ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
喫茶店の中には、昼下がり特有の緩い時間が流れていた。
豆を挽く低い音、カップが受け皿に触れる小さな乾いた音。どれもが穏やかで、戦いの後の世界が確かに続いていることを教えてくれる。
――俺だけが、まだ完全には戻れていない。
ふと、腰の辺りに視線を落とす。
そこにある指輪。キングオージャーのセンタイリング。
なつめから受け取った時のことが、自然と脳裏に浮かんだ。
「……吠さん」
いつもの気弱な声。でも、その奥に覚悟が混じっていた。
「僕、もう一度……前に進こうと思うんです」
差し出された手のひらの上にあったのが、キングオージャーのセンタイリングだった。
「これは……僕の答えです。吠さんなら、きっと正しく使ってくれる」
正直、戸惑った。
俺は“選ばれる側”じゃないと思っていたからだ。願いも定まらず、戦いに身を投げているだけの人間が、誰かの覚悟を受け取っていいのか。
でも、なつめは笑っていた。
怖さを抱えたまま、それでも前を見る笑顔だった。
「僕の願いは、もう見つかりましたから」
その言葉に、俺は何も返せなかった。
ただ、指輪を受け取るしかなかった。
カップを持つ手に、自然と力が入る。
あの時、確かに思った。
誰かの願いを背負うっていうのは、こんなにも重いのか、と。
それでも――嫌じゃなかった。
「……しけた顔だね、吠」
不意に、耳元で聞き慣れた軽い声がした。
「ぶっ……!」
俺は思い切りむせた。危うくコーヒーを吹き出しかけ、慌てて口元を押さえる。
「……その声……。うおっ……! まさか、クオン?」
顔を上げる。
そこに人はいない。あるのは、俺の横に立て掛けてある剣――ガリューデカリバー50だけだ。
「ご名答。僕がそう簡単にくたばると思った?」
剣が、楽しそうに小さく揺れる。
「……疲れてんだ、俺。幻聴だ」
「現実逃避はよくないよ。これでずーっとお前と一緒にいられるね? 吠」
「なっ……! 気持ち悪ぃ……。来んじゃねえ!」
「“お兄ちゃん”でいいよ~。吠へのプレゼントはこの僕さ!」
その瞬間、店内の視線が一斉に集まった。
「今、剣が喋ったように聞こえたんだけど?」
陸王が眉をひそめる。
「……喋る武器か。前例としては、あまり良くない」
禽次郎は冷静だ。
「距離感おかしいだろ!?」
クリスが即座にツッコミを入れる。
「えっと……兄弟仲、いい……のかな……?」
響は困ったように笑った。
「吠~、照れんなって。お兄ちゃんがプレゼントだよ~! 一緒にケーキ食べようよ!」
「やめろ! 店でそれ言うな!」
俺は剣を掴み、思わず強く握りしめる。
うるさい。鬱陶しい。正直、面倒だ。
……なのに。
胸の奥が、少しだけ温かい。
テガソードが、淡々と告げる。
「彼は罰として、この姿になった。自由はない。だが、吠と共に戦い続けることが定められている」
「罰とか言われてるけどさ」
クオンが軽い調子で言う。
「弟と一緒なら、案外悪くないよ」
俺は溜息をついた。
「……うるせぇけど」
剣を見下ろしながら、静かに続ける。
「本音で話せる相手がいるのは……悪くねぇ」
「でしょ? やっぱり兄ちゃんは必要だったんだよ、吠」
「調子乗んな」
そう言いながらも、口元はわずかに緩んでいたと思う。
陸王が肩をすくめる。
「まあ、吠君が少し楽そうだから良しとするよ」