ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦   作:ボルメテウスさん

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兄弟の絆

闇は“黒い煙”みたいに見えるのに、肌に触れる感触だけは粘る。見上げた先で、輪郭のない巨人がこちらを覗き込んでいる。目がないはずなのに、目線だけがある。俺はリョウテガソードの柄を握り締め、喉の奥の乾きを飲み込んだ。

 

「……来いよ」

 

テガソードが応えるみたいに、胸の奥で金属が鳴った。次の瞬間、頭上から降ってきたのは声だ。

 

『アウェイキング!アライジング!』

 

俺は息を吐ききるように叫ぶ。

 

「リングイン!超越人神一体!リョウテガソード!」

 

『リョウテガソード!降臨!』

 

視界が白く弾けた。大地の底から柱が伸びるように、鋼の巨躯が立ち上がる。空が近づき、森が縮む。俺の身体が“操縦席”に固定され、手足の感覚が巨大な両腕へと繋がった。次の一拍で、リョウテガソードが着地する。ガイア着地みたいな土煙が爆発して、木々が一斉にしなる。地面が揺れ、土の匂いが鼻の奥まで一気に押し寄せた。

 

土煙の向こうから、厄災が動いた。巨体のまま突っ込んでくるんじゃない。身体が“流体”みたいにほどけ、槍のように尖り、鞭のように伸びる。次の瞬間には、それが刃の雨になって降ってきた。狙いがいやらしい。頭部、関節、操縦席へ通じる中心――弱い場所だけを刺しにくる。

 

俺は両手の剣を構え、まず受ける。金属が噛み合う衝撃が操縦席の骨まで響いた。受けた瞬間に押し返す。押し返しても、厄災は“形”を変えて逃げる。切ろうとした場所だけが霧になり、次の刃が別角度から突き刺さる。倒す相手じゃない。削っても削っても、同じ質量が別の形で戻ってくる。

 

「……っ、しぶとい!」

 

右の剣で払い、左で叩く。叩いたはずなのに、叩いた感触が途中で消える。闇が“空洞”になって衝撃を吸い、次の瞬間に硬化して反撃してくる。鞭が鎖に変わり、鎖が杭に変わる。杭が地面に突き刺さり、そこからさらに闇が盛り上がって腕を絡め取ろうとした。

 

俺は踏ん張り、脚部の出力を上げる。踏み込みが遅れると、絡め取られる。絡め取られたら、操縦席ごと“引きずり込まれる”。嫌な未来図が、頭の端で勝手に完成する。

 

「離せ!」

 

両手の剣を交差させ、絡みついた闇を“挟んで”引き裂いた。裂け目から黒い粉が舞い、風に乗って広がる。その粉が落ちた地面から、また小さな戦闘員の影が芽を出そうとする。つまり、巨体の厄災が戦いながら同時に増殖もしている。真正面から押し切るには、相手の土俵が広すぎる。

 

厄災が笑った気がした。音じゃない。振動だ。地面が低く唸り、リョウテガソードの装甲がきしむ。闇が腕になり、腕が“盾”になり、盾が“口”になる。口が開いて、吸い込む。吸引だ。土煙も、破片も、俺の踏ん張りさえも奪おうとしてくる。

 

俺は両手の剣を地面へ突き立てた。刃が楔になって、巨体の体重を止める。操縦席の体が浮きかけ、ベルトが腹を締め付けた。視界が一瞬揺れて、呼吸が乱れる。これ、長引いたら負ける。力負けじゃない。持久戦で心が削られる。願いの有無を試すなら、こういう戦いだ。

 

「……俺は、折れねぇ」

 

言葉にした瞬間、操縦席の奥でテガソードが応えるみたいに熱を返した。俺は剣を引き抜き、巨体を半回転させる。吸引の中心から“外す”。外した先で、厄災の腕が追ってくる。追ってくる腕を、今度は受けずに斬る。受けると重さで止まる。斬れば、形を変えても“分断”だけは残る。

