ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦   作:ボルメテウスさん

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角の容疑者

「だからさー、とりあえずクリスちゃんちに寄っていい? この子看病しなきゃだし」

 

通話越しに聞こえる角乃の声は軽やかだった。雪音クリスはベランダで洗濯物を干しながら眉をひそめる。

 

「は? いきなり何言ってんだよ? しかもその『クリスちゃん』って呼び方やめろっていつも――」

 

「お願いー! ほら、この子すっごく苦しんでるっぽくてさ」

 

スマホ画面の向こうで角乃が抱えている少女の姿がちらりと見える。気絶しているのかぐったりしている。クリスの表情が一変した。

 

「……ったく、しょうがねえな。すぐ来いよ。場所は分かるだろ?」

 

「ありがとー! すぐ行くね!」

 

通話を切るとクリスは早足で室内に戻り、リビングのソファに毛布を敷いた。角乃が来るのは初めてではない。むしろ最近は頻繁に顔を合わせているが、今日は妙に胸騒ぎがした。

 

程なくしてチャイムが鳴り、玄関を開けると――。

 

「こんちゃー! お邪魔しまーす!」

 

黒髪ボブの角乃が満面の笑みで入ってくる。その後ろには制服姿の少女がぐったりと凭れかかっていた。

 

「ちょっ……! 何だそのガキは!?」

 

「ガキって言うなー。同じ高校生くらいかもよー?」

 

角乃は軽く頬を膨らませながらリビングに入り込み、ソファに少女を寝かせた。クリスは呆れながらも救急箱を棚から取り出す。

 

「で? どういう事情だ?」

 

「えーっとねぇ……」

 

角乃は少女の額に濡れタオルを乗せながら話し始めた。ユニバース戦士同士の戦いになったこと。相手は自分よりずっと未熟な女の子だったこと。そして自分が勝ったが故に気絶させてしまったこと。

 

「つまりテメェがぶん殴って倒したってわけか」

 

「ちょっと大袈裟すぎ! それにぶん殴ったって言い方やめてよね~」

 

クリスは舌打ちしつつも包帯や湿布を準備する。慣れた手つきで擦り傷を消毒する度に少女が小さく呻いた。

 

「それにしても……」

 

クリスは少女の顔をまじまじと見る。整った顔立ちだが緊張からか眉間に皺が寄っていた。

 

「この子、怯えてた感じだったんだよねぇ。なんか凄く怖がってるって言うか……」

 

角乃の声は珍しく静かだった。普段の底抜けに明るいトーンではない。

 

「テメェも怖がられてんなよ」

 

「そっちじゃないってー!」

 

クリスは目を逸らして茶化すように言ったが、内心では別のことを考えていた。

 

すると。

 

「ねっ、ねぇ」

 

「はぁ、どうしたの?さっきは指輪を取り合う為に戦ったけど、もう戦う理由はないわ」

 

「そっ、そのっ!返して」

 

「返すって、誰よ」

 

「私のっ、友達をっ!」

 

少女の一言に、角乃もクリスも疑問に思う。

 

「どういう事なの?私、あなたの友達なんて知らないけど」

 

「けれどっ」

 

「あぁ…とりあえず、事情を話してくれるか?じゃないとな」

 

そう、角乃に怯えている少女に、クリスは優しく語りかける。

 

「返して……ですか?」

 

クリスが眉根を寄せながら少女を見つめる。ソファに横たわる少女は、震える声で訴えた。

 

「私の……大切な友達……一本角の怪物に連れて行かれたの……あなたも……同じ角があるから……」

 

少女の視線は角乃のセンタイリングに釘付けだった。

 

「……そういうことか」

 

クリスが溜息をつく。

 

「この子、お前が変身している姿と勘違いしてるんだ」

 

角乃は複雑な表情で少女を見下ろした。ふいに自分のセンタイリングを握りしめる。

 

「……わたしもね」

 

角乃の声が、少しだけ静かになる。

 

「妹を探してるんだ」

 

「?」

 

クリスが驚いた顔で振り返る。角乃が個人的な事情を話すことは滅多になかった。

 

「五年前に攫われたんだ。理由もわからない。突然目の前で黒い影に包まれて……」

 

角乃の拳が僅かに震えた。

 

「だからわたしはこの力で探し続けてる。『一本角』かどうかは関係ない。でも……」

 

角乃は膝を折り、少女と目線を合わせた。

 

「同じ思いを抱えてるなら、協力できることあるかもしれないよ」

 

「!」

 

少女の瞳に微かな光が灯る。

 

クリスが呆れたように呟いた。

 

「甘いな。まだ信用できないかもしれないぞ」

 

「うん。でも」

 

角乃はセンタイリングを掲げた。

 

「みんな違ってみんないいっていうじゃん?こっちが信じなきゃ始まらないんだよ」

 

彼女はポケットからティッシュを出して少女の涙を拭いた。

 

「名前は?」

 

「……獅戸玲緒菜」

 

「わたしは一河角乃。あなたの依頼、私が受けるわ」

 

差し出された角乃の手を、玲緒菜は恐る恐る握り返した。温かい感触に少女の身体から少し力が抜ける。

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