更新遅くなってごめんなさい。
そして今回オーフィス登場!
あれから幾日か時間が経った日曜日の朝。
私は山の中で一人、木の影に座りながら、神器を眺めていた。
鞘から剣を抜いている状態で、前に浮かばせている。
なんでそんなことをしているかというと、改めて神器の細部まで確認しておくために他ならない。
そこで、ふと思い付いたことがある。
「そういえば、鞘はまだ使ったことがないな」
鞘の具体的な効果や、使用法のことだ。
今までは戦いばかりで剣ばかりを使い、能力も感覚も完全に把握してある。
だけど、鞘に関しては全くと言っていいほどに使っていない。
「少し確認してみるかな......」
そこで、鞘に触れてみようとしたとき、直ぐそばで巨大な力を感じた。
底知れぬ程に強大で、深淵のようなイメージが感じられる無限の力。
いきなりだったので、前に飛び込み、剣を構えて今までにいたところを見る。
そこにいたのは、小柄な体をしてゴスロリのドレスの用な服を着た私と同じ黒髪の女の子。
だが、その見た目とは反比例して、やはりその女の子から力が流れているのが分かる。
「貴様、何者だ?」
「我、オーフィス」
私が警戒丸出しで問いかけると、相手はそう名乗る。
オーフィスの名前は、あの
ならば、目の前の存在はそのドラゴンだということになってしまうわけなのだが。
「無限の龍神が、私に何の用だ?」
「アリア、約束を守りにきた」
オーフィスは私に向かって、似ているようで丸で違う名前を言う。
「アリア?それは私のことか?」
「そう、覚えてない?」
「覚えてるも何も、貴様に会ったこと自体初めてだし、第一私の名前はアリスだ」
出会って早々、一体何を言っているのかわからないな。
「アリアはアリス。わかった........じゃあ行く」
「ッ!」
行くという言葉に、剣を改めて構え直す。
だがオーフィスが手を出すと、鞘のアヴァロンが勝手にオーフィスの所へ移動する。
「なっ!?どういうことだ!?」
「安心してアリス。我は約束を守りに来ただけ。アリスを傷付けたりはしない」
「...........なら信じてもいいんだな?」
「うん」
能力を発動して、オーフィスの姿を捉えると、悪意や邪念といったものは微塵も感じられなかった。
逆に善意や喜びの感情が圧倒的に強い。
故に、信じてみることにする。
「で?どこへ行くというのだ?」
「アリスのこの鞘を使ってでしか辿り着けない理想郷。そこにアリスと一緒に行く」
「わかった。じゃあ鞘を返せ」
「ん」
すると素直に鞘を返してくれて、フヨフヨと私の前にきてから止まる。
その鞘に撫でるようにして手を添えて、能力を完全解放させるための言霊を言い放つ。
「真名解放......
その瞬間、私とオーフィスを黄金の光が包み込み、意識が無くなった。
――――――――――
「アリス起きて......アリス.........起きて.........アリス」
「うぅん........ああ、オーフィスか。おはよう」
「ん、おはy!?」
オーフィスがアリスを起こして、立ち上がろうとしたとき、まだ寝惚けていたアリスに抱き付かれて寝転がってしまう。
四つんばえになっていたオーフィスは、抵抗出来ずに成すがままだった。
まぁ、相手がアリスだったからというのもあったのだろうが。
「アリス、動けない、早く起きて」
「うぅん、柔らかいぃー」
「起きろ」ゴスッ!
