ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦   作:ボルメテウスさん

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レースへの不満

 歓声は、遅れてやって来た。

 

 ゴールを越えた直後、

 一拍置いて、観客席からざわめきが広がる。

 

 安堵。

 混乱。

 そして、遅すぎる理解。

 

 ――終わったのだ、と。

 

 百夜陸王は、振り返らなかった。

 視線は、ただ一つに固定されている。

 

 レースノーワン。

 

 それは、まだそこに立っていた。

 

 砕け散るはずの輪郭は残り、

 身体を覆う歪んだエネルギーが、不規則に脈打っている。

 

 止まっている。

 だが、沈黙してはいない。

 

「……違う」

 

 低い声が、コースに落ちた。

 

 観客には届かない。

 だが、陸王と古谷には、はっきり聞こえた。

 

「違う……違う、違う……」

 

 勝った。

 負けた。

 

 その二つしか、レースノーワンの世界には存在しなかった。

 

 一位か、そうでないか。

 速いか、遅いか。

 

 それ以外の結果を、

 彼は知らない。

 

 だが今、

 そのどちらにも当てはまらない現実が、

 はっきりと目の前に突きつけられている。

 

 一位ではない。

 だが、走り切った。

 

 その結果を、

 レースノーワンは“結果”として処理できなかった。

 

 理解してしまえば、

 自分が否定される。

 

 一歩。

 

 レースノーワンが、前に出た。

 

 足元で、アスファルトが軋む。

 

 古谷靖紘が、反射的に構え直す。

 

「陸王……?」

 

 問いではない。

 確認だ。

 

 陸王は、短く息を吸った。

 

 ――勝った。

 だが、終わっていない。

 

 それが、肌で分かった。

 

「認めない」

 

 レースノーワンの声が、震えた。

 

「一位じゃないなら……

 ナンバーワンじゃないなら……」

 

 エネルギーが、膨張する。

 赤黒い光が、コース外へと溢れ出す。

 

 観客席。

 まだ、全員が逃げ切ってはいない。

 

「――意味がない!」

 

 咆哮。

 

 レースノーワンは、ゴールラインを背に、進行方向を変えた。

 狙いは、走者ではない。

 

 参加者全員。

 

 勝者も、敗者も、関係ない。

 

「走れるなら、走れ!

 走れないなら――消えろ!!」

 

 次の瞬間、

 地面を蹴り砕く音が、爆発のように響いた。

 

 古谷が叫ぶ。

 

「まずい!」

 

 だが、陸王はすでに動いていた。

 

 視線は、逃げ惑う人々。

 距離。

 角度。

 間に合うか。

 

 ――間に合わせる。

 

 それが、答えだった。

 

 テガソードを、強く握る。

 

「……レースは、まだ終わってない」

 

 その言葉は、誰に向けたものでもない。

 ただの、事実確認だった。

 

 次の瞬間、

 陸王は、前に出る。

 

 守るために。

 止まらせるために。

 

 本当の意味での勝負が、ここから始まる。

 レースノーワンの身体から、赤黒いエネルギーが噴き上がる。

 理屈を失った怒りが、そのまま力へと変換されていた。

 

 観客席に、悲鳴が走る。

 

 その光景を前にして、

 古谷靖紘は、一歩だけ前に出た。

 

 逃げない。

 視線を逸らさない。

 

「……陸王」

 

 呼びかけは短い。

 だが、迷いはなかった。

 

「ここからは、

 俺も走るだけじゃ足りない」

 

 古谷は、自身のテガソードを握る。

 レースのためではない。

 守るための“次の段階”だ。

 

 レースノーワンが嗤う。

 

「一位でもないくせに……

 まだ立つつもりか!」

 

 その嘲りに、古谷は答えない。

 

 代わりに、 テガソードを構え、はっきりと言い切った。

 

「エンゲージ!」『ゴーオンジャー!』

 

 駆動音が弾ける。

 エンジンが噛み合うような重低音と共に、エネルギーが古谷の身体を包み込んだ。

 古谷は拳を握り、足を踏みしめる。

 走るための姿勢ではない。

 受け止め、叩き返すための立ち方だ。

 

「一位かどうかなんて、関係ない」

 

 その声は、落ち着いていた。

 

「走り切った。

 守るって決めた。

 それだけで――十分だ」

 

 隣で、陸王が一歩並ぶ。

 

 「なら、そのレース、僕も最後まで見届けようか!」

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