ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
崩れたコンクリート塊や瓦礫が散乱する広場。かつて高層ビルが立ち並んでいた場所は今や廃墟の谷と化し、灰色の煙が星空を遮っている。
(どこだ……一体どこにいる?)
猛原太志はマスクの内側で目を凝らす。レーダーもない素の肉体が頼れるのは聴覚と本能のみ。倒壊音がまだ残響する中、ほんの一瞬の風切り音に反応し腰を捻る。鋭い金属音とともに防具の表面を弾が跳ねた。
「チッ!」
すぐさま石柱の陰に飛び込む。拳銃程度なら弾ける装甲だが、複数箇所に被弾すれば亀裂が入るリスクがある。周囲に散らばる遮蔽物は多いものの、敵の射程距離が読めない。
(まずい……死角が多い)
煙幕の向こうから不規則な銃声が連続し、断続的に破片が飛び散る。火花が一瞬の視界を作るだけで敵の姿は依然として見えない。音速を超える弾丸の速度では予測も難しい。太志の足は自然と三角跳びのステップを取り始める。
突然、右斜め上方で瓦礫が破裂した。
咄嗟に退避した隙間を埋めるように複数の追尾弾が降り注ぐ。床が抉れ煙が視界をさらに曇らせた。
(……見えないだけじゃない。誘導されている!)
視認できない攻撃というのは想像以上に精神を蝕む。戦いにおいて最も重要なものは情報収集だが、今回の敵は完全に"音"と"時間差"を使ってこちらの動揺を誘っている。
背筋に冷たい汗が流れる。まるで蜘蛛の巣に囚われたような錯覚。幾度も訓練してきた演習ではこんな罠は想定されていなかった。
(爺ちゃん……助けてくれ……)
心臓が脈打つたびに過去世話を焼いてくれた祖父の背中がちらつく。だが今は守られる側ではなく守る側。歯を食いしばって頭を振る。
次の瞬間、建物全体が轟音と共に揺らいだ。
「っ!?」
遠方に積み上げられていた鉄骨の塔が崩落し始めている。もし進行方向に被弾すれば……
(避難民がまだ中に─!)
視界を奪う濃霧の中でも辛うじて人々の悲鳴が聞こえる。ここで立ち止まっていれば二次被害が出るのは必至。
(見当違いかもしれない……でも迷ってる場合じゃない!)
ゴジュウイーグルは決断した。前方へ跳躍する。装甲が剥がれる激痛よりも守るべき命の方が重要だ。
太志のゴジュウイーグルが前方へ踏み込んだ刹那——空気を切り裂く金属音が左頬を掠めた。反射的に身を翻すも間に合わない。次の瞬間、全身を守るように緑の羽根が花弁のように舞い落ちてきた。
「ッ!?」
太志が息を呑む間に降り注ぐ弾幕が悉く羽根の盾に阻まれる。煙幕を押し分けるように現れたのはまったく同じデザインの甲冑——しかしその動きは明らかに洗練されていた。
「大丈夫か!?」
聞き覚えのある声が響く。
「な……なんでお前が……!?」
太志の混乱した声に、もう一人のゴジュウイーグル——禽次郎が低く笑う。
「説明してる暇はない。まずは……」
言葉が終わる前に周囲が再び振動した。崩れかけの鉄骨が雪崩のように落下を始める。
「あっちだ!」
禽次郎が叫ぶ。視線の先には瓦礫の山へと向かう幼い少女の影。
二つの翼が交差するように飛翔した。銃弾の雨が二人の軌跡を追いかける。
瓦礫の山へ到達した瞬間、二人のゴジュウイーグルが同時に少女へ手を伸ばした。接触の寸前、禽次郎のゴジュウイーグルが僅かに早く少女を確保し、空中へ跳躍する。
その背中が太志の目に焼き付いた。
(なんだろう……あの背筋の伸び方)
落下する建材を紙一重で躱しながら飛ぶ姿勢。重心移動の無駄のなさ。すべてが見覚えのある動作だった。記憶の中で祖父が庭仕事をする後ろ姿と重なる。
(爺ちゃんみたいだ)