「ふぎゅぁ!」
だが、流石に中々起きてくれなかったアリスに額をぶつけて、無理矢理起こしたオーフィス。
そこでふと、昔もこうやって起こしていたと思い出して懐かしんだオーフィスであった。
「い、痛いぞオーフィス」
「起きないアリスが悪い」
「むぅ......ん?ここは、どこだ?」
そこで改めてアリスは周りの景色に気が付く。
何処までも澄み渡った、所々に白い雲がある綺麗な蒼の大空を天井に、大地の床には、緑や色鮮やかな華々で彩られた絨毯が敷かれ、直ぐそばには森が、遠くのほうには形の整った山が並んでいる。
それに緑の絨毯には川が流れて分断されており、真ん中には巨大な一本の樹が立っている。
更によくみると、あちこちには小さくて可愛い羽を生やした妖精や、綺麗な大人や可愛い子供の精霊たちがこちらを見ていた。
「とりあえず、ここが
「アリスが帰って来たから」
間髪入れずに即答したオーフィスの言葉に、私は少し混乱する。
「???」
「ここにいる妖精や精霊たちは、アリスがアリアだったときに救ってきた者たち。だから、その恩人が帰ってきて嬉しがってる」
「だから誰なんだ、アリアって」
「ついてきて、そうしたら分かる」
それを言うとオーフィスはすたすたと森の中に入っていく。
慌てて追いかけ、その深い森の中に私も入っていく。
森の中には、たくさんの木の葉で光が遮られているが、それも少しだけで、光の柱があちらこちらにあるため、全くと言っていいほどに暗くなかった。
それどころか、懐かしく思えてきて、安らげる空気に満ちている。
すると、オーフィスが途端に止まり、こちらを向いてきた。
「どうしたんだ?」
「ここから先は、アリスしか入ることができない」
そう言ってオーフィスは前を見る。
つられて私も見ると、そこには洞窟が存在している。
奥は微かにだが見ることができたが、何があるのかは全くわからない。
「わかった。この先に答えがあるんだな?」
「そう――思い出してきて、我との記憶を。この理想郷との関わりを」
「わかった」
それから、私は一人で洞窟に入っていく。
明るいのは奥のほうだけで、そこに続く道には明かりひとつなかった。
そして、入り口からでも微かに見えた奥に、やはり案外早く辿り着くことができた。
そこには、天井も森もない、明かりが直接当たる吹き抜けのところだ。
その中央にはそれなりに大きな樹が一本だけあり、その木の葉に反射して色々な方向に光が散っている。
だが、その光景を目に入れさせぬほど、ただならない雰囲気を放つものが、木陰の中に存在していた。
それは墓だ。
なんの飾りもない、少し古ぼけた小さな墓。
するとふと、墓の頭のところで何かが光った。
墓の上に、何かがかかっている。
私は静かに近付いて、その墓の前に座り込み、その光るものを手に取った。
「これは.......」
それは黄金の懐中時計だった。
だが、その懐中時計を見たときから疑問を抱いていた。
それは
「何故、私はこの時計を......知っている?」
初めて見たはずなのに、その重さも、外見も、何もかもを知っているような気がした。
時計を開いてみると、文字盤はギリシャ数字と普通と変わり無いが、下のほうには明らかに存在しないはずのオルゴールが内臓されていて、針もオルゴールも止まっている。
早速動かしてみようと思い、携帯を取り出して時間を合わせながら、ネジを回して動かした。
手巻き式の懐中時計で良かったと思う。
「この曲.......」
オルゴールから流れた曲は、私が小さい頃から歌っていた曲のものだった。
いつも何かがあると、この曲を歌うために、家族や友人たちから何の曲?とよく聞かれたものだ。
それがまさか、この時計のオルゴールだったなんてな。
『ようやく来たんだね』
「ッ!?誰だ!?」
オルゴールを聞いていると、どこからか声が聞こえてくる。
その声は、私のものと同じ声色だった。
『私はアリア。その時計の持ち主であり――貴女の前世だよ』
「私の前世が、私に何のようだ?それに、いい加減姿を見せろ!」
『――はぁ』
こいつ!ため息付きやがった!
