ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
採掘場の空気は一瞬、呼吸を止めたように静まり返った。夜の気配が岩肌を這い、重機の影を長く伸ばす。戦いの鼓動は、すでに全身に刻み付けられていた。
そこへ、太鼓と掛け声が地鳴りのように響き渡る。
「いざ掴め! ナンバー! ワァーーーーンッ!!」
応援団の声が、空気を震わせる。固く結ばれた拳のように、声が戦場に刻まれた。
「キン! コン! キンコンカン!!」
金属質な掛け声が、岩肌に反射する。号令は、戦士たちの心に火を灯した。
その瞬間、ガリュードの影が鋭く変わる。
クオンの赤黒い眼光が、こちらを見据えた。
「お前の全てを奪い尽くす。揺らめく赤と黒の激情! リングハンター・ガリュード!」
その声は静かだが、深い狂気を孕んでいた。
刃が閃く前から、敵意が地面を割る。
「お前は僕の獲物だ」
クオンの意志は、刃と化して深く刺さった。
「ゴー! ゴー! ゴジュウジャー!!」
応援の声が再び高まる。
静寂を切り裂くように、生のエネルギーが迸る。
俺は拳を固める。
「俺の世界、もう誰にも壊させねぇ! はぐれ1匹! ゴジュウウルフ!」
俺の叫びは宙を震わせ、存在を誇示する。その声は、これまでの道のすべてを背負っていた。
静寂と轟音の間に、もう一つの宣言が落ちる。
「お前は俺の獲物だ」
その刃のような言葉が、空気を鋭く切り裂く。
そして……。
「No.1バトル! READY GO!」
号令が、戦いの扉を一気に開いた。
振動が足元から空へと伝播し、俺たちの決意を爆発させる。
採掘場の闇が、再び戦意の炎で震えた。
足元の砂利を踏みしめた瞬間、俺の喉奥から、自然発生的な雄叫びが飛び出した。
「ウオオオオオオオッ!!」
それは怒りでも歓喜でもない。
**“戦う覚悟”**の噴出だった。
俺の身体から、熱が迸る。
拳の奥で、オルガブースターの蒼い光が脈打つ。
同時――というより、意図せず呼応するように、赤い閃光がなつめへ走った。
赤い雷。
轟く雷鳴と共に、なつめを包むように閃光が降り注ぐ。
その瞬間、なつめの身体を包んでいた甲殻のラインが、一瞬だけ揺らいだ。
――変わる。
砂埃が渦を巻き、赤い稲妻が夜空へ引き伸ばされる。
なつめの姿が、一瞬だけ白い閃光に飲まれたあと、新たな戦士として立ち上がる。
「……行くよ、吠さん!」
なつめの声が届く。
その声に、ブレはない。
俺も、頷く。
――戦いは、ただの延長じゃない。
敵には敵の先制がある。俺たちには俺たちの答えがある。
俺はワイルドゴジュウウルフとして拳を固め、再び走り出す。
ガリュードへ真っ直ぐ。
剣と銃と雷鳴が交錯する戦場へ。
その向かい側では、キングクワガタオージャーがリュウソウレッドを睨み付けていた。
すでに二本の刃が抜かれている。
二刀を構えた赤い戦士は、闇の重厚なオーラを纏いながら、静かに一歩踏み込む。
「――来い!」
キングクワガタオージャーが前方へ踏み込む。
直後、二本の武器が火花を散らし、斬撃戦が一気に立ち上がった。
――この距離なら、剣だけで十分だ。
振り下ろす。受け止める。揺さぶる。
踏み込んだ瞬間、世界が刃に塗り替えられた。
リュウソウレッドの二刀が、左右から同時に振り下ろされる。
ただ速いだけじゃない。刃の軌道そのものが獣の牙のように噛み合い、逃げ場を削る動きだった。
キングクワガタオージャーは、一瞬だけ腰を落とす。
右手のオージャランスが前に出た。
真正面から、叩き潰すように。
ガァンッ――!
