ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
二人の戦いは佳境を迎えていた。互いに持つセンタイリング、その最大限の力を発揮しながら、攻めも守りも限界まで研ぎ澄まされ、戦いは最期の一手へと追い詰められていく。採掘場の空気は粉塵で重く、踏み込みのたび砕石が跳ね、衝撃が遅れて胸の内側を揺らした。翼が風を裂く音と、ハンマーが地面を叩き割る低い轟音が交互に重なり、視界の端では火花が散っては消える。どちらも引かない。引けない。互いの願いを知っているからこそ、軽く終わらせる選択肢が最初からない。
二人は、互いに距離を離す。刹那、音が消えたように感じたのは、次に来る衝撃を身体が先に悟ったからだった。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
「ふううううぅぅぅぅ!!!」
雄叫びが採掘場に反響し、岩肌が震える。叫びは威嚇ではなく、心臓の奥から力を引きずり出す合図だった。同時に、ゴジュウティラノの全身はトパーズのような輝きに包まれ、皮膚の上を宝石の光が走るように煌めく。対するゴジュウイーグルはエメラルドのような輝きを纏い、翼の縁が切先みたいに鋭く光った。呼吸の熱、筋肉の張り、指先の震えまでが、光に変わって漏れ出しているように見える。二人とも、今この瞬間だけは“自分の全て”を解放するつもりだった。
「いやさかぁ!!」
『ティラノハンマークラッシュ』
ゴジュウティラノの叫びが落ちると同時に、ティラノハンマー50が地面へ叩きつけられる。打点で砕石が粉になり、衝撃波が輪になって広がり、採掘場の底から唸り声が湧き上がった。まさしく地震。立っているだけで足裏が跳ね、視界がわずかにぶれる。地面は大きく割れ、亀裂が蛇のように走り、ゴジュウイーグルの足元を呑み込もうとして口を開けた。割れ目の向こうは暗く、落ちれば戻れない深さを感じさせる。
だが、それよりも早く、ゴジュウイーグルは背中の翼を大きく広げていた。砕けた石の雨を蹴散らすように飛び上がり、亀裂が届く前に空へ抜ける。上昇の勢いで粉塵が尾を引き、エメラルドの光がその中を突き抜けていく。空中で体勢を立て直し、腕を伸ばす。狙いを迷わせない、真っ直ぐな構え。手にあるイーグルシューター50が、揺れる地面の上で踏ん張る相手を照準に捉えた。
「これが僕のパーリーピーポー魂だぁ!!」
『イーグルアローシュート』
放たれた一撃は、単なる矢ではない。風圧を切り裂く閃光が一直線に走り、採掘場の粉塵を貫いて、ゴジュウティラノの