と思っていると、手に持っていた懐中時計が浮かび上がり、それを中心にして目の前に輪郭が浮かび、それがどんどんはっきりしていって、その姿を現す。
それは、正しく私自身。
違うとすれば、髪が白いことと、その瞳が紅蓮の色をしていることだけしかない。
「なんか、自分の来世とは分かってはいるけど、こんなに言葉が......」
「出てきて早々悪口ってどうなんだ?」
「はぁ、まぁいいか。これから貴女に私の記憶と経験をあげる。だからじっとしててね?」
「な、何をするんだ?」
あげるとか言いながら、ジリジリとこちらに寄り添ってくる姿に、何となくだが危機感を覚えて、逃げる準備をしている。
「何って、それは勿論まぐわいをするだけだけど?」
「ま、まぐわい!?なんでだ!?」
思ってもいなかった言葉が飛び出てきたために、思わず狼狽えてしまうが、これは仕方がない。
だが相手、アリアは何故かノリノリというか、少しハァハァ言いながら近付いて来る。
私にとっては未知の恐怖でしかないが。
「何でって、そんなの決まってるじゃない」
「つ、つまり?」
「一度、自分自身を弄ってみたかったんだよねぇ」
とか言っているが、どんどん近寄ってきて、とうとう壁に背中が当たり、逃げ場を無くしてしまう。
それにどうやら、この理想郷では神器が使えないらしく、故に抵抗することが出来ない。
もう逃げ場を失ったために、しかも目の前のアリアが、怖くて堪らなかったために、腰が抜けてヘタりこんでしまう。
「大丈夫だって、何も痛いことはしないから。だけど、しっかりと力を抜いてないと痛いからね?」
「く、来るなぁ....」
「いやー、自意識過剰じゃないけど、涙目で怯える私は可愛いねぇ」
とうとう顔と顔がくっつきそうになるくらいに距離が縮まっている。
手を抑えられて、脚も組まれて身動きが全く取れない私は、覚悟を決めて目を固く瞑る。
だが、中々来ないため、我慢している私を見て楽しんでいるのだろう。
と、思っていると、ギリギリという音と共にアリアではない声が聞こえてくる。
「アリア、なにしてる?」
「あ、あれ?オーフィス?な、なんでここに入れてるのかな?」
「今質問してるのは我。アリア、さっさと答える」
「い、いやーあのですねぇ?記憶と経験を継承させようとしてまして.......」
「他にも方法はいくらでもある。それこそ、手を繋ぐだけでもいいはず」
「あ、いや.....」
「何故?」
「そ、そのー.......」
「..............」
「か、可愛い反応だったので、つい」
「
「ま、待って!それだけは勘弁して!」
「被告人の意見は全て却下。罪状は強姦。グルグル巻きの刑に処する」
「え!!それ私の一番嫌いなやつ!!」
「執行開始」
「ひゅい!?」
と、目を瞑っていたらそんな会話が聞こえてきた。
一体何が起きたのだろうと思い、目を開こうとしたら
「アリス、もう大丈夫」
頬にオーフィスが手を当ててきて、優しい声で言ってきた。
それにゆっくりと目を開けると、そこには無表情だった顔が優しく微笑んでいるオーフィスがいる。
「オ、オーフィス~」
「ん、悪は滅びた」
私は安心して、オーフィスに抱き付くと、オーフィスは背中を撫でてくれた。
「ちょ!?いないことにしないでぇー!」
アリアの言葉は誰にも届くことは無く、当たり一帯に黙祷しただけだった。
――――――――――
「じゃあ、これから継承をするよ?」
「ああ、わかった」
あれから少し経って、なんとか解放されたアリアは、私の前に立って手を伸ばしてくる。
この手を握れば、恐らく継承が開始され、完了するのだろう。
だが、ひとつだけ思った。
「なぁアリア」
「ん?なに?」
「この継承が完了したら、お前はどうなるんだ?」
「ッ!.......そうだね......」
アリアは一瞬驚いた顔をしたが、直ぐに表情を変えて、何かを言おうとする。
