今回で一気に堕天使編が完結しちゃいますねぇ。
「部長!大変です!」
「?どうしたの裕斗?」
それは突然の出来事。
イッセーが何時ものように契約者の元へ自転車で向かい、暫くしてから、急に裕斗が慌てた様子で向かってくる。
私はあのはぐれ悪魔を討伐したときから、基本的に小猫と一緒にいることになっている。
なんでもまだ精神が不安定ならしく、それを落ち着けさせるためのようだ。
とまぁそれは置いといて、裕斗からの報告を受けたリアスは、急いで朱乃に頼んで転移用の魔方陣を展開してもらっている。
「二人とも急いで!イッセーが危ないわ!」
「ッ!?わかった!」
そう聞かされて、小猫の手を引いて急いで転移用の魔方陣に入り込む。
「それじゃあ、行きますわよ!」
魔方陣が輝き出し、浮遊感に包まれてから、光が収まる。
そこには、脚から少しの血を流すイッセーと神父、そしてシスターがいた。
私は直ぐに神器を発動させて、イッセーの前に出て神父を斬り付ける。
だが、その神父の胴体を少しかすったくらいで、かわされてしまった。
「うおっと!あぶねぇあぶねぇ。来て早々俺っちをピンポイントで攻撃してくるなんて、興奮してくるねぇ!」
「随分と私の下僕を弄ってくれたみたいね?」
「はいはい弄ってあげましたよぉ!」
なんか、神父の格好をしてるくせに、口が悪いな。
ホントに神父なのか?
「随分と口が悪いね。いや、だからはぐれをしているのか」
「ん?裕斗。神父にもはぐれがいるのか?」
「うん。いくら神父でも、神を信じてなかったり、相応しくない行動をした神父は、はぐれ神父と呼ばれるんだよ」
「ほう、ならアイツは正しくだな」
「だね」
そうこうしていると、朱乃がイッセーに肩を貸して魔方陣に入っており、転移する準備が出来ている状態だった。
「部長!待ってください!まだアーシアが!」
「イッセー、悪いけどこの魔方陣は私の眷属しか通ることが出来ないの。彼女は連れていけないわ」
「そんなッ!!アーシア!」
どうやらイッセーは、彼女が大切な存在らしい。
この後は、絶対に落ち込むな、これは。
そう思った私は、神器の力を使い、アーシアを担いで窓側に立つ。
いなくなったと思ったら、アーシアを担いで窓側に立っている私に、誰もが驚愕している。
「ッ!?アリス!お前いつの間に!?」
「イッセー、お前はこの女の子を助けなければ、後から絶対に落ち込むだろう?だから、私が少し手助けをしてやろうと思ってな」
「まさか........」
「私が責任を持って、安全な場所に連れていこう」
「.......アリス、ありがとな」
「ふふん、気にするな」
すると、それを見ていたはぐれ神父が斬りかかってきた。
「愛しのアーシアちゃんを連れていくなんて!そんなことさせるわけないでしょが!」
「なんだ、まだいたのか。少しそこで眠っていろ」
凪ぎ払うようにしてきた剣を軽く避け、アーシアを空中に投げる。
そしてそれに眼を奪われた一瞬の隙を見逃さず、背後に相手が反応出来ないほどの速度で回り込み、魔力で人一人を確実に気絶させられるほどに強化した拳で急所を殴り、壁に激突させてから、アーシアをキャッチする。
この間は僅か1秒。
うん、私にしては上出来だな。
「あらあら、随分とお早いですわね」
「騎士の僕でも、目に見えなかったよ」
「なんか、俺の妹がどんどん離れていくような.......」
「もう規格外すぎるわ」
「流石アリスちゃん!」
「きゅ、急に投げられてビックリしちゃいました」
これがこの場の皆の感想だ。
私としては、まだ本気じゃなかったんだけどな。
「ッ!?堕天使の気配が複数こちらに近付いてますわ!急ぎましょう!」
「そう、わかったわ。じゃあアリス、その娘をよろしくね?」
「ああ、任せておけ!」
