ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦   作:ボルメテウスさん

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ヒーローの形

埃と汗の匂いが充満する採掘場に、静寂が戻っていた。鉱山の天井から漏れ入る夕陽の光が、崩れた岩肌と散らばった瓦礫を赤く染める。調はほんのり湿った空気を吸い込みながら、その光景を遠くから見つめていた。

 

熊手真白がゆっくりと倒れた弟子のそばに屈みこむ。

 

「……進」

 

声は低く、疲れが滲んでいたが、どこか穏やかだった。進も黒髪が汗で肌に貼りついている。目を閉じたまま浅い呼吸を繰り返すその姿は、まるで眠っているようだ。

 

「戦うだけがヒーローじゃない」

 

熊手の言葉が鉱山の壁に反響した。調はそれを聞いて、胸の奥に何かがぽとりと落ちる感触を覚えた。

 

「公園をきれいにするのも……」

 

熊手が割れたヘルメットをそっと外し、弟子の顔を拭う布切れが埃で汚れていく。

 

「……人に優しくするのも」

 

彼の指先が、腫れた瞼に優しく触れる。

 

「……それも立派なヒーローだ」

 

その声音には厳しい鍛錬で培われた芯がありながらも、父のような温もりがあった。調はその言葉がまるで自分の耳元で囁かれているように感じた。戦う以外の強さ――それがずっと胸につかえていた棘を溶かすようで。

 

進の瞼が震え、かすかに開く。

 

「……俺は……強くない……」

 

絞り出すような声。進の唇が悔しさに歪む。調は彼の横顔に映る夕焼けを見つめながら、自分もつい昨日まで似たような絶望を噛みしめていたことを思い出した。

 

「強さってのは戦いだけじゃない」

 

熊手の眼差しは進の奥底を射貫くようだった。

 

「ヒーローも強さも……形は様々だ」

 

その言葉が調の中で何度も反芻される。

 

「だからこそ、お前自身のヒーローを見つけろ」

 

調の頬を微かな風が撫でる。埃臭かった空気が少しずつ浄化されていく気配がした。

 

進の目に涙が浮かび、それから小さな笑みが零れる。

 

調の胸の奥に沈殿していた硬いものがゆっくりと溶けていった。戦うことも捨てることもできなくて揺れていた自分が、少しだけ肯定された気がしたのだ。

 

「……ありがとうございます」

 

進が掠れた声で礼を述べたとき、調はそっと背を向けた。

 

沈みゆく太陽が崖の縁を黄金色に染める。明日は何をしようかと考え始めている自分が可笑しくて、調は口許を緩めた。傷だらけでも、戦いのあとには必ず朝が来る。そういう強さもあるのだと――調はひとり静かに納得するのだった。

 

進の膝がわずかに動いた。立ち上がろうとする意思が体を支えようとする。だが全身が鉛のように重い。

 

「……」

 

声にならぬ呻きとともに、額から新たな汗が滴る。敗北の痛み以上に、自分が求めていた何かに届かなかったもどかしさが胸を締め付けていた。

 

その肩に、暖かい手が乗った。

 

見上げると熊手真白が屈み込み、泥と埃で曇った顔に微笑を浮かべている。ゴジュウポーラーの変身を解除した素顔には疲労の陰が刻まれていたが、瞳には確かな穏やかさがあった。

 

「進」

 

熊手がゆっくりと名を呼ぶ。その呼び方が戦闘中の師弟関係から日常への橋渡しをしているかのよ

うだった。

 

「また……公園で会おう」

 

それは命令でも指導でもなかった。

 

待っている。そこに帰ってきて欲しい。

 

日常の一部として受け入れる場所があるということ。

 

責めるのではなく、包み込むような温かさが言葉の奥に満ちていた。

 

進の喉が痙攣し、嗚咽が漏れかけた。だが彼は歯を食いしばり、こくりとうなずいた。まだ痛みは消えない。

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