ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦   作:ボルメテウスさん

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空の王者と地の王者

採掘場の風が、粉塵を薄く巻き上げる。合図の熱がまだ耳に残っているうちに、背の翼が一度だけ大きく打たれ、空気が裂けた。空へ跳ねた影は、上昇というより“滑空”に近い。高度を稼ぐより先に角度を変え、相手の頭上を斜めに横切る。視界が追いつく前に、弓が引き絞られた。

 

「行くぞっ」

 

放たれた矢は一本ではない。短い間隔で連なり、青白い軌跡が線を重ねる。直撃を狙う矢ではなく、踏み込みの瞬間を潰す矢だ。ハンマーを振り下ろす“溜め”に合わせて足元へ、肩の動きに合わせて胴の横へ。速度で押し切るというより、速さで選択肢を削っていく。

 

地上の影が笑う気配がした。次の瞬間、巨大なハンマーが地面を叩きつける。砕石が跳ね、岩盤が割れ、土塊が噴き上がる。弓矢が作る“線”に対して、地形そのものを“面”として投げ返す防御だ。矢は石の雨へ突っ込み、火花を散らして砕ける。破壊の余波が、遅れて胸を打った。

 

「いやさか……!」

 

祈りのような低い声が落ちると同時に、ハンマーが跳ね上がる。ティラノの“口”が開閉し、噛みつくように空気を喰らうたび、重い風圧がうなる。空の影は止まらない。翼が方向転換のたびに鋭く鳴り、砕石の上を影だけが高速で滑る。矢が降ってくる角度は、撃つたびに変わる。ひと呼吸ぶん、躊躇したら終わりだ。

 

「……まだだっ!」

 

空の影が低く降り、矢の軌道が一段鋭くなる。今度はハンマーの持ち手付近、握りを狙う。直接当てるのではなく、握る指を意識させる。指が意識されれば、豪腕の一撃は一瞬だけ遅れる。だが地上の戦士は、遅れを怖れない。怖れない代わりに、採掘場ごと引きずり込む。

 

「来いよ!」

 

ハンマーが再び地面を砕き、今度は防御ではなく“崩し”として砕石を撒いた。足場がずれて滑る一瞬――空の速さが地面へ触れる瞬間だけ鈍る。その刹那を待っていたかのように、地上の影が岩塊を握りしめて投げ放つ。矢より太い軌道で飛ぶ岩が、空を裂いた。

 

「っ……!」

 

翼が反転し、ぎりぎりでかわす。かわした直後に、矢が追い打ちのように走る。避ける、撃つ、避ける、撃つ。そのリズムは軽いのに、息は軽くならない。対して地上は、叩く、砕く、跳ね上げる。破壊のリズムが採掘場の鼓動みたいに脈打つ。

 

金属音が甲高く響いた。矢が石片を貫いた先、ハンマーの“口”へ突き立ち、刃と歯が噛み合うみたいに火花を散らす。

 

「通すか!」

 

可動した“口”が矢を噛み砕き、欠片が光って降る。その光の中で、地上の戦士が一歩踏み込む。砕石が沈み、地面が鳴る。豪快さは、ためらいを捨てた瞬間にいちばん怖い。空の影は、今度は矢ではなく体ごと急降下する。翼を畳み、風圧で視界を押し潰すように突っ込む。

 

「落ちろ!」

 

迎え撃つハンマーが掲げられ、地面から噴き上げた石片の壁が盾になる。ぶつかる音が岩肌に跳ね返り、何度も遅れて耳を刺した。速さと豪腕が正面から噛み合った瞬間、粉塵の向こうで互いの覚悟だけが、やけにくっきりと見えた。

 

採掘場の空気は、もう砂埃じゃなくて熱そのものだった。翼が風を裂くたびに、上から落ちてくるのは矢じゃない、圧だ。地上ではハンマーが岩盤を叩き割り、砕けた石が盾みたいに跳ね上がって、空からの線を面で押し返す。速さと重さが、互いの得意だけで殴り合っているのに、どっちも一歩も引かないのが恐ろしい。見ているだけの俺の喉が勝手に乾いていく。

 

「……っ、せいっ!」

 