そうして、魔方陣が輝き、この場に残ったのは私たちだけになる。
「それじゃあ、さっさと行くから、しっかり捕まってろよ?」
「は、はい!」
返事を聞いてから窓から飛び出し、アーシアを魔力で保護しながら、高速で移動した。
途中で堕天使のようなものを見たが、そこは私、気配も姿も魔力も完全に【透明】にしていたので、バレることなど無かったと言っておこう。
そして、あっという間に学園の旧校舎に着き、部室の前に来てから、アーシアを下ろす。
「なんか凄く楽しかったです!」
「お?そうか。それなら良かった」
「またやってほしいです!」
「......機会があったらな?」
「はい!」
凄く柔らかく、表裏の無い純粋な笑顔だったので、イッセーが大切にしたくなるのも分かる、と思ったアリスであった。
イッセーたちもとっくに到着しているだろうし、これ以上待たせるのも悪いと思ったアリスは、ドアをバンッ!と想いっきり開け放つ。
それを聞いて、全員がビクッとしているのも見逃しはしない。
「イッセー!ちゃんと無事に連れてきたぞ!」
「ア、アリスか。もっと普通に開けてくれよ?」
「ふっ、ドッキリ大成功か?」
「気配も何も感じなかったわよ」
「そこはほら、私だからな?」
そういう会話をしていると、アーシアがイッセーに近付いて、手を握っている。
それから、何か楽しそうに話しており、邪魔にならないように小猫のところに座り込んでおく。
「ねぇ、アリスちゃん」
「ん?なんだ小猫?」
座り込んで脚を組むんで寛ごうとすると、小猫が話しかけてくる。
「というか小猫?そろそろ呼び捨てが良いんだが......」
「にゃっ!そ、それはまだ......」
「うーん」
「そ、そうだよアリスちゃん!」
「ん?」
気まずくなったのか、小猫が話を変えようとしてきた。
「アリスちゃんって今、好きな人いるの?」
「イッセーだな!」
「にゃっ!」
好きな人と言われれば即答出来る。
普段は困った奴だが、頼りになるときは凄く頼りになる大好きな【兄】。
他にも一人いるんだけどな。
「あ、でももう一人いるな」
「え!?だ、誰!?」
「小猫に決まってるじゃないか」
「.........にゃっ!?」
うん、やっぱり小猫だな。
一番仲良しだし、私のことを心配してくれる。
こんな友達はこれからもあまり出来ないと思う。
「ん?どうしたんだ小猫?」
「な、なんでもないよ」
小猫は何でか分からないけど、顔を赤くして、こっちをまともに見てくれない。
なんでか分からないまま、その日はお開きになって、アーシアは家で預かることになった。
――――――――――
次の日、アーシアとイッセーがデート?をしに出掛けた。
私は特にすることもなく、他の能力を問題なく使えるかどうかを確かめている。
今までには、【破壊】【透明】【擬態】【天閃】の力を使ったが、残りは【支配】【祝福】【夢幻】の力を使えるかは分からない。
だから、イッセーたちが帰ってくるまで、それの確認と、どう生かしていくかを考え続けていた。
結果だけを言うと、どれも使うことができたが、どう使うかはその時次第という考えに至った。
そうして時間を潰していたら、リアスから連絡が来る。
内容によるとどうやらアーシアが拐われたらしく、イッセーがはぐれになってでも助けようとしているらしい。
それを止めて欲しいのだそうだ。
連絡を受けてから30秒以内に部室に着き、イッセーの話を聞く。
「だから、俺はアーシアを助けに行きたいんだ!お願いだアリス!協力してくれ!この通りだ!」
そう言って、イッセーは頭まで下げてきた。
イッセーがそこまでして救いたいのは分かる気がする。
あの笑顔を、あの優しさを持っている心優しい娘を、本気で救いたいんだ。