だがその顔は、悲しそうな顔だった。
「この継承が完了したら、私は消えるね」
「ッ!?」
「もともと、私は死ぬ前にコピーされた魂の欠片だからね。本体であるアリスに継承をしたら、そのまま融合するようになってる」
嫌だった。
会ってそんなに経ってはいないけどそれだけはハッキリとしている。
呆れられた。
可愛がられた。
弄られた。
その感情は心地良いものだった。
最後のはかなり怖かったけど、それでも楽しい時間が流れていて、面白い。
だから、別れたくはなかったんだ。
「嫌だ!お前を消したりなんかさせない!これからも一緒にいてくれ!私にはお前が!アリアが必用なんだ!」
「融合してしまえば、私の全てがアリスに渡される。そうなれば、私がいてもいなくても、変わりはない」
「全然わかってない!たとえどんなに完全になっても!私にはお前が必用なんだよ!」
心のままに叫び続けて、必死にアリアを止めようとする私を、オーフィスは静かに見ている。
ただ、オーフィスもアリアが消えるのは嫌だと、何となくだが分かる。
だからこそ、私も必死になる。
「どうしてそこまで私が必用なの?アリスにはメリットしかないのに」
「いや、一つだけデメリットがある。お前が消えると私もオーフィスも悲しむんだ!」
「.........たったそれだけ?」
「それだけでも!私たちにとっては大切なことなんだ!」
唖然とするアリアに、私はキッパリと言いきる。
仲良くなったんだ。
それがいなくなるだなんて、これほど悲しくてさみしいことはない。
「ふ、ふふふ......あははははは!!」
「な、なんかおかしいことを言ったか?」
「アリス、面白い」
「オ、オーフィスもか!?」
何で笑われているのかわからないアリスは、アタフタしている。
そこに、少しまだ笑っているアリアが声をかける。
「ふふ、あー笑った。アリスは何も可笑しくはないよ。ただ、余りにも自分勝手で友達思いの意見だと思ってね」
「じ、自分勝手じゃないぞ!」
「はいはい、わかったって――あぁあ、心変わりしちゃったな」
「え?」
まるで憑き物が落ちたような穏やかな顔でアリアが呟いたのを、私は危機逃さない。
「なんか、こんな良い【友達】に会えたのに、消えたくはないなって思えてきてね」
「それって、つまり.......」
「うん、一緒に歩んでいくよ。これからずっとね」
そう言って、初めての笑顔を見せてくれたアリア。
それが嬉しくて、私も笑顔を見せて喜ぶ。
笑顔を向けあい、喜び会っている姿を、オーフィスは少し羨ましげに見ていた。
――――――――――
そして、アリアを連れて無事に現代へ帰ってきた三人。
「あ、アリアのことはなんて言おう」
「ん?私のことなら大丈夫だよ」
そう言うとアリアは光り、それが止むとそこには元の懐中時計があった。
『この姿になれば、問題はないよ。ちゃんと時計の役割も、オルゴールの役割もこなせるからさ』
「へぇ、便利だな」
「あ....」
と、アリアと話していると、今度はオーフィスがそんな声を出した。
「ん?どうしたんだオーフィス?」
「アリス、言うの忘れてた」
「いや、なにが?」
「アヴァロンの中に入ると、一時間が一日になる」
「...........は!?」
オーフィスのトンデモ発言に、反応が遅れた。
一時間が一日になるんだったら、アヴァロンにいたのが大体三時間くらいだから、つまり三日も家に帰らなかったことになるのか!?
「急いで帰らなくちゃいけない!」
「がんばれー」
「オーフィスも道連れだからな!」
「なんと」
それから私は、全力で家まで帰り、両親とイッセー、それと何故かオカ研メンバー全員に怒られた。
特に凄かったのが家族ではなく、小猫の怒り様だったと言っておこう。
あれには敵いそうにないからな。
最強の存在であるオーフィスや、いくつもの修羅場を潜り抜けてきたらしいアリアも怯えていたから、これは確かなことだ。
どないでした?