空の戦士が矢を連ねる。一本、二本、三本。狙いは胴じゃない。握り、膝、肩――ハンマーを振る“起点”だけを削っていく。地上の戦士は噛み砕くみたいに笑い、ハンマーを振り下ろすかわりに地面を叩いた。岩が割れ、欠片が噴き上がる。矢は火花を散らして消え、代わりに石の雨が降る。

 

「いやさか……来い!」

 

豪快な踏み込み。砕石が滑っても止まらない。空の戦士が高度を落とした瞬間だけ、地上の戦士の一撃が“届きそう”になる。その瞬間を、空の戦士は理解している。翼を畳んで急降下――と思わせて横へ滑る。視線だけ置いていくようなフェイントに、俺の心臓が一拍遅れる。

 

その時だった。空の戦士が一度だけ距離を切り、手元のテガソードに指輪を滑らせる動きが見えた。戦いの最中に、儀式みたいな所作。けれど迷いはない。装填――待機の光――そして短く、叩くような動作。拍手が鳴った気がした。変身の“手順”が戦場に溶け込むと、妙に現実味が増す。

 

「エンゲージ!」

『タイムレンジャー!』

 

音声が走った瞬間、空気の温度が変わる。赤い戦士の輪郭が締まり、両手に現れたのは二振りの刃――ダブルベクター。二刀流の構えが、そのまま“時間”の刃に見えた。

 

「はっ!」

 

次は地上だ。ティラノの戦士がハンマーを引き、同じようにテガソードへリングを装填する。重さのある腕が、器用に“正確な動作”をやってのけるのが逆に怖い。光が走り、短いクラップ。空の戦士に合わせるように、地上の戦士も変わる。

 

「エンゲージ!」

『ゴーゴーファイブ!』

 

赤い槍が現れた。ブイランサー。槍先が光を孕み、踏み込みのたびに砂利を掻く音が刺さる。

 

二人の距離が一気に詰まった。さっきまで“空対地”だった構図が、今は“刃対槍”に変わる。タイムレッドが二刀を交差させ、横一閃。線が二本、同時に走る。ゴーレッドは槍を回し、刃の軌道を槍身で受け流す。受け止めたのに、腕が震えるのが見えた。二刀の重なりは、単純に二倍じゃない。角度が増える。選択肢が減る。

 

「……っ、まだ!」

 

タイムレッドが踏み込む。右がフェイント、左が本命。逆だ。いや、その逆もある。読ませないために、刃先が“迷っているふり”をする。俺は思わず目を細めた。速い動きじゃなくて、判断そのものが速い。

 

「来いよ、来い来い!」

 

ゴーレッドは笑って前へ出る。ブイランサーを短く持ち替え、突きの間合いを一瞬で詰めた。槍は長いから強い、じゃない。長いから“届く前に当たる”。二刀のどちらかが払おうとした瞬間、槍先が別方向へ滑る。軌道が細い。刺すための線が、タイムレッドの呼吸の隙間を狙ってくる。

 

「せいっ!」

 

タイムレッドが二刀で受ける。片方で槍身を弾き、もう片方で手元を狙う――その瞬間、ゴーレッドが槍を回転させ、柄尻で地面を叩いた。砂利が跳ね、視界が一瞬だけ霞む。タイムレッドの刃が空を切った刹那、槍先が戻ってきて、火花が散った。刃と槍がぶつかる音が、採掘場の壁に跳ね返り、遅れて何度も鳴る。

 

「……っ、いいね」

 

タイムレッドの声が低い。余裕じゃない。楽しいから出る声だ。ゴーレッドも、同じ顔で笑っている。二人とも、願いを知っている。だから手を抜かない。だから、怖いくらい真っ直ぐだ。

 

タイムレッドが一歩下がって、二刀を平行に構える。次の瞬間、左右の刃が同時に走った。交差じゃない。並列の斬撃。避け場所を“半分にする”切り方だ。ゴーレッドは槍を真横にして受け止め、受け止めた反動で槍を回し、今度は薙ぎ払いで押し返す。二刀が跳ね、槍が唸る。火花が飛び、熱で砂埃が揺らめく。誰もいない採掘場だからこそ、音も熱も、全部そのままぶつけ合える。

 

俺は拳を握った。どっちが勝つか、じゃない。どっちも“勝つために全力を出していい”戦いだ。ここから先、どっちが先に踏み込みの癖を読まれるか――その差で決まる。

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