「リアス、このイッセーは私でも止められない。諦めるんだな」
「じゃあ!」
「私はお前に着いていくさ」
「ありがとうアリス!」
「ふっ、礼を言われるまでもない」
そうしていると、リアスの耳に口を近付けて、朱乃が何かを言っていた。
それに頷いたリアスは、こちらに背を向けて何処かに行こうとする。
「少し用事が出来たわ」
「待ってください部室!まだ話は終わってません!」
「イッセー、前に話したわよね?駒の特性を。貴方とアリスが持っている兵士の駒は最弱ではないわ。覚えて置きなさい.........兵士でも王は取れるのよ」
それだけを言い残して、リアスと朱乃は何処かに行ってしまう。
それを見届けた後、イッセーは部室を出ていこうとする。
「待ってくれイッセー君」
「止めるなよイケメン、俺は行く」
「そうじゃないさ――僕も付いていくよ」
そう言って、爽やかな笑顔を浮かべた裕斗。
「私も行きます」
「小猫、お前も来るんだな」
「アリスちゃんが心配だし、イッセー先輩も」
「ああ、俺はおまけなのね」
そうして、イッセーの案内の元に、教会へと向かった。
たどり着いた教会の中には、幾つもの気配が地下に集まっていて、地上には一つの気配しかない。
恐らくはあのはぐれ神父だと思う。
「じゃあ、どうやって潜入する?」
「そんなの決まってるだろう」
「うん」
私の考えに気付いた小猫は、私と一緒に教会の扉の前に立つ。
イッセーは分からないようだったが、裕斗は気付いているみたいだ。
「え?」
「邪魔するぞー!」
「ぞー」
私と小猫は一緒に蹴りを叩き込み、教会の扉を破壊して入り込んだ。
イッセーはかなりビックリしてたが、目の前に立っている神父に気が付いて、気を引き締めている。
「やぁやぁやぁ、久しぶりだなぁ、糞悪魔ども。そこのビクトリーなお嬢ちゃんもご無沙汰してやんすなぁ」
「やっぱりお前だったのか、はぐれ」
「おやや?アチシの気配に気付いてたの?こりゃあたまげたねぇ」
「いやでも分かる。三人とも、ここは私が受け待とう。そこの祭壇の下に隠し通路があるから、そこから地下に行け」
私は神器を発動して、眼の色を変化させて戦闘体制に入る。
「アリス、大丈夫なのか?」
「ふん、気にするな。あんなやつに負けはしない」
「.......必ず追い付けよ」
返事はせずに、笑って返す。
裕斗と小猫も通りすぎ様に
「気を付けてね」
「ぶっとばしといて」
と言っていた。
言われなくても、ちゃんとそうするさ。
「わざわざ待ってくれたのか?」
「ボクちんとしても、一対一でやりたかったもんでしからねぇ。この前の借りも返したいしさ!」
それが開戦の合図であり、光の剣と深紅の大鎌がぶつかり合う。
お互いにすぐに距離をとり、また近付いて斬り付ける。
時々片手に持っている銃で撃ってくるが、大鎌の先端を鎖にして弾丸を弾く。
それの繰り返しが何回か続き、また距離を取ってからにらみ合いに入った。
「.......やっぱりおちびなのに強いでござんすなぁ。全力でやって、フェイントも入れてるのに全く効かないとか」
「それはそっちもだろう?前回は手加減していたというわけか」
「おちびちゃん、名前はなんて言うんだい?」
「なんだ?好敵手としてでも認めてくれるのか?」
「俺っちの戦ってきた野郎どもの中でも、おちびちゃんはダントツに一位だ。なら名前を覚えておく価値はあるからねぃ」
「ふーん、私はアリスだ」
名前を教えてやると、相手は不適に笑う。
「教えてくれてありがとさん!俺の名はフリード・セルゼン!このままじゃ埒が明かねぇ!次の一撃で決着つけるか!」
「いいだろう」
そしてお互いに構えたまま、一ミリとて動かない。
フリードはどこで覚えたのか、居合いの構えを取っていて、私は鞘を後ろに移動させ右手を前に構え、左手に大鎌を持って構えている。
