ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
往歳巡の研究室は、大学の一角にあるはずなのに、まるで“博物館の倉庫”のような雰囲気だった。壁一面には年代別に並べられた分厚いファイル、床には積み上げられた古文書の箱。棚には「戦隊五十古事録」を中心に、手書きの写本や黄ばんだスクラップがぎっしり詰め込まれている。
ページの隙間からは古いインクの匂いが立ちのぼり、机の上には解読途中のメモや、戦隊の紋章が描かれたラフスケッチが散乱していた。
紙と歴史の重みが積み重なったその部屋は、まさに“戦隊考古学”の心臓部だった。
「いやぁ、よう来てくれたな。ここがワシの研究室――戦隊考古学の宝庫やで」
往歳が胸を張って扉を開くと、響は思わず「わぁ……!」と声を漏らした。
壁や机に溢れんばかりの資料、色褪せた古文書、そして丁寧に保管された戦隊のスケッチが部屋中に並ぶ。
その中には、響も既に見ていたユニバース戦士である――例えばゴーバスターズやシンケンジャーの姿も描かれていた。
「そのスーパー戦隊って、こんなにいたんですか?」
「そうやな、調べた所では、50のスーパー戦隊がいる。だが、他にも多くいるそうだが、現存する資料では50人しかいないな」
そう言いながら、往歳も真面目になるように眼鏡を取り出す。
「それで。そもそもスーパー戦隊っちゅうのはな――」
往歳が眼鏡越しに棚の古文書を一瞥し、静かに息を整える。背筋を伸ばし、まるで講義を始める教授のように響と竜儀に向かった。
「こいつらはな、“別の宇宙からやってきた英雄”なんや。ワシらとは違う世界線で生まれた守護者。異世界からの来訪者や」
「別の世界……?」
響の瞳がさらに大きく見開かれる。未知の概念に思考が追いつかない。
往歳は頷きながら壁に掲げられた年表を示した。「ユニバース大戦」と題された大きな柱が中心に鎮座している。
「そうや。その大戦の際にな、全戦隊ロボ共々この宇宙に介入してきたんや。目的は……まあ推測になるけど、“ある災厄”を食い止めるためやろうな」
往歳はそこで一旦区切り、意味深に机上のテガソード・リングを撫でた。リングはほのかに光を放っている。
「結果はどうなったんですか?」
響の問いに、往歳は苦い表情を浮かべた。
「結論から言えば……連中は力の大半を喪失した。ロボットたちはエネルギー核を失い、戦士たちも個々の能力を細分化させられたり分裂したりで弱体化。“大戦の代償”って奴やな」
「それで彼らは去ったんですか?」
今度は竜儀が口を挟む。興味深い仮説に対し冷静さを保つ学者の眼差しだった。
「いいや。もっと根深くてややこしいことになったんや」
往歳は拳を振り下ろし、テーブルに積まれた分厚い巻物を指し示す。
「痕跡だけ残していったんよ。歴史上の記憶にも刻まれず、ただ風化しない何かだけが形を変えて今なお生き続けてる。文化や思想の中にな」
往歳は咳払いを一つ入れた後、ふっと表情を和ませた。
「例えば日本文化に根強い侍精神があるやろ?刀を振るう美学とか名誉のために命を賭ける価値観とか」
「確かに……それがシンケンジャーから?」
「仮説やけどな」
往歳は快活に笑った。
「侍戦隊シンケンジャーがもたらした『武士道』的思想が潜在意識レベルで浸透してる可能性は十分にある。海外でもな、戦闘機パイロット文化に鳥人戦隊ジェットマンの影響が……まあこれはワシ個人の見解やけどな」
響は唖然としたまま、目の前に広がる歴史のパズルの断片を見つめていた。異世界から来たという超常的存在が、気づかぬうちに自分たちの日常まで作り変えてしまっていたのだ。
「教授、少しよろしいか?」
「おぉ、えぇで」
そうしながら、話していると、部屋に入ってくる2人の影。
研究室のドアが静かに開き、二人の若い男性が足早に入ってきた。どちらもTシャツの袖を捲り、ノートPCを抱えている。典型的な大学生といった風貌だが、竜儀の目は彼らの右手人差し指で微かに煌めく光を捉えていた。
「あれは……!」
竜儀が小さく息を呑む。見間違えるはずもなく、指輪が二人の指に収まっていた。
「おお、月原!アクティ!ちょうど良かった!」
往歳が満面の笑みで迎える。二人は軽く会釈すると、PCをテーブルに置いた。
「データ解析終わりましたよ、先生」
「遅くなっちゃいましたが」
「いやいや助かるわぁ!例の解析、進んどるか?」
往歳が嬉しそうにキーボードを叩き出す。竜儀は動揺を隠せず、響も不思議そうな顔で二人を見比べた。
「往歳さん……彼らも?」
竜儀の問いに、往歳は悪戯っぽくウィンクした。
「紹介が遅れたな。こいつらはうちのゼミ生。ワシと一緒にユニバース戦士やっとる仲間や」
「戦士……?」
響が思わず口走る。