ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
「昭和〜……」
最後の一粒が風に舞い上がった瞬間、コンクリートジャングルが霞んでいった。ネオンサインは淡く光る街灯へと戻り、高層ビル群は煤けた看板が連なる低層建築に変わっていく。
マリアはそれを見て、戦いの勝利を確信した。同時に胸中に沸き上がる感慨を抑えきれずにいた。彼女が体験したことのない『昭和』という時代の空気は確かに息吹を宿していたが──。
「終わった……けど」
時音が空を見上げる。その瞳には夜空の星ではなく、もっと遠い場所が映っているようだった。
「なにか大切なものが……確かに繋がった気がする」
かつての喧噪が嘘のように静まり返った住宅街。昭和ノーワンの影さえ残さず消失し、変わり果てた街並みが日常へと戻っていく。
だが。
昭和の空気が薄れていく。時音の輪郭がゆっくりと透けていき始めた。
「あ……」
指先から始まった透明化が彼女の髪先へと広がっていく。昭和ノーワンが作り出した過去世界の矛盾が解消されようとしていたのだ。
「時音……!」
禽次郎が駆け寄ろうとして足を止める。踏み込めば消えてしまうのではないかという恐怖が彼を縛った。
「何、悲しい顔しているんだよ…ただ単に時代が元に戻るだけだろ?」
「それは」
時音の言葉を、禽次郎は理解しながらも、どこか納得し切れないでいた。
「私なら大丈夫。それよりも、あんたはきちんと家族を愛しなさい。仕事ばかりで私にも構って貰えなかったけれど、それでもちゃんと愛してくれてた旦那がいるから」
「・・・あぁ」
禽次郎は溢れる思いを堪えるように言う。
「ありがとう」
「感謝するのは私の方さ。私は今もこの時代に残って生きていけるけど、あんた達が来てくれたおかげで未来がどうなるのかが見えたよ」
そうして、時音は微笑みながら続けた。
「あんたが教えてくれたじゃないか!時代は進んでいくと」
その言葉に禽次郎は深く頷いた。彼の眼には涙が溜まっている。
昭和の空気が完全に消え失せる寸前だった。時音の身体は今やほとんど透き通っている。だが彼女の眼差しだけが強く、迷いなく禽次郎を見つめていた。
「ほら、これを」
ゆっくりと差し出された手にはタイムレンジャーのセンタイリングがあった。
「これは……」
「持って行って。未来で……あなたの戦いの糧になる」
リングを手に取った禽次郎が息をのむ。その金属の感触は冷たかったが、確かに熱い想いを帯びていた。
「あんたの言うとおり……時代は進むんだろ? だったら」
時音の声が少し震えた。
「未来で待ってるよ。旦那と一緒に」
その瞬間、彼女の姿が完全に光の粒子となり四散した。
時音の粒子が夜空に溶け去った瞬間――
「うわああああああああッ!」
禽次郎の絶叫が夜を引き裂いた。膝から崩れ落ちた身体が震え、握りしめたセンタイリングが爪痕を刻む。喉が裂けるほどの叫びが虚空へ吸い込まれてもなお、嗚咽は止まらなかった。
「時音ぇぇぇ……!」
大地に拳を叩きつける音。血が滴るほど何度も繰り返す。
やがて顔を上げた彼の眼には、流れる涙の奥で燃える決意が灯っていた。握りしめたリングは夜空を反射し、時音の微笑みのように煌めいた。