暫くその状態が続いたが、ようやくその静寂にも終わりが訪れてしまう。
壁の隙間から風が吹き抜けた。
その瞬間に両方とも同じタイミングで動きだし、すれ違って止まる。
この沈黙の戦いを制したのは
「ちっ、これだから安もんは困るねぇ」
「私の勝ちだな」
私だ。
すれ違いに光の剣を真っ二つに折り、銃も鎖で貫いて使い物にならなくした。
だが、体に傷はつけていない。
「体に傷が無いだけでも、良かったとしますか」
「どうする?逃げるなら見逃すぞ?」
「お、優しいねぇ。ならお言葉に甘えて、じゃあなアリス!」
フリードは懐から出した閃光弾を地面に叩き付け、視界を奪った。
戻る頃にはフリードはいなくなっていて、それと同時に地面から何かが出てくる。
それはあの時の堕天使。
とりあえずどうしたらいいのかわからなかったので、そのままにしていると、扉の方からリアスたち、通路の方からイッセーたちが出てきた。
「アリス!無事だったのか!」
「まぁな。余裕だったぞ」
「怪我が無くてよかった」
「小猫、心配ありがとう」
小猫が安堵の表情で言うので、笑顔で返しておく。
そうしていると、朱乃が堕天使に水をかけて起こした。
「ごきげんよう、堕天使レイナーレ」
「その髪、グレモリー家の者か」
「そうよ、よろしくね――と言っても、もうお別れなんだけどね」
「くっ、だが私にはまだ手段がある」
「ああ、それなら無駄よ」
途端にリアスはポケットから三枚の羽を出して、堕天使に見せる。
すると堕天使の顔は絶望に染まった。
「同族のあなたなら、見ただけでもわかるわよね?あの三人の堕天使は私が直々に葬っておいたわ。それに、イッセーの神器はただの龍の手ではなく、神滅具の一つである
「そ、そんなバカな!?」
「まぁ、現実を見たくはないのなら、そのまま消え去りなさい」
リアスが、掌に魔力を集める。
すると何を思ったのか、堕天使はイッセーの方を見て
「イッセー君助けて!」
「ッ!?」
イッセーに助けを求めていた。
それに苛立ったのは、他の誰でもない、私だ。
「この悪魔はあなたを騙しているのよ!だから私と一緒に――」
「それ以上、イッセーの名前を口にするなよ?」
「ぐぅ!」
堕天使に近付いて、その背中を踏みつける。
そして首筋に鎌を当てる。
「他に何か言い残すことはあるか?無いよな?あるわけが無いよな?ならば潔く消え去るのが道理だろう」
返答を聞くまでもなく、その首をはねた。
すると、はぐれ悪魔を殺した時と同じように、死体は塵となって消え、後に残されたのは、緑色に光る指輪だけだ。
なんでもそれは、アーシアの神器らしく、アーシアが寝かされているところを見ると、肌は青白く、生気が宿っていない。
「――ねぇイッセー、アーシアを生き返らせたい?」
「出来るんですか!?」
「ええ、前代未聞なんだけれど、貴方にしたのと同じ方法でね?」
そしてリアスが取り出したのは僧侶の駒。
アーシアを悪魔として生き返らせるようだ。
それを聞いたイッセーは喜び、アーシアは無事に悪魔として息を吹き替えした。
――――――――――
次の日の早朝、私たちオカ研の部員は皆部室に集められた。
いったい何をするのだろうか?
「さて皆、昨日はお疲れ様。新しい部員も増えたことだし、ここでささやかなパーティーにしましょう」
そして、指を鳴らすと、テーブルの上に豪華なケーキが出てくる。
リアスはなゆだか恥ずかしがっていたが、これはこれで楽しいパーティーになった。
これからも、こんな楽しい日々が永遠に続けばいいと、心からそう思った。
因みに、このケーキの大半を食したのは、アリスと小猫だったということは、容易に予想できるだろう。
どないでした?