ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦   作:ボルメテウスさん

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奇跡の共同戦線

森の匂いが変わった。湿った土と葉の匂いに、甘ったるい焦げと、鉄みたいな苦さが混ざりはじめる。嫌な予感が背骨を撫でるより早く、闇が“先に”そこにいた。木々の影が伸びるんじゃない。影のほうが、地面から滲み出してくる。

 

「……来たな」

 

介人の声は相変わらず気だるげで、なのに一言が刺さる。俺が刃を構え直した瞬間、闇の中心が割れて、シャイニングナイフが現れた。身体の輪郭が揺らいでいる。刀身みたいな鋭さはそのままなのに、笑い方だけが“人”じゃない。スイートケークの気配はない。いまは気絶している。だからこそ、余計に最悪だった。止めるブレーキが、どこにもない。

 

「はは……はぁ?私は一体……」とでも言い出しそうな口元が、次の瞬間には別物に捻じ曲がる。喉の奥から、黒い笑いが漏れた。闇が胸元から噴き出し、地面に落ちた途端、それは人型の塊へ変わっていく。数が増える。呼吸するみたいに増える。倒しても、倒した分だけ、闇が種になる――そんな嫌な増え方だ。

 

「厄災に支配されている……!」

 

誰かが叫ぶより先に、炎の匂いが割って入った。赤い熱と、花の香りにも似た甘さ。ファイヤキャンドルとブーケが、闇の縁を踏んで現れる。敵だ。間違いなく敵のはずなのに、二人の視線は俺たちじゃなく、暴走するシャイニングナイフへ向いていた。

 

「旦那!眼を覚ませよ!あんたはブライダンの仲間だろうが!」

 

ファイヤキャンドルの声が、闇を叩く。怒鳴り声なのに、芯にあるのは叱責じゃない。呼び戻すための叫びだ。

 

「シャイニングナイフさん!眼を覚ましてください!スイートケークさんも、そんなあなたの姿を見たくありません!」

 

ブーケは震える声を押し殺し、言い切る。倒れているケークの“静けさ”が、その言葉に重みを足した。

 

シャイニングナイフの肩が跳ねた。闇が一瞬だけ薄くなる。頭がゆっくり持ち上がり、視線が彷徨って、ファイヤキャンドルとブーケの顔を確かめようとする。しかし次の瞬間、喉の奥から悲鳴みたいな笑いが漏れ、両手で自分の頭を抱えた。いやだ、と言う前に身体が拒絶している。

 

「私は愛する妻を殺した!殺してしまった!いやだぁ!私は、そんな厄災に戻りたくがぁぁぁぁぁ!!」

 

叫びは森を裂き、闇が呼応するように爆ぜた。戦闘員が一斉に増える。影が地面を舐め、木々の根元から黒い泡のように湧き上がり、群れが形を成す。ファイヤキャンドルが反射的に前へ出てブーケを庇い、ブーケは倒れたケークを守る位置へ半歩下がった。助けたい。けれど近づくほど危険になる。その矛盾が二人の動きを縛る。

 

俺の胸が、嫌な冷たさで締まった。あの叫びは“罪悪感”だ。自分を責め続ける声だ。だからこそ、そこに付け入る隙がある。厄災は、弱った心の隙間をこじ開けて支配権を奪う。

 

シャイニングナイフが、ふっと黙る。さっきまでの取り乱しが嘘みたいに、呼吸が整う。背筋が伸び、首がゆっくり左右に回って、戦場を“点検”するような目つきになる。声も変わった。熱が消え、冷たく、平たい。

 

「……感情はノイズだ。罪も愛も、動力としては不安定だ」

 

その言葉だけで、空気が一段、凍る。ファイヤキャンドルが歯を噛み、ブーケは息を呑む。俺は刃を握り直し、介人はわずかに銃口を上げた。今、ここにいるのは“シャイニングナイフ”の顔をした別物だ。人の痛みを材料にする、冷血な厄災の側。

 

闇が再び溢れ、戦闘員が増殖を始める。だが今度は“悲鳴に反応して勝手に生まれている”のではない。命令で生まれている。整列し、向きを揃え、こちらへ殺意の線を伸ばしてくる。救いたい二人の願いが、いちばん残酷な形で試される。

 

「……旦那」

 

ファイヤキャンドルの声が低くなる。

 

「助ける。殴ってでも、引き戻す」

 

「吠、どうする?」

 

介人の声は淡々としている。答えを強要する音じゃない。逃げ道を塞ぐ音だ。俺は歯を食いしばり、喉の奥の乾きを飲み込んだ。願いはない。確かにない。でも――目の前にあるものは分かる。守りたいものが“いま”ここにある。

 

「願いは、ねぇ」

 

言った瞬間、胸が痛んだ。空白を口にすると、そこが露出して冷える。でも、続ける。

 

「けど今は――夢を守るために戦う」

 

「夢?」

 

ブーケが怪訝な顔をする。ファイヤキャンドルが一瞬だけ目を細める。介人は表情を変えない。ただ、ほんの少しだけ、視線の圧が落ちた気がした。

 

「ここにいるやつらの夢だ。誰かの歌とか、誰かの明日とか、誰かの“やり直し”とか……そういうのを、厄災に踏みにじらせねぇ」

 

シャイニングナイフがこちらへ向けて刃を振り上げる。闇が刃にまとわりつき、振り下ろされる前から空気が裂ける音がした。俺はウルフカリバー50を強く握り、足を踏み込む。

 

「共同戦線、張るぞ!」

 

叫んだのは俺なのに、返事は四方から返ってきた。

 

「条件がある。観客と一般人を巻き込ませない。……それだけだ」

 

ファイヤキャンドルが言い切る。

 

「仕方ないわね。あれを野放しにしたら、私のドレスまで台無しだもの」

 

ブーケが舌打ちしながらも前に出る。

 

介人はギアトリンガーを軽く回して、こちらを一瞥した。

 

「君の答え、聞いた。今はそれでいい。――止めよう」

 

“今はそれでいい”。その言い方がムカつくのに、背中を押された気がした。俺は遠吠えみたいに息を吐き、刃を構え直す。闇の戦闘員が押し寄せる。厄災の笑いが森を満たす。だけど、ここにいる全員の利害が、一本に束ねられた。

 

シャイニングナイフを止める。闇の生成を止める。スイートケークを取り戻す。

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