これ以上間違えてしまったら、この聡い妹を失望させてしまう。それは嫌だった。

 

 

「これは、君が見つけてくれた優しさだ。だから、君の為に捧げさせてほしい。」

 

 

 オレールはこの日、紛れもなく運命の分岐点を迎えた。

 もしこの二人のやりとりを見ているものがいたらこう言っただろう。『オレールよ、また一人で納得してしまっているぞ。』と。

 

 

 

 

 




オレール(ハウゼン家長男)
 ユーリのように太っており、立てばオーク、座ればオーク歩く姿はまるでオークである。
 性格は優しい、優しすぎるが故に家族で争うという事をしたくなかった。しかし、オレールがおりたとしても争いが終わることはない。そのことを漸く理解した。
 ゲーム本編では特定のルートかつ、黒塗りシルエットで登場する。ほぼモブの変わらないぐらいの存在感でした。当然攻略対象ではない。


アイザック(ハウゼン家当主)
 大公と呼ばれるくらいには凄い。どれくらい凄いかというと『オークが交渉で争いを納めようとする』くらいには凄い。つまりあり得ないくらいのこと。お金使いが荒いし、破滅思考的ではあるが、才覚は本物なのでなんでも出来ちゃうチート級のお人。当然攻略対象ではない。
 とあるルートでは敵対する事になり打倒アイザックみたいな事をする。潰すぞ、公爵家。


ユーリ
「????」
 見事な乙女ゲーっぷりですわぁ。それで攻略対象はいつ出て来はるん?
 えー、そこに無ければ無いですね。
 ゲーム本編ではしっかり悪役令嬢でした。失恋→自殺→生存の流れは変わらない。誰も自分のことを見てくれないので好き放題の我儘令嬢になります。一応婚約者のアイザックが別の女のイチャイチャ(死語)したら嫉妬の阿修羅になります。本作では魔王魂がインストールされたのでそんな事にはなりません。
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