「悪いけど、貴方は始末させてもらったわ。恨むのなら、その身に神器を宿らせた神を恨んでね」
薄れていく意識の中で、俺はその言葉をただ静かに聞いていた。
それから【夕麻ちゃん】は何かを言い続けていたけど、もう聞こえなかった。
それから、どんどん視界も見えなくなっていって、何も見えない、聞こえなくなった。
ああ...........こんなことに........なるんだったら.........最後にアイツに.........謝って.......おいたら、良かった......な。
ごめんな?アリス
――――――――――
「おい!しっかりしろ!イッセー!」
私が何度も体を揺するが、もうなんの反応もない。
穴が空いた腹からは、どんどん血が流れて、全然止まらず、止まる気配すら感じられない。
加えて体温もどんどん下がっていっており、もう生者では決してあり得ない温度になっているとわかる。
それはつまり
「なんで.........なんで、お前が先に逝くのだ!」
イッセーが、大切な兄が死んだということに他ならない。
「あら?貴女は確か、その男の妹よね?まぁいいわ。見られたからには、貴女も死んでもらう――どうせ貴女も殺す予定だったから、手間が省けるだけね」
イッセーを殺した女が、私に向かって可笑しなことを言う。
私も殺す予定だったと、笑いながら。
「それに彼とのデート、王道すぎて凄く笑えたわ!」
また笑う。
目の前の女は、兄の計画をただただ笑う。
あれは、イッセーが精一杯考えたものだというのに、そんなものは関係ないとばかりに。
「あははは!今思い出しても笑えるわね!」
「うるさい!!」
我慢できずに、とうとう叫んでしまった。
今は、自分で自分をコントロールすることが出来ず、するつもりもない。
「――そう。じゃあ、やめましょうか。貴女の命と一緒にね!」
イッセーを殺した女は、手に光の槍を出して私目掛けて投げつけて来た。
「(ここで、終わるのか?)」
槍は普通の人では反応出来ない程の速度で私に向かってくる。
当然、私もそれに反応することは出来ないが、走馬灯とでもいうべきなのか、槍がとてもゆっくりに感じられる。
「(イッセーの仇も討てないまま)」
飛んでくる光の槍は、もう既に私の目の前にまで迫っている。
「(そんなの、そんなこと!)」
そして、とうとう槍との距離が無くなり、無情にも私を貫く――
「(絶対に認めない!)」
――事は無かった。
槍が私を貫くという刹那、私を黄金の輝きが包み込み、光の槍を消滅させたからだ。
これには私も、相手も驚き固まる。
私はこのいきなりの出来事に、相手は私の目の前に現れた黄金に蒼の装飾の入った美しい鞘に驚いているようだった。
「な!?嘘でしょ!?そ、それはまさか――」
そして更に、見えないのにも関わらず私の手にはずっしりとした感触と重みがあることに気付く。
それは剣だと、何故か不思議と分かってしまう。
手の中の剣が何なのか、目の前の鞘が何なのか。
そして目の前の存在が誰でどんな存在なのか、その全てが頭の中ではっきりと認識することができる。
「ま、まさか、そんな!こんな小娘になんでこんな神器が!?第一アレはおとぎ程度の存在のはずでしょ!?なんで?!」
「――お前がなんでそんなに狼狽えてるのか、今なら分かるぞ」
「ッ!?」
「だから、狼狽えてる内に――私の前から消え去れ!」
その言葉と同時に、私は魔力放出という能力を使って一瞬で近付き、切り裂こうとする。
だけど、いくら武器がすごいと言っても私自身はまだド素人であり、一般人だ。
だから少し頬をかすっただけでかわされてしまうのも当然のこと。
剣を避けた女は翼を広げて飛び上がり、私を見下ろしながら捨て台詞を吐く。
「くっ!今日のところは退いてあげる。だけど、次に会うときには覚えてなさい!」
そう言って、翼を生やした女は空の彼方へ消えていった。
それを眺めたあとに私は剣と、何故か私の周りをフヨフヨ浮かんでいた鞘を消して、イッセーの亡骸のところへ向かう。
「ごめん、イッセー。お前の敵――討てなかった」
イッセーの亡骸の前で嘆いていると、ふと視界の端に一枚の紙切れが写り込む。
それは悪魔を召喚する簡易化された魔方陣が印された紙であると、頭の中の知識が教えてくれた。
そしてこの魔方陣は、ソロモン72柱のグレモリーの物であるということも。
「だとしたら、これに賭けるしかない」
紙を掴んで、魔方陣を発動させるために願おうとしたら、急に視界がぐらつき、地面に倒れ込んでしまう。
どうやら初めての神器の発動に加え、直後の戦闘、および脳内に流し込まれた膨大な情報量により、体が限界を迎えたみたいだった。
最後の意識の中、どうかイッセーを助けられるようにと強く願い、意識を手放した。
これが、この物語の序章。
ここから世界を巻き込む物語は歯車を動かし始める。
歴代最高にして最大の意外性ナンバーワンの赤龍帝と
先代を越える力を持つ最強の騎士王の
喜びと悲しみの歴史が。
どないでした?