ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
「行っけぇぇぇ!!」
角乃の雄叫びと共にテガソード・ケンタウロスが疾走する。ガオライオンの四肢が大地を抉りながら駆け抜け、漆黒の上半身が風を切る。
「グルァァァッ!」
鬼ノーワンが三日月刀を横薙ぎに振るう。ビルをも両断する斬撃が空気を裂くが、
「遅い!」
テガソード・ケンタウロスの下半身──獅子王・ガオライオンが俊敏に跳躍。刀身が宙を切った直後、アカツキの刃が鬼ノーワンの腹部をかすめる。
「ガァッ……!」
灼熱の閃光と共に鬼ノーワンの体表が焦げる。テガソード・ケンタウロスは止まらない。ガオライオンの爪が路面を削り、方向転換。三日月刀の追撃を回避しながら再接近する。
「一閃!」
角乃の掛け声と共に刀で切り裂くと共に、鬼ノーワンは思わず声を荒げる。
「っくぅ」
その叫びに応えるようにテガソード・ケンタウロスが火を吹く。
燃え盛る刃が鬼ノーワンの胸郭を斬り裂き、内部から囚われていた魂たちの叫びが響き渡る。
「生きたい……」
「助けて……」
その声が鬼ノーワンをさらに狂暴化させた。両腕が巨大な鉄槌となり振り下ろされる。
「させねぇ!」
遠距離からクリスが放ったミサイルが鬼ノーワンの肘部に命中。爆風がその軌道を僅かに逸らす。テガソード・ケンタウロスはその隙に回転斬りを繰り出し、肋骨のような外骨格を粉砕した。
「グルァァッ!」
鬼ノーワンが暴走した叫び声が響く。三日月刀が空間ごとねじ曲げるように襲いかかる。
「危ない!」
角乃が咄嗟にガオライオンの背筋を逆立てると、鬣が硬質化して盾となる。
ガオライオンの鬣が盾となって鬼ノーワンの斬撃を受け止める。だがその反動でテガソード・ケンタウロスの上半身が僅かに揺らいだ。その隙を鬼ノーワンが見逃さない。
「グオオォォッ!!」
三日月刀が蛇のように絡みつく。刀の柄が軋み、膝元まで押し下げられる。
「しまっ……!」
角乃の操縦桿が汗で滑る。鬼ノーワンの牙が目前に迫ったその時—
「角乃!」
クリスの声が、反射的にハンドルを切った。
ギャリン!!
火花が散る。テガソード・ケンタウロスの刀身が鬼ノーワンの鎖骨をかすめる。 その一撃で重心が崩れた。獅子の前脚が地面を蹴る。回転する巨体が敵をかち上げる。
「今だ!」「ガァァッ!」
空中で身を捻りながら刀を引く。刀身に炎が纏わりついた。
「ハアアアアアッ!!」
裂帛の叫びと共に一刀両断。紅蓮の剣閃が闇を切り裂く。鬼ノーワンの胸から股にかけて縦一直線の断裂が走った。
「グオアアアッ!」
両断された肉体が左右に軋む。その谷間から蒼い光が溢れ出した。少女の魂だ。
「もう……ひとりはイヤ……」
慟哭に似た悲鳴が空間を震わせる。その声が角乃の胸を焼く。
「待ってなさい!」
テガソード・ケンタウロスが跳躍した。ガオライオンの四足が流星のように宙を駆ける。断末魔に喘ぐ鬼ノーワンの裂け目に向かって、角乃は右腕を差し伸べた。
「来なさいッ!」
少女の霊魂が揺らめく。拒絶と恐怖の震え。だがその奥にある微かな希望。
「……わたしは……生きていいの……?」
その問いに角乃は微笑んだ。
「当たり前でしょ!アンタはアタシより可愛い子なんだから!」
テガソード・ケンタウロスの指先から光の粒子が溢れ出す。それは紛れもなく友情の色彩だ。
「掴みなさい!」
少女の魂が震える。それでもゆっくりと手を伸ばす。指先と指先が触れた瞬間、眩い閃光が炸裂した。
「——!」
悲鳴は途切れた。
「アタシたちで守ってあげる!」
少女の霊体がテガソード・ケンタウロスの掌に収まる。鬼ノーワンの本体と完全に分離する。
「グルァ……ァァ……」
残骸が虚ろな咆哮を漏らす。結合組織が解け、内側から灰燼となっていく。
少女の魂が実体化する。小さな背丈に半透明のドレス。まだ泣き顔だが、確かに生者の表情だ。
「ありがとう……」
彼女の微笑みと同時に、鬼ノーワンの巨体が崩れ去った。最後の火の粉が月光に溶けて消える。
灰塵となった鬼ノーワンの残滓が夜風に舞う。街の喧騒が徐々に蘇る中、ガオライオンが低く喉を鳴らした。
「……終わったわね」
角乃が呟く。テガソード・ケンタウロスの巨体が分離し、黒き竜馬が光の中へと還っていく。
少女の魂は柔らかな光輪に包まれていた。震えはもうない。その小さな手をガオライオンが鼻先で優しく押し上げる。
「……行くの?」
角乃の問いに少女がこくりと頷く。獣王の黄金の眼差しに導かれ、ゆっくりと星空へ昇っていく。
「ありがとう……みなさん……」
霞んでいく声。最後に振り返った笑顔が月明かりに透ける。
「行かなきゃならない人は居るものよ」
クリスが拳を握りしめる。その隣で角乃が肩越しに言った。
「あれぇクリスちゃん? 案外泣き虫さん?」
「うっせ! 砂埃だ!」
頬を拭うクリスを少女がくすっと笑う。涙の粒が星屑みたいに散った。
獅戸玲緒菜はただ黙って空を仰いでいた。親友を喪った哀しみと新しい出会いの喜びが交錯する――そんな表情だ。
「ほら、あなたも送ってあげて」
角乃に促されると、玲緒菜はそっと掌を天に翳した。光の柱が彼女の想いを束ねて伸びる。少女の姿が虹色の光球へと変わりゆく。
「さようなら……とありがとう……」
最後の言葉は風に溶けた。天頂で光球が花火のように弾けた刹那――無数の小さな蛍が降り注ぐ。夜空が祝福の欠片に満ちていく。
「きれい……」
誰かが零した吐息。みんなの目に星の輝きが映った。
ガオライオンが一際高く吠える。それは勝利の凱歌ではなく、旅立つ魂への鎮魂歌だった。