 

刃が闇を切り裂き、切り裂いた断面が一瞬だけ光る。そこに“核”みたいな濃い紫が見えた。目じゃない。でも、見てしまった。あれが本体の濃度だ。あれを露出させ続ければ、止められる。

 

厄災が嫌がるように、身体を波にして後退する。波が盛り上がり、巨大な拳へ変わる。真正面から叩き潰すつもりだ。俺は両手の剣を水平に構え、拳の中心へ突っ込む。衝撃が操縦席を殴り、奥歯が鳴った。耐えろ。ここで止まったら、拳が潰す。俺は出力を上げ、刃を押し込む。闇が裂け、紫の濃度が露出する。

 

その瞬間だけ、世界が静かになった気がした。厄災が“痛み”を覚えたみたいに、形を保てずに揺らぐ。俺は逃さず、もう一段踏み込む。

 

「ここだ……!」

 

だけど、厄災はすぐに形を崩し、逃げるように分散する。分散しながら、別の腕が背後から伸びた。狙いは剣じゃない。操縦席に繋がる中心。闇が“刺”になって迫ってくる。

 

俺は咄嗟に、両手の剣を引いて防御へ回した。間に合った。だが防いだ代償に、攻めのリズムが途切れた。息が上がる。汗が首筋を伝う。リョウテガソードの動きが、わずかに重い。俺は苦戦している。

 

土煙の向こうで、厄災はまた形を変えた。さっきまで腕だった闇が、蛇みたいにうねり、次の瞬間には刃の束になって降ってくる。リョウテガソードの装甲に叩きつけられるたび、操縦席まで鈍い衝撃が届いた。受ければ受けるほど、こっちの動きだけが重くなる。斬っても斬っても、裂けた端から闇が“つぎはぎ”みたいに増殖して、すぐ別の形で戻ってくる。こいつは、殴り合いの土俵に乗った時点で負ける相手だ。

 

俺が両手の剣を交差させ、また核の濃い紫を探そうとした瞬間、背中側から伸びた闇が、操縦席へ繋がる中心へ突き刺さろうとした。反射で防いだが、刃が弾かれ、巨体が半歩沈む。足元の地面が割れ、土の匂いと一緒に、嫌な確信が胸に落ちた――このままだと、押し切られる。

 

その時、操縦席の空気がふっと軽くなった。寒気でも熱でもない、妙な“空白”が入り込む。ウルフデカリバー50の柄の奥、そしてガリューデカリバー50の黒い装飾の奥で、薄紫の光が瞬いた。

 

「どうやら、僕の力も必要なようだね、吠」

 

「兄ちゃん!あぁ、力を貸してくれ!」

 

声は操縦席の横で鳴ったのに、耳じゃなく骨に響いた。視界の端で、黒い剣の意匠がわずかに笑った気がする。いつものふざけた調子じゃない。けれど、妙に嬉しそうな温度だけは残っていた。

 

次の瞬間、リョウテガソードの両腕が唸りを上げた。巨大な腕部が展開し、そこへ赤い光が走る。ウルフデカリバー50の意匠が、獣の血管みたいに脈打って装甲へ食い込み、赤い腕として形を取った。遅れて黒い波が重なる。ガリューデカリバー50の黒とメタリックグレーが、鋼の骨組みに絡みつき、もう一方の腕へと変わっていく。赤と黒、二つの剣が巨大な腕そのものになる感覚が、操縦席の俺の両肩に直結した。

 

「「リョウテガソードデカクロウ!!」」

 

厄災が反応する。形を変える速度が上がり、闇が粘土みたいに盛り上がって、巨大な槍になった。狙いは関節。動きを止めれば勝てると分かっている。だけど、俺の手元にあるのは“動きそのもの”をねじ曲げる力だ。

 

赤い腕が先に動いた。横薙ぎに振るうだけで、空間が切れて、裂け目が生まれる。黒い腕が追い打ちをかけ、裂け目の縁をさらに深く切り広げた。そこに現れたのは、闇の穴だった。吸い込む力を持った小さなブラックホール。木々の葉が逆流し、土煙が巻き上がり、厄災の変形した槍先がわずかに引き寄せられる。

 

「――来い」

 

俺は言葉より先に動かした。ブラックホールの“縁”を赤い腕でなぞり、黒い腕で叩く。穴が一瞬だけ広がり、リョウテガソードの巨体が、物理の手前でふっと消える。

 

次の瞬間、俺は厄災の背後にいた。視界が反転し、森の地形が一拍遅れて追いつく。厄災が振り向くより早く、黒い腕で突き刺し、赤い腕で斬り払う。闇が裂け、濃い紫の核がちらりと見える。だが厄災は逃げる。核を隠すように、身体を薄く伸ばし、霧へ分散させる。

 

――逃がさない。

 

俺はもう一度、空間を切った。ブラックホールが咲いて、瞬間移動。次は右上。厄災が形を変えて腕を伸ばした先へ、こちらが先回りする。赤い腕が“空間の継ぎ目”を切断し、黒い腕が“逃げ道”そのものを塞ぐように裂け目を増やす。厄災が変幻自在なら、こっちは変幻自在の移動で包囲する。形を変える速度が上がるほど、相手は自分の変形に追いつけなくなる。

 

厄災が怒りを振動で撒き散らした。巨体が波になり、森一帯を飲み込む幕へ変わる。視界が黒で塗り潰され、操縦席が沈む感覚が襲う。だが、黒の腕が笑うように脈打った。

 

「ほら、吠。落ち着いて。出口は僕が作る」

 

赤い腕と黒い腕で同時に切り裂く。闇の幕の中に縦の裂け目が走り、ブラックホールが“穴を開けるための穴”として回転し始める。吸い込まれるのは俺たちじゃない。厄災の闇の密度だけが引き剥がされ、核が押し出される。濃い紫が露わになる。そこだけ、夜空みたいに重く、嫌なほど“本体”の気配が濃い。

 

「見つけた……!」

 

俺は息を吸い、空間移動を短く刻んだ。前へ、背後へ、斜めへ。厄災の攻撃が届くより先に位置を変え、核へ当てる角度だけを作り続ける。赤い腕で斬り、黒い腕で叩く。裂け目を増やし、逃げ場を削る。厄災が形を変えるたび、その形が“遅れる”。変形の自由が、逆に足枷になる。

 

そして、核が一瞬だけ、完全に露出した。闇が硬直する。世界が、ほんの一拍だけ静かになる。

 

「今だ、吠」

 

声が重なった。俺は両腕を大きく引き、空間を十字に切り裂いた。ブラックホールが交差し、厄災の周囲の逃げ道が潰れる。核の前に、逃げるための“余白”が消えた。

厄災の核が露出したまま、巨体の闇が波打つ。逃げ道を探すように形を変えるたび、空間の裂け目が追い縋り、ブラックホールの縁が“逃げる先”を先に塞いでいく。俺の両腕は赤と黒に染まり、剣の感触がそのまま巨腕の骨格に直結していた。心臓の鼓動が操縦席の壁に当たって返ってくる。これ以上引き延ばせば、闇はまた増える。角乃たちが作った時間も、ファイヤキャンドルとブーケが踏ん張っている意地も、薄く削れていく。

 

「兄ちゃん、今だ。決めるぞ」

 

「うん。吠、行こう。――二人で、終わらせる」

 

声が重なる瞬間、操縦席の空気が張り詰めた。赤い腕が空間を切り、黒い腕が裂け目を固定する。一本の穴じゃ足りない。厄災の“形”そのものを逃げ場にさせないために、周囲の全方位を塞ぐ必要がある。

 

俺は両手の剣を大きく振り上げ、円を描くように空間を刻んだ。切れ目が連なり、森の上空に、地面すれすれに、厄災の背後に、左右の死角に――無数のブラックホールが灯るように開いていく。ひとつひとつが小さいのに、全部が同時に“吸う”。闇の粒子が引かれ、核の濃紫が剥き出しになる。巨体が波になって逃げようとした瞬間、その波の先に穴が咲き、波が波のまま“落ちる”ように削られた。

 

「「テガソード・狩紅狼バニッシャー!」」

 

俺とクオンの声が重なり、名前が発火点になる。テガソードの巨躯が応え、腕部の剣が唸りを上げた。刃の根元から光が走り、赤と黒の境界が曖昧になって、一つの“狩る意志”としてまとまっていく。狙う場所は核――でも直接斬りに行かない。斬撃を“穴”に通して、全方位から同時に叩き込む。

 

『ウルフデカリバーフィニッシュ』

 

機械の音声が鳴った瞬間、俺は目の前のブラックホールへ向けて両手の斬撃を放った。斬撃は吸い込まれて消えた――ように見えたのは、ほんの刹那だけだ。次の瞬間、厄災を囲む無数のブラックホールから、同じ斬撃が次々と噴き出した。

 

一撃じゃない。連打でもない。包囲だ。

 

背後から、側面から、上から、足元から。逃げた先へ先回りするように、斬撃が現れては消え、消えては現れる。厄災の身体は変形しても間に合わない。盾を作れば盾の裏から切り裂かれ、薄く伸ばせば伸ばした部分が別方向から千切られる。核を隠そうと闇を重ねても、重ねた闇が丸ごと斬撃に刻まれて落ち、落ちた先の穴へ吸い込まれていく。

 

厄災が振動で叫んだ。音にならない怒りが地面を揺らし、木々が軋む。だが、叫んだ瞬間に口の形を作った闇が、別の穴からの斬撃で輪切りにされる。巨大な腕が伸びる。伸びた腕の根元が斬られる。核が濃く光る。光った場所へ、斬撃が集中する。まるで狩りだ。獲物が息を吸う場所を、逃げる癖を、痛がる場所を、全部見切って仕留める狩り。

 

俺の視界の奥で、クオンの気配が笑った。ふざけた笑いじゃない。ようやく“並んで立てた”ことを確かめるみたいな笑いだ。

 

「吠、あと一段。核を――割る」

 

「分かってる!」

 

俺は両腕を引き、最後の斬撃を目の前のブラックホールへ叩き込んだ。斬撃が吸い込まれた直後、周囲の全てのブラックホールが一斉に光った。出口が同時に開く。全方位からの斬撃が一点へ収束し、濃紫の核へ突き刺さる。

 

一瞬、世界が止まったみたいに静かになった。厄災の巨体が“形を保つ理由”を失って、崩れ始める。闇がほつれ、糸が切れ、濃紫が砕け、砕けた破片が穴へ吸い込まれていく。吸い込みきれなかった闇が最後に膨張し、爆ぜた。

 

爆散。黒い粉雪みたいな粒子が森に降り、すぐに光の残滓に変わって消える。巨大な圧が、肩から抜けた。操縦席の揺れが収まり、耳鳴りだけが遅れてやってくる。

 

俺は荒い息を吐きながら、倒れたシャイニングナイフの方角を見た。まだ動かない。けれど、あの“冷血な気配”は消えている。ファイヤキャンドルとブーケの声が、遠くで重なった気がした。助けたいと叫んだ声が、届いた結果だと信じたい。

 

そして、俺達、妙に満足げに息をついた。

 

「……やったな、吠」

 

「うるせ。……ありがと、兄ちゃん」

 

言った瞬間だけ、胸の奥の硬いものが少しだけ溶けた。願いはまだ、言葉にならない。だけど、守ったものがある。その事実だけは、確かに残っていた。

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