ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
瞼が重い。指先すら動かせない。
(俺は……死んだのか?)
朦朧とする意識の中、懐かしい声が聞こえた。
「おい、吠!起きろよ!」
「……?」
目を開けるとそこは見知らぬ部屋だった。いや、正確には見覚えのある部屋だ。壁紙の剥がれ具合も家具の配置も記憶の中の遠野家そのもの。
そして、そこにいたのは。
「クオンっ……!?」
それと共に俺は立ち上がりながら、睨み付ける。
なんで、ここに奴が?
そう叫んでいると。
「クオン?何を言っているんだ、吠?」
「はぁ、だって」
「ちょっと、どうしたの久光?」
「えっ」
見間違いじゃないのかと、改めて見てみると……。
奴じゃない。どう見ても他人の空似といった感じだった。
「いやいやいや!クオン以外あり得ねぇだろ!?ふざけてんじゃねぇぞ!」
怒鳴り声が自分でも驚くほど大きくなった。目の前の少年は怪訝そうな顔で俺を見てくる。弟?
笑わせるな。こいつは俺を裏切った仇敵だ。
だが部屋に駆け込んできた母さんの姿を見てハッとした。昔と変わらない優しい微笑み。父さんも同じだ。何もかもがあの頃に戻ったような錯覚に陥る。
「吠ちゃんったら朝から大声出して……」
「ほら朝ごはん出来てるぞ」
テーブルに並ぶ料理。湯気の立つ味噌汁。
全部同じ味。いや、むしろ記憶以上に美味い。
(偽物だ)
そう確信しているのに箸が止まらない。懐かしさと安心感が身体中を満たしていく。
「なあ吠、今日学校帰りに寄りたい店があるんだけど一緒に」
「黙れ!」
反射的に久光を押し退けた。「お前は久光じゃない」と怒鳴りつけたはずが「クオンじゃない」と言ってしまう。混乱する思考。汗で濡れた掌。
夜になると今度は父と一緒に風呂に入った。「久しぶりだな」と豪快に笑う背中。子どもの頃は見上げていたそれが今はほぼ同じ高さ。
浴室の鏡に映る自分は妙に若々しい。十代半ばの高校生姿だった。髪型も服装も本来だったらこうなっていたはず。
(おかしい)
だけど同時に信じたくなる自分もいる。この温もりこそが真実なのかもしれないと。
「なあ吠、お前最近変だぞ?」
翌日の廊下で久光が眉を顰める。「俺がクオンだなんて冗談きついぜ」。その声も仕草も確かに兄のそれ。
「・・・俺は」
困惑する俺を余所に聞こえた歌。
その歌に、俺は見上げる。
「これは」
僅かに見えた景色。
胸が疼く。
現実との繋がりを示すように、痛みが走った。
(やっぱり夢か)
見つめた先、そこにはさっきまで俺と戦っていた奴と響達が戦っていた景色。
向こうの声はまるで聞こえない。
けれど、こっちを必死に呼ぶ声が聞こえる。その声が響の声なのが分かってしまう。
―――だとしても。
―――今の俺はどうすることも出来ない。
―――こっちの世界でいくら歌おうと。
「もう終わりなんだ」
言葉にするたびに虚しく響く。
仮初めの家族の温もりが優しく包む。
(このまま眠っていたほうが楽だろ?)
悪魔の囁きが脳裏を過る。
窓の外には晴れ渡った空が広がっている。
この世界は綺麗すぎる。
まるで絵画のように完成された日常。
母の作った卵焼きも。
兄と一緒にするサッカーも。
父さんとの話も。
全てが俺を魅了して離さない。
だが時折、指先が痺れたり 視界がぼやけたりする。
夢の中でさえも死が忍び寄る。
「生きるのを諦めないで!」
その声が割り込んできた。鼓膜を破るような轟音。現実からの呼び声。
「なあ吠!」
母さんが不安げに覗き込む。兄貴が俺の肩を揺する。
(行くなよ)
(ここにいろよ)
(もう戻れない)
(現実は残酷だ)
(俺達と永遠に暮らせばいい)
(全てを忘れて幸せになろうぜ)
誘惑が俺の中で渦巻く。
確かにここは楽園だ。
傷つかなくて済む。
戦う必要もない。
愛してくれる人がいる。
だけど……
「だめだ……」
俺は振り払うように首を振った。目尻から零れ落ちた涙は幻覚の床に吸い込まれていく。
「響が……アイツらが……待ってるんだよ!」
手を伸ばした虚空には、もう見慣れてしまった現実の欠片がちらついていた。
赤と青の火花。響のシンフォギア。ペスティスの嘲笑。そして——
俺が刻んだ名前。忘れるわけにはいかない。
(本当にいいのか?)
最後の誘惑。優しい父の声。
(戻っても苦しむだけだぞ?)
温かな母の抱擁。
(俺たちといれば安全だ)
爽やかな兄の笑顔。
全部本物だ。
だからこそ騙されるわけにはいかない。
「悪いな……みんな」
俺は拳を固めた。
「俺は戻る」
その瞬間、世界が罅割れた。
硝子の割れるような音と共に七色の光が溢れる。
夢の住人たちが泡となって消えていく。
俺は真っ直ぐ響の声の方向へ飛んだ。 体が軽い。
自由落下のように堕ちていく感覚。
その時。
『遠野吠』
「テガソード」
そこには、何時の間にか、テガソードがいた。
なぜ、ここに?
そう思っていると。
『お前の願いが、ここに新たな剣を造り出した』
「新たな剣だと?」
それと共に、見つめた先、そこには黄金の光が集まっていた。
『無限の力を秘めるその力は、かつての戦いで砕け散った。だが、その力がこの地で眠り、そして、お前の願いが再誕させた』
「・・・よく分からないけれど、ようするに」
俺はその光を掴む。
「あの野郎をぶっ倒す事が出来るって事だろ!」
同時に光は、そのまま剣の形へと変わる。
それと共に、俺は、ゆっくりと現実へと戻っていく。