ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
アスファルトが悲鳴を上げていた。
瓦礫が転がり、火花が散り、観客の叫びが遠くで重なっていく。
特設サーキットの中央を、赤黒い残像が引き裂くように駆け抜ける。
レースノーワンだった。
速い。
ただ速いだけではない。
“遅れる”という概念そのものを、置き去りにする走りだった。
「――くそっ」
古谷靖紘は歯を食いしばり、身体を前に投げ出すようにして追う。
だが直線に入るたび、距離は確実に広がった。
その様子を、コース脇から百夜陸王は睨みつけていた。
息をする間もない。
判断を遅らせれば、それだけで終わる。
「……違う」
陸王は小さく呟く。
追いつく必要はない。
勝つ必要も、今はない。
必要なのは――止まらせないこと。
レースノーワンが振り返り、嘲るように叫ぶ。
「遅い!
一位になれない走りに、意味はない!」
次の瞬間、路面が爆ぜた。
ノーワンが蹴り上げた瓦礫が、散弾のように降り注ぐ。
「っ……!」
古谷の身体が弾かれ、着地が僅かに乱れた。
速度が落ちる。
その隙を、レースノーワンは見逃さない。
さらに一段、加速。
距離が決定的になる――はずだった。
レースノーワンが、強引に進路を塞ぐように跳び出した。
瓦礫を踏み砕き、コースを歪め、その進行方向を観客席へと向ける。
――このままでは、レースが壊れる。
百夜陸王は、そう判断した。
腰のテガソードを引き抜く。
刃ではない。
これは、踏み込むための装置だ。
ブンブンジャーのセンタイリングを取り出す。
一瞬だけ、指先で確かめる。
迷いはなかった。
装填。
『センタイリング!
ブンブンジャー!』
駆動音。
金属とエネルギーが噛み合い、衝撃が地面を伝う。
赤い装甲が、陸王の身体を包み込んだ。
タイヤの回転音のような低い唸りが、全身を貫く。
陸王は立ち止まらない。
変身と同時に、前へ出た。
古谷靖紘は、前を見ていた。
ノーワン。
ゴール。
そのすべてが、まだ遠い。
「古谷!」
背後から、陸王の声。
「最後だ。
そのまま、踏み切れ!」
返事はしない。
古谷は、身体を沈めた。
信じる。
それだけで、足が前に出る。
陸王は、古谷の斜め後ろを走る。
半歩外側。
追い越さない位置。
走らせるための場所だ。
ブンブンチェンジャーを操作する。
タイヤ型エネルギーを生成。
狙いを定める。
投擲。
噛み合う。
回転が合う。
速度が揃う。
レースノーワンが振り返り、吠えた。
「二人で走るなど――
そんなものはレースじゃない!」
無理な加速。
限界を超えた踏み込み。
足元のエネルギーが軋み、火花が散る。
――一瞬。
陸王は、その減速を見た。
判断する。
遅れはない。
「今だ!」
最後のタイヤ型エネルギーを叩き込む。
並ぶ。
踏む。
前に出る。
越える。
ゴールライン。
古谷靖紘が、先に越えた。
次いで、陸王。
レースは、そこで終わった。
レースノーワンは立ち尽くし、その背中を見送る。
「……止まらなければ……
違った、のか……」
声は、空に溶けた。
減速。
停止。
古谷が振り返り、息を吐く。
「――ゴールだな」
陸王は短く頷いた。
「ああ。
最後まで、走り切った」
レースは終わった。
守られたものは、確かにそこにあった。