ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
「太志……」
その名を呟いた瞬間、禽次郎の喉が詰まった。ゴジュウイーグルに変身を解除し、その素顔を見る。
自分と同じ深い茶色をしている。その眼差しに宿る鋭さの中に、確かに血縁者の気配があった。
目の前の少年こそ、猛原譲二にとって唯一の孫である太志だった。
(まさか……こんな形で……)
変身解除した太志が無造作にポケットに手を入れる仕草、肩の丸め方、歩き方に至るまで全てが記憶の中の孫そのものだ。ただ一点を除いては——彼が自分を知らないという点である。
「お前……誰だ?」
警戒に満ちた声音。太志の口から発せられる言葉一つひとつが禽次郎の胸を刺す。
(そうだな……今の俺は猛原譲二ではない。高校生の猛原禽次郎だ……)
かつて譲二として育て上げてきた孫との再会がこうなるとは夢にも思わなかった。しかも今や自分が彼と同じ教室で学ぶ同級生なのだ。
だが、疑問があまりにも多すぎる。
「いやいや、俺だよ禽ちゃんだよ、クラスメイトの猛原禽次郎!」
「・・・何を言っているんだ?俺のクラスにお前みたいなのはいないぞ?第一、なんで俺と同じ名字なんだ?」
「そうか……やはり俺はお前のことを知らない」
太志は淡々と言い切る。その瞳に欺瞞は一切なく、純粋な困惑だけが浮かんでいた。まるで別人のようにすら感じるほどの距離感だった。
(どうやら本当らしい……)
禽次郎の胸に鉛のようなものが沈んだ。かつてよく自分にくっついてきた孫が、ここまで自分を拒絶する事態。指輪の影響で若返ったとはいえ、これが現実だと受け入れざるを得なかった。
「じゃあ、どうやってこの指輪を手に入れた?」
指差す先にはゴジュウイーグルのセンタイリング。これこそが最大の謎だった。
「わからない。気づいたら手の中にあった」
太志は首を傾げながら答える。
「これか?これは、爺ちゃんが死んだ日に手に入れた物だ」
「なっ!」「えっ」
その一言に、禽次郎も調も思わず声を出してしまった。
「死んだ……?」
禽次郎の声が掠れた。信じられないという思いが全身を覆う。
「ああ。交通事故だった。俺が十七の時だ」
太志は淡々と続けた。その横顔には痛みよりも冷静さが漂っていた。
「葬儀の後、爺ちゃんの遺品整理をしていた時に庭に出たら……地面に落ちていたんだ。まるで導かれるように拾い上げた」
その指輪を見つめる目には決意が宿っている。
「爺ちゃんの最後の言葉が忘れられない。“自分の夢を諦めるな”って……だから俺は絵で食っていくと決めた。その指輪は爺ちゃんからのエールだと思ってる」
「・・・・・・」
調が禽次郎の顔を覗き込む。彼女の表情は言葉以上に「どういうこと?」と語っていた。
禽次郎はゆっくりと息を吸い込んだ。
(違う……この太志は俺の知る太志じゃない)
確信した。この太志は別世界の住人であり、そちらの世界では既に自分が死んでいる存在なのだ。
「君は……画家になりたいのか」
かろうじて絞り出した声に、太志が小さく笑う。
「ああ。下手だけどな。でも爺ちゃんとの約束だから」
「っ!」
突如耳朶を打つ悲鳴。三人が振り向くと、通りの向こうで煙が立ち昇っていた。
「また奴らか……!」
太志が眉をひそめると同時に駆け出す。
「待てよ!相手は──」
禽次郎の制止など構わず、太志は疾風のように駆け抜けた。背筋がピンと伸びた後ろ姿は紛れもなく若かりし日の自分を思い出させた。
「エンゲージ!」『ゴジュウイーグル!』
それと共に、太志はすぐにゴジュウイーグルとなって、その現場へと向かう。