ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦   作:ボルメテウスさん

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光と氷の反射

 広場の街灯が、巨大化したシャイニングナイフの影に呑まれていく。舗装が裂け、触手が地面の下からも浮き上がり、逃げ遅れた車を絡め取っては引きずった。避難の列は遠ざかっているのに、残る救護班の足音だけが妙に大きい。真白はその音を一度だけ確かめ、視線を敵へ戻す。迷う時間は要らない。守るべきものが残っているなら、ここで裁く――それだけだ。

 

「退け。俺様の番だ」

 

 指を鳴らす。空気が握り潰されるように歪み、次いで巨体が落ちた。グーデバーンの着地が地面を沈ませ、粉じんが輪になって広がる。胸部の灯りが一度、二度と脈打ち、拳部の装甲が打ち鳴らされるように開閉した。言葉はないが、呼びかけへの返答として十分だ。真白は鼻で笑い、上から裁定するように言い切る。

 

「遅い。……だが、合格だ」

 

 搭乗口が開く。真白が迷わず飛び込むと、視界が切り替わった。外の街灯、救護班の動き、敵の影――それらが“巨体の目”として重なってくる。操縦桿を探す必要はない。拳を握れば、重心が応じる。グーデバーンの拳が構えの位置まで上がり、空気が低く唸った。機体が先に一歩出ようとする圧が、真白の背骨に伝わる。

 

「黙れ。焦るな。順だ」

 

 俯瞰すれば、巨大シャイニングナイフは細長い刃の影と、蜘蛛の巣のような触手の網で広場を塗り替えている。中景に寄れば、触手は地面の裂け目を縫って、グーデバーンの足元へ最短で滑り込む。さらに寄れば、触手の表面に黒い脈動が走っていた。吸っている。恐怖と混乱の気配を、会場から持ち出した残響を、そしてケークから奪った何かを核にして巨体を安定させている。

 

「足りない……もっとだ」

 

 シャイニングナイフが刃を振る。大振りではない。合理的な最小の軌道だ。触手が先に脚を引き、崩れた角度へ刃が落ちてくる。真白は拳を半歩引き、受け止めではなく“ずらし”で逃がした。装甲が削れ、火花が散る。グーデバーンが怒ったように拳を震わせる。真白は冷たく言い切る。

 

「足りん。そんな刃で俺様は倒れん」

 

 拳の連打で触手を潰しても、すぐ別の触手が補う。倒せないのではない。倒しても終わらない。吸収が続く限り、相手は安定し、こちらの一撃は“ただ壊すだけ”で終わる。真白は巨体の視界の端で、担架が救護車へ運ばれていくのを確認した。そこに、一人の女性がいた。フラッシュマンのユニバース戦士――演奏会の客として、あの夫婦を見ていた彼女だ。昏倒したケークの搬送を見送り、拳を握りしめている。泣かない。ただ、目だけが強い。

 

 彼女の手の中で、小さなリングが光った。彼女は走らず、転ばない速度で近づく。外部スピーカーへ声を投げた。

 

「……あの二人に、せめて良き終わりを。これ以上、奪わせないで」

 

「礼はいらん」

 

「礼じゃない。お願いでもない。……終わらせ方の話」

 

 真白は一瞬だけ黙った。拒むのは美学だ。だが、止められないのは裁定の失態だ。グーデバーンの拳部が、彼女の手元へ向けてわずかに開く。機体が先に答えを出した。真白は舌打ちの代わりに言い切る。

 

「……手順だな、寄越せ」

 

 リングがセットされた瞬間、拳の輪郭に光が走った。派手な火力の増幅ではない。光は薄い膜のように拳を包み、衝撃の“質”だけを変える。グーデバーンが小さく拳を打ち鳴らす。応答。真白は即座に命令する。

 

「壊さずに、ほどけよ!!」

 

 近景。触手の黒い脈動――吸収の流れが、拳の一撃で“切れる”のではなく、“分かれる”。分離され、押し出され、空気へ吐き戻される。触手が一瞬だけ痙攣し、網の張りが緩んだ。中景。シャイニングナイフの巨体が揺れる。安定が崩れたのだ。真白はその揺れを見逃さない。拳が踏み込み、ボディに一発、二発、続けてアッパー。衝撃は破壊ではなく、吸収の回路を外へ追い出すための“押し分け”として働く。黒い脈動が途切れ、刃の軌道がわずかに乱れた。

 

「吸え……吸え……!」

 

「吐き出せ!」

 

 シャイニングナイフが最後の合理に賭け、触手を束ねて再吸収を狙う。だが、分離の拳がそれを許さない。触手が拳に触れた瞬間、吸い込みが反転し、脈動が外へ弾き出される。巨体の足元の“根”がほどけ、姿勢が崩れた。真白は“終わらせ方”を選ぶ。粉砕ではない。止めるための一撃。俯瞰。広場の中心で、拳が一度だけ大きく引かれる。

 

「ここで!俺様が止める!」

 

 拳に冷気が集まり、氷が輪郭を上書きする。グーデバーンが踏み込み、巨大シャイニングナイフの核へ――氷の拳が叩き込まれた。衝撃の中心が凍り、動きが止まり、触手の網がばらばらと力を失って落ちる。吐き戻された脈動が風に散り、重かった空気が少しだけ軽くなった。

 

 遠景。救護車の扉が閉まる。彼女はその背を見送り、肩の力を落とした。歓声はない。ただ、終われる形を作れたという静けさが残る。真白はリングの感触を一度だけ確かめ、言い切って締める。

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