ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
「警察辞めてからどこ行ってたんだァ?報告義務違反じゃねェのかァ?」
荒巻の吐く息は荒い。距離を保とうとする翼が僅かに身構えたのを角乃は見逃さなかった。
「今は捜査協力中だ」
「捜査協力だァ?ハッ!てめェみたいな半端モンがァ」
彼は首を左右に振りながら嗤った。白髪が揺れ、顔面の傷がさらに強調される。
「まだ警官気取りかよォ。辞表出してるくせに勘違いしてんじゃねぇぞォ~」
角乃は唇を噛んだ。翼が一歩前に出て言葉を遮る。
「あなたの言動は問題だ。相手は一般人ではない。公務執行妨害として対処する必要がある」
冷静かつ冷徹な口調に荒巻の眉がぴくりと動いた。
「おっとォ~。天下の風鳴翼様かよォ。サイン貰おうと思ってたところなんだけどよォ」
「冗談はよせ」
翼の手が腰に移動する。――銃では無いが、万一のために備えた指先が微かに震えている。
「……チッ」
荒巻は大きく舌打ちし、踵を返した。白衣の裾が翻る。廊下の奥へと消えていく背中に角乃の肩が緩んだ。
「大丈夫か?」
翼の囁きに角乃は小さく頷いた。だが瞳は依然として床を見つめたままだった。
「ありがとう。助かった」
「なぜ何も言い返さなかった?」
問われた角乃は短く息を吐いた。
「あの人は……」
角乃の声がかすれる。翼は黙って待った。
「私が警察辞めた理由を作った張本人であり、恩人なの」
その告白に翼の視線が鋭くなった。廊下の窓から差し込む月明かりが角乃の横顔を照らす。
「妹が誘拐されて……犯人と疑われた人に暴行して」
指先が白くなるほど握りしめられる拳。
「その人、全く関係なかったの。冤罪だった」
翼の息が止まった。
「逮捕されて……停職中に私は警察を辞めた」
「……荒巻という男が関与していたのか?」
「止めてくれたの。最後まで暴走する私を殴って」
意外な言葉だった。あの威圧的な態度からは想像できない行為。
「だからこそ憎めないの。先輩として尊敬していた時期もあるし……でも今は……」
言葉が詰まる。あの狂犬のような笑顔の裏に潜む正義感と不器用な優しさ。すべてを知ってなお許せない複雑な感情。
「嫌いになれたら楽だったのに」
翼は静かに角乃の肩に手を置いた。
「正義はときに残酷なものだ。だが君が本当に憎むべきは己を制御できなかった過去なのか?」
角乃は黙って首を振った。
「違う。一番憎いのは妹を攫った奴」
その瞬間だけ目尻が震えた。未解決の事件の影が彼女の心を蝕んでいる。
「だったら捜査を続けよう。ここで立ち止まっていても何も変えられない」
翼の励ましに角乃はようやく頷いた。胸の奥の澱が僅かに晴れた気がした。
「行きましょう。依頼人の姉も探さないと」
螺旋階段を登り終えると共に。