衝突音が爆ぜ、火花が弾ける。
二本の刃を、槍の穂先と柄で強引に押し返す。腕が痺れる。衝撃が肩を突き抜け、足元の砂利が沈む。それでも踏み止まる。
間髪入れず、リュウソウレッドが踏み込む。
二刀を交差させ、今度は斜めに切り裂く。刃が風を裂き、鎧を削る寸前まで迫った。
「――っ!」
キングクワガタオージャーは槍を引き、同時に左手を動かす。
オージャカリバーが閃光を引きながら抜かれた。
剣で受け、槍で弾く。
弾いた瞬間、剣が返る。
金属音が連続して炸裂する。
一太刀、一太刀が重い。互いの腕力が、刃越しにぶつかり合う。
リュウソウレッドは止まらない。
二刀を連続で叩き込み、間合いを詰め、体重ごと押し込んでくる。
その動きは荒々しいが、無駄がない。闇に沈みながらも、剣士としての技量だけは研ぎ澄まされていた。
――だが。
キングクワガタオージャーは、一歩も引かない。
剣で受け、槍で押す。
押し、返し、踏み込む。
オージャランスの柄で二刀を絡め取り、瞬間的に動きを止めた。
その一瞬。
オージャカリバーが横薙ぎに走る。
鎧を削り、リュウソウレッドの身体が大きくよろめいた。
だが赤い戦士は、倒れない。
即座に二刀を立て直し、今度は両手で振り下ろす。
力任せだが、逃げ道を塞ぐ角度だ。
「……終わらせる」
低く呟き、キングクワガタオージャーが前へ出る。
『キングオージャー! フィニッシュ!』
音声が鳴り響くと同時に、二つの武器が眩い光を帯びた。
剣と槍を、同時に前へ。
オージャカリバーとオージャランスが交差しながら迫る。
まるで巨大なクワガタの角が閉じるように。
リュウソウレッドを、左右から完全に挟み込む。
逃げ場はない。
衝撃が一点に集中し、光が爆ぜた。
赤い戦士の身体が吹き飛び、砂煙の中へと沈む。
キングクワガタオージャーは、武器を下ろさず、静かに息を整えた。
激闘の余韻だけが、刃の震えとして残っていた。
金属が噛み合う音が、頭の奥まで響いた。
俺のテガソードと、兄ちゃん――クオンのテガジューンが正面からぶつかり合う。
一撃ごとに腕が痺れ、骨の奥まで衝撃が沈み込んでくる。それでも、止まれない。止まったら、全部が終わる気がした。
斬り合いながら、兄ちゃんの視線が真っ直ぐ俺を射抜いてくる。
「本当は昔からお前が羨ましかった」
その言葉が、剣よりも重く胸に落ちた。
「赤点取っても気にしない、あるがままのお前がな。その証拠に、お前の傍には自然と人がいた」
俺は歯を食いしばり、刃を押し返しながら叫ぶ。
「そりゃ、こっちの台詞だ! 兄ちゃんは昔からなんでも出来て、強くて……俺なんかより、ずっと!」
「いいやお前が強い!」
怒鳴るような声と同時に、テガジューンが叩きつけられる。
「俺の方が何も出来ないんだよ! だから俺がお前を倒して俺がなる! そうする事でしか、俺は生きていけないんだよ!」
胸が、痛かった。
ずっと言えなかった言葉が、喉の奥で暴れる。
「……ごめん、兄ちゃん」
一瞬だけ、剣が止まった。
「はっ」
嘲る声。でも、その奥に揺れが見えた。
「兄ちゃんは俺を追いかけて、ノーワンワールドに迷い込んだ。ずっと謝りたかった。でも……怖かったんだ」
距離が、ほんの少しだけ開く。
「今さら……今さら謝んなよ!」
怒鳴る声が、震えている。
「例え遅くても、伝えなきゃいけない。そう、なつめの願いが気づかせてくれた」
「何も変えられないんだよ! 今更!」
俺は一歩、踏み出した。
「いいや変わる! 何度でも謝る! だからクオン! 俺を許せ!」
その瞬間、兄ちゃんの表情が歪んだ。
「許さない! 俺はお前を許さない! 俺から怒りまで奪うなぁぁ!!」
紫色の光が溢れ出す。
嫌な気配だ。胸がざわつく。厄災が、完全に表に出てきている。
テガジューンがこちらを向いた。
――来る。
放たれた一撃は、極太の紫色のレーザーだった。
逃げ場はない。だから、正面から行く。
「うおおおおお!!」
『オルカブーステッドノヴァ』
音声と同時に、水が呼び起こされる。
俺の周囲を包み込む渦。ブースターを振ると、渦潮が生まれ、レーザーと激突した。
紫と蒼がぶつかり合い、世界が歪む。
『フィニッシュフィンガー』
俺は渦を突き破って突っ込んだ。
ブースターのレーザーと共に、テガソードを振り抜く。
ガリュードの装甲が裂け、厄災の核が見えた。
――これで、終わりだ。
一閃。
紫色の光が爆散し、厄災が霧のように消えていく。
兄ちゃんの身体が、静かに崩れ落ちた。
俺は膝をつきながら、剣を下ろした。
『WINNER――ゴジュウウルフ』
勝ったはずなのに、胸の奥は空っぽだった。
ただ、全部をぶつけたんだ。それだけは、間違いなかった。