ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
砂利を踏みしめた瞬間、指輪が熱を帯びた。
逃げ場のない採掘場の中心で、俺は息を整える暇もなく拳を握り締める。
「――行くぞ」
短く言い切った次の瞬間、全身を野生の衝動が駆け抜けた。
『ワイルドパワーアップ!』
咆哮のような音声と共に、力が爆発する。理性の奥に眠っていた獣性が解き放たれ、視界が鋭く研ぎ澄まされていく。
ワイルドゴジュウウルフ。
身体が軽い。速い。今なら、どんな一撃も受け止められる気がした。
間を置かず、俺はもう一つの指輪を掲げる。
『センタイリング!キングオージャー!』
黄金の威圧感が重なり、王の風格が野性を統べる。
二つの力が拮抗しながら噛み合い、俺の中で一つの覚悟に変わった。
だが――
『ガリュード』
低く、歪んだ音声が採掘場に響いた瞬間、空気が変わった。
クオンの身体を包む装束が異様に変化していく。
首元のマントは白を基調に、血のような赤いラインが走り、そして左目――そこに、新たな薄紫色の光が灯る。
ぞくり、と背筋が冷えた。
見た目の変化だけじゃない。
その身体から溢れ出すのは、これまで感じたことのない厄災の気配だった。重く、粘つくような圧が、空気そのものを歪ませている。
「……っ」
無意識に身構える。
これは、ただの指輪の力じゃない。
兄貴は、もう一歩、深いところへ踏み込んでいる。
――止める。
どんな姿になろうと、どんな力を纏おうと。
踏み出した瞬間、世界が狭くなった。
粉塵の舞う採掘場を、俺となつめは一直線に駆ける。視界の端で砕石が弾け、地面の凹凸が高速で流れていく。迷いはない。ガリュード――兄貴は、正面にいる。
次の瞬間だった。
ガリュードの腕部が展開し、テガジューンが唸りを上げる。
引き金を引く動作は、ほとんど見えなかった。
――来る。
空気が裂ける音。
弾丸が、最初から“速い”わけじゃない。
放たれた直後は、かろうじて視認できる。だが、距離を詰めるほど、弾速が跳ね上がる。撃ち出された銃弾が、途中から別物になる。まるで「獲物を捉える」ことを思い出したかのように。
「……っ!」
俺は地面を蹴り、横へ跳ぶ。
砂利が砕け、直後に爆ぜる音が背後を貫いた。
身軽さだけで避けているわけじゃない。
次に来る弾道を、感覚で読む。
撃つ。避ける。撃たれる前に、撃つ。
腕を振り抜く。
オルガブースターが火を噴き、推進力を帯びた一撃が空を切った。衝撃波が銃弾の軌道を歪め、弾丸同士が空中で弾き合う。
だが、止まらない。
ガリュードは一切動じず、淡々と弾幕を重ねてくる。
近づくほどに、弾の“伸び”が違う。距離が縮まるほど、避ける余地が削られていく。
「なつめ!」
「分かってる!」
背後で、なつめがマントを翻す。
その布が、不自然なほど硬く、鈍く光った。
「硬化!!」
なつめの特殊能力が、マント全体を覆う。
直撃した銃弾が、甲高い音を立てて弾かれる。だが、その衝撃は確実に体へ伝わっているはずだ。それでも、なつめは一歩も引かない。
「前に出る!」
俺は応えるように、さらに加速した。
銃弾が、もはや“雨”じゃない。
槍だ。
一本一本が意思を持って突き刺さりにくる。
それでも、距離は詰まる。
十メートル。
五メートル。
視界いっぱいに、ガリュードの姿が迫る。
俺はテガソードを引き抜いた。
なつめも、同時に構える。
次の瞬間、金属音が炸裂した。
――ガンッ!!
テガソード同士の衝突……じゃない。
テガジューンが刃を受け止め、そのまま至近距離で銃口が開く。
「……っ!」
反射的に身を捻る。
頬を掠めた銃弾が、背後の岩を抉った。
近い。
近すぎる。
この距離では、弾丸はもう“回避できる速度”じゃない。
撃たれた瞬間に、当たる。
だから――
当たる前に、叩く。
俺はテガソードを振り下ろし、なつめはマントで銃口を押し流す。
その隙間から、再び弾丸が放たれる。近接戦闘のはずなのに、銃撃戦は止まらない。
ガリュードは、剣と銃を同時に扱っている。
受け止めながら、撃つ。
捌きながら、撃つ。
――化け物じみた精度だ。
息が荒くなる。
だが、引くわけにはいかない。
俺となつめは、並んで踏み込んだ。
剣戟と銃撃が、至近距離で噛み合い、採掘場に火花と轟音を撒き散らす。
ここから先は、気合いじゃない。
一瞬の判断ミスが、致命傷になる。
銃声が、採掘場を引き裂いた。
俺は地面を転がり、反射的に跳ね起きる。背後で砕石が砕け、白い粉塵が舞い上がった。ガリュードは距離を取りながら、淡々とテガジューンを撃ち続けている。弾速はさらに上がっている。さっきまでとは、明らかに違う。
――違和感。
次の瞬間、ガリュードがこちらではなく、なつめを見た。
ほんの一瞬。だが、その一瞬で分かった。
邪魔だと判断した。
「……なつめ!」
叫ぶより早く、ガリュードが後方へ跳ぶ。
俺となつめの間に、無理やり距離を作る動きだった。
ガリュードは、テガジューンの側面を操作する。
センタイリングが装填される音。
『リュウソウジャー』
低く響いた音声と同時に、空気が歪んだ。
ガリュードの前に、赤い戦士が顕現する。
――リュウソウレッド。
迷いはなかった。
召喚されたその瞬間から、狙いは一つ。
なつめだ。
「来る!」
なつめが叫び、即座に動いた。
リュウソウレッドは地面を蹴り、一直線に突っ込んでくる。手にはリュウソウケン。無駄のない構え。剣に特化した、洗練された殺意。
「……っ」
なつめは一瞬も迷わず、別の剣を引き抜いた。
オージャカリバー。
重厚な刃が、リュウソウケンを真正面から受け止める。
――ガキンッ!!
金属音が、俺の戦場にまで響いた。
視界の端で、剣と剣が火花を散らす。
そこには銃声はない。ただ、刃と刃がぶつかる音だけ。
剣戟戦だ。
「……分断されたな」
ガリュードの声が、冷静に響く。
振り向いた瞬間、弾丸が迫っていた。
俺は咄嗟に横へ跳ぶ。
ワイルドゴジュウウルフの感覚がなければ、今ので終わっていた。
「相手が増えようが……関係ない!」
オルガブースターを起動し、反撃を放つ。
推進力を乗せた一撃が、弾丸と弾丸を相殺する。
だが、ガリュードは動じない。
むしろ、銃撃の精度が上がっている。
――完全に、俺を“引き付け役”にした。
一方で、なつめの戦場はまるで違う。
リュウソウレッドは剣一本で距離を詰め、斬撃を重ねていく。直線的だが速い。重さと鋭さを兼ね備えた斬り下ろし。
なつめはそれを、受け、流し、返す。
オージャカリバーの刃が、リュウソウケンと何度も噛み合う。
そこには駆け引きがある。銃撃のような即死性はないが、一太刀の重さが違う。
「……っ!」
なつめが一歩引く。
だが、すぐに踏み込み直す。
逃げない。
俺の視界に、その背中が映る。
――信じろ。
俺は銃撃を掻い潜り、ガリュードへ突っ込む。
近づくほど、弾速は跳ね上がる。
だが、距離を詰めなければ、止められない。
「いい判断だ、吠」
ガリュードが言う。
「役割を分けた。……君は、ちゃんと“守る側”だ」
その言葉に、怒りが湧いた。
「勝手に決めるな!」
銃声と剣戟が、同時に響く。
この戦場は、二つに割れた。
銃弾が支配する場所と、刃が語る場所。
だが――
どちらも、俺たちが引く理由にはならない。
銃声と衝撃が止み、採掘場に重たい沈黙が落ちた。
粉塵の向こうで、ガリュード――クオンが立っている。その姿は揺らがない。まるで、怒りと憎しみだけで形作られた像のようだった。
「お前は本当に屑だね」
低く、しかし確実に俺を貫く声。
言葉が刃になって、胸に突き刺さる。
「お前のせいで僕の願いがどれだけ失った事か」
テガジューンがわずかに持ち上がる。引き金にかかる指が、震えているのが見えた。怒りだけじゃない。悲鳴に近い。
「お前を追って、ノーワンワールドに行きさえしなければ!」
次の瞬間、衝撃。
身体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。
「うわぁあっ! うっぐっ……!」
肺の空気が押し出され、喉から掠れた声が漏れた。視界が一瞬白く染まる。それでも、歯を食いしばって立ち上がる。
「過去は変えられねぇだろ! いい加減、前を向け!」
叫んだ言葉は、俺自身に向けたものでもあった。
変えられない。だからこそ、進むしかない。
「僕だって、そうしたかった」
クオンの声が、わずかに揺れる。
「けど無理だった。お前への怒りが消えない限り、お前が消えない限り!」
その身体から、異質な圧が溢れ始める。空気が重くなり、足元の砂利が音もなく沈む。
「僕の中の厄災が! より膨れ上がる!!」
その叫びと同時だった。
なつめが対峙していた赤い戦士が、歪む。
装甲が黒ずみ、重厚な鎧へと変質していく。光を拒むような質感。まるで闇に沈んだ騎士だ。なつめが息を呑むのが分かった。
「……そんな」
返事をする暇もなく、二本の刃が振り下ろされる。
速い。重い。剣というより、裁きそのものが迫ってくる。
「くっ……!」
なつめは必死に受け止め、後退する。火花が散り、地面に深い溝が刻まれた。追い詰められていくのが、遠目にも分かった。
「お前はジャンク品だ」
クオンの視線が、再び俺を捉える。
「ジャンク品じゃなければならない! だからね、同じ所まで2人で墜ちよう! 吠!」
銃声と斬撃が、同時に炸裂した。
俺となつめは、ほぼ同時に吹き飛ばされる。
背中から地面に転がり、視界が揺れる。身体が悲鳴を上げる。それでも、止まれない。
――まだだ。
俺は膝をつきながらも立ち上がる。
同じように、なつめも剣を支えに身を起こしていた。
「吠さん……まだ、諦めていないですよね」
その声は震えていたが、瞳は折れていなかった。
「当たり前だっ!」
叫ぶ。胸の奥から、無理やり言葉を引きずり出す。
「俺はもう諦めるつもりはない! ジャンク品だったら、最後まで諦めずに戦う! 何よりも!」
一歩、前に出る。
「このまま何も伝えずに負けられるかよ!」
なつめが、強く頷いた。
「えぇ。伝えましょう」
剣を握り直し、前を見据える。
「あの人に。あなたの気持ちを」
視線の先で、ガリュードと闇に染まった戦士が並び立つ。
圧倒的な力の差。厄災は、確実に牙を剥いている。
それでも――
ここで終わらせるわけにはいかない。