ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
街灯もまばらな暗い裏路地。濡れたアスファルトにネオンの残光が滲み、クオンは壁にもたれて端末を操作していた。人気はなく、聞こえるのは遠くの車の走行音だけだ。
「久し振りだな、久光」
低く落ち着いた声が背後から投げかけられる。
クオンはわずかに肩を揺らし、ゆっくりと振り返った。
「……紅葉さん」
そこに立っていたのは巌紅葉だった。年の頃は四十代半ば。鍛え抜かれた体躯を包む深緑のコートは使い込まれ、無精髭の生えた顔には、疲労と同時に揺るがぬ意志が刻まれている。かつて刑事だった男の眼光は、今も鋭かった。
「生き延びたさ」
紅葉は静かに言い、指を掲げる。
「お前を改心させる。その願いを叶える為にな」
指にはめられたセンタイリングが、月明かりを反射した。
「何の因果か……あなたも指輪の戦士とはね」
クオンは口元を歪めると、指輪に手をかける。
「エンゲージ」
『ガリュード』
銃のスライド音と共に闇が弾け、クオンはリングハンター・ガリュードへと変身する。紫の光が収束し、右手にはテガジューンが構えられた。
その姿を見据え、紅葉もまた銀のテガソードを握る。
「エンゲージ」
『センタイリング』
音声と共に、紅葉はテガソードを打ち鳴らす。
次の瞬間――。
ガリュードのテガジューンが火を噴いた。
だが、放たれた弾丸は、紅葉の一閃によって真っ二つに断たれる。
「なっ……!」
動揺する間もなく、ガリュードは引き金を引き続ける。しかし、その全てが銀の刃に弾かれ、地面に火花を散らした。
紅葉は弾幕を切り裂きながら間合いを詰め、くるりと身を翻す。回転と同時に、銀のテガソードから炎が噴き上がり、円を描くように燃え広がった。
炎の輪の中で、装甲が次々と紅葉の身体を覆っていく。最後に顔パーツが装着され、重厚な姿が完成する。
『ゼンカイジャー』
音声が鳴り響いた瞬間、そこに立つユニバース戦士。
それは、二つの戦隊の力を宿し、ジュウレンジャーの力を擬似的に再現したゼンカイジャーの赤の戦士の1人、ゼンカイジュランが立っていた。
手にしたジュランソードが閃き、次の一撃でガリュードは壁際まで吹き飛ばされる。
再会は、もはや戦い以外の形を許さなかった。
ガリュードは距離を取るように後退し、テガジューンを構えた。紫の閃光が連続して放たれ、裏路地を貫く銃声が反響する。
「近づくな……!」
だが、弾幕はゼンカイジュランに届かない。重装甲の身体が地を蹴るたび、予想外の速さで間合いが詰められる。剣を振るう軌道は無駄がなく、鋭い――まるで獲物を追い詰める狼の如き剣技だ。
斬撃が弾丸を叩き落とし、火花が連なる。ガリュードは横に跳ぶが、次の瞬間、ジュランソードが視界を裂いた。
「くっ……!」
紙一重でかわしたはずの一撃が、コートの端を切り裂く。距離を取ろうと後退するたび、ゼンカイジュランは一歩先を読むように踏み込み、剣を走らせた。
重そうな外見とは裏腹に、動きは疾風。回転、踏み込み、斬り上げ――一連の流れが途切れない。ガリュードは射線を作る暇すら奪われ、路地の壁際へと追い詰められる。
「……チッ」
思わず舌打ちが漏れた。遠距離戦の主導権は、完全に奪われている。
ゼンカイジュランは剣を構え直し、低く身を沈めた。その佇まいは、逃げ場を断つ狩人そのものだった。
舌打ちと共に、ガリュードは懐から二つのセンタイリングを引き抜いた。
「……やはり厄介だな。なら、数を増やすまでだ」
リングを重ねるように装填する。
『デンジマン』『バイオマン』
音声と共に空間が歪み、ゼンカイジュランを囲むように二つの戦士が実体化した。電光を纏うデンジレッド、重厚な装甲のレッドワン。
「行け。時間を稼げ」
命令と同時に、二人が一斉に踏み込む。
だが、ゼンカイジュランは退かない。
剣を低く構え、最小限の動きで一歩前へ出る。振るわれた拳を半身で躱し、剣の腹で受け流す。重たい装甲の隙を正確に突き、間合いを切り裂くように前進した。
「知っているぜ」
刃を交えながら、低く言葉を投げる。
「お前が、吠にしてきた事を」
「……!」
ガリュードの動きが一瞬だけ乱れた。
「あんたには関係ない事だ!」
引き金を引き、紫の光弾を放つ。
「関係ない、か」
ゼンカイジュランは、目前のデンジレッドを踏み台に跳躍した。
「吠が羨ましいか、眩しいか。だが――」
光弾は軌道を外れ、代わりにデンジレッドを撃ち抜く。
「吠を苦しめた所で、お前は救われやしない」
宙で体を捻り、着地と同時に剣を胸元へ翳す。
「あんたは、昔から傲慢だ!」
そう、叫ぶガリュードの言葉に対して、ゼンカイジュランのティラノサウルスの頭部が応えるように輝き、剣身に炎が走った。
振り抜かれた炎の斬撃が、三方向へ奔る。
デンジレッドとレッドワンは爆炎に呑まれ、粒子となって消滅した。
「くっ……!」
衝撃に弾かれ、ガリュードは地面を転がる。
ゼンカイジュランは歩み寄り、足元に転がる二つのセンタイリングを拾い上げる。
叫ぶガリュードを見下ろし、静かに言った。
「傲慢でいい。だが、誰かを縛る力にはならん」
剣を構え直し、ゼンカイジュランは再び前へ出る。
決着は、まだ先だった。
だが。
「クオンが現れたと思ったら……どういう状況だ、これは」
吠は即座に構える。倒れているクオン、その前に立つ巨躯の戦士――ゼンカイジュラン。
見慣れぬ指輪の戦士。敵か味方か、判断は一瞬だった。
「新手のユニバース戦士か……?」
警戒する吠に、低く、だがどこか懐かしい声が返る。
「……でかくなったな、吠」
「――え?」
その声に、吠の思考が止まる。
次の瞬間、装甲が光の粒子となって剥がれ落ち、戦士の姿が解けていく。
そして。
「……紅葉、さん……?」
吠の目が大きく見開かれる。
「知り合いか?」
クリスが小声で尋ねる。
「ノーワンワールドで……俺とクオンを守ってくれた恩人だ。
でも、あの時……逸れて……」
言葉が詰まり、吠の視界が滲む。
死んだと思っていた。二度と会えないと思っていた。
その肩に、温かな手が置かれる。
「泣くな。生き延びただけだ」
紅葉は、少し照れたように笑った。
「約束があったからな。あいつを……改心させるっていう、な」
吠は、声を殺して涙を流した。
それを見て、紅葉はただ静かに、嬉しそうに微笑んでいた。