ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
胸の奥が、ぐちゃぐちゃだった。
紅葉さんが生きていた。その事実だけで、心のどこかが一気に軽くなる。
なのに――視界の端に倒れている“あいつ”がいるだけで、その感情はすぐに濁った。
俺は、無意識のうちにクオンを睨んでいた。
幼馴染みを傷つけた。
仲間を踏みにじった。
何より、俺の大切な居場所を壊そうとした。
兄だとか、血の繋がりだとか、そんなものは言い訳にもならない。
「……まだ生きてたのかよ」
喉の奥から、低い声が漏れる。
クオンは何も言わず、ただ俺を見返してきた。その視線が、妙に冷静で、余計に腹が立つ。
俺は一歩踏み出した。
センタイリングに指がかかる。
「吠、やめろ」
その声に、足が止まった。
「……なんでだよ」
振り返ると、紅葉さんが俺とクオンの間に立っていた。
迷いのない立ち方だった。
「なんで止めるんだ。あいつは――」
言いかけて、言葉を噛み殺す。
言わなくたって分かるだろ、と言いたかった。
あいつが何をしてきたか。誰を傷つけてきたか。
紅葉さんは、静かに首を振った。
「俺はな……こいつが、どうしてガリュードになったのかを知ってる」
「……は?」
一瞬、頭が追いつかなかった。
「知ってるって……どういう意味だよ」
紅葉さんはクオンの方を一度だけ見て、それから俺に視線を戻した。
その目は、説得でも同情でもなく、ただ“事実”を語ろうとする目だった。
「吠。お前が思ってるより、こいつは――」
その時だった。
空気が、変わった。
背中に、ぞわりとした悪寒が走る。
視界の端で、光が揺らいだ。
「……っ!」
紅葉さんが、俺を庇うように一歩前に出る。
重い足音。
金属が擦れるような、不快な音。
ゆっくりと、路地の奥から現れた影を見て、俺は息を呑んだ。
――ガリュード。
だが、違う。
装甲の質感が、どこか無機質で。
動きに、人の気配がない。
「……なんだよ、あれ」
俺の視線の先に立っていたのは、
クオンと同じ姿をした、もう一人のガリュードだった。
クオンが、初めて明確に動揺したのが分かった。
「……来たか」
その呟きが、嫌な予感を確信に変える。
紅葉さんが、低く言った。
「話は、後だ。
どうやら……本当に“待った”が必要な相手が来たらしい」
俺は、歯を食いしばったまま、もう一人のガリュードを睨みつけた。
緊張が張り詰めた、その刹那だった。
もう一体のガリュードが、何の前触れもなく踏み込んだ。地面を砕くような一歩と同時に、殺意だけが一直線にこちらへ向かってくる。
「来るぞ!」
紅葉さんの声と、俺の動きは同時だった。
指輪を叩き、銀の刃が吼える。
「エンゲージ!」
世界が反転する感覚とともに、俺はゴジュウウルフとなって地を蹴った。考えるより先に身体が動く。一直線に距離を詰め、テガソードを振り下ろした。
――だが。
ガリュードはそれを片手で受け止めた。
金属音。衝撃が腕に返ってくる。
「なっ……!」
その横合いから、紅葉さん――ゼンカイジュランが斬り込む。完璧なタイミングだった。
それなのに、ガリュードは人間とは思えない挙動で身体をひねり、二人の攻撃を同時に避けた。
「避けた!?」
次の瞬間、衝撃が腹に突き刺さる。
同時だった。俺と紅葉さん、二人まとめて蹴り飛ばされた。
「ぐっ……!」
宙を舞う視界の中で、ガリュードが両腕を構えるのが見えた。
右手にテガジューン、左手にレオンバスター50。二丁拳銃。
引き金が引かれる。
――その前に。
「吠っ!」
紅葉さんが、即座に前に出た。
ジュランシールドが展開され、俺の前に立ちはだかる。
銃撃が盾を叩き、火花が散る。
俺は思わず叫んでいた。
「紅葉さん!!」
爆音が、頭上から叩き落とされた。
「下がれッ!」
振り向いた瞬間、空を裂いて飛来する無数のミサイル。
雪音クリスが、すでにシンフォギアを纏っていた。迷いのない射線、躊躇のない一斉射。あれは、俺が何度も助けられてきた“本気の援護”だ。
「これで……!」
だが――
ガリュードは、避けなかった。
片手に握られたティラノハンマー50が振り下ろされる。
地面が叩き割られ、砕けたコンクリートとエネルギーが壁のように盛り上がった。
直撃。
ミサイルは爆ぜたが、衝撃はそこで止められた。
「……は?」
思わず声が漏れる。
あり得ない。あの一撃を、防御に転用する発想と性能。クオンの戦い方とは、まるで別物だ。
驚いている暇はなかった。
「クリス!!」
ガリュードはすでに次の武器を構えていた。
イーグルシューター50。照準は、空中のクリス。
閃光。
撃ち抜かれた衝撃で、クリスの身体が大きく弾かれる。
「くっ……!」
高度を失い、落下する影。
俺は、考える前に走っていた。
地を蹴り、跳ぶ。手を伸ばす。
「――掴まれ!!」
指先が、クリスの腕を捉えた。
そのまま抱き寄せ、勢いのまま地面を転がる。
衝撃が背中を打つ。だが、構わない。
「大丈夫か!」
「……っ、ああ。助かった」
クリスの声を聞いて、ようやく息を吐いた。
視線を上げると、ガリュードはもう次の動作に移っていた。
武器を次々と切り替えるその姿を見て、背筋が冷える。
――あれは、戦士じゃない。
戦うためだけに作られた存在だ。
俺は歯を食いしばり、テガソードを強く握り直した。
次の瞬間だった。
横合いから走る銃声――ガリュードの動きが、一瞬だけ止まる。
「……っ!?」
俺が振り向いた先にいたのは、クオンだった。倒れていたはずの兄が、歯を食いしばりながら引き金を引いている。その弾道は正確で、狙いは“もう一人のガリュード”の関節部。
「援護だ……今だけだぞ!」
信じられない。だが、確かに助けられた。
混乱する俺の肩を、紅葉さんが強く叩く。
「吠、撤退だ! 今は戦うな。――この場を離脱するぞ!」
迷う暇はなかった。俺はうなずき、指輪を切り替える。
「エンゲージ!」『ルパンレンジャー!』
赤いスーツが展開し、ルパンレッドへ。
すぐさまウルフカリバー50を構え、空間を切り裂く。刃先に走る歪みが、次元の穴を開いた。
「クリス! 紅葉さん!」
二人を引き寄せ、躊躇いながらも――
「……来い、クオン!」
本当は嫌だった。だが、見捨てる選択はできなかった。
全員を抱え込むようにして、裂け目へ飛び込む。
振り返った刹那、視界の端で見えた。
ガリュードが展開した巨大な半透明のバリアが、街区一帯を覆い尽くしていく光景。
――間に合った。
だが同時に、胸の奥に冷たい確信が落ちた。
あれは、逃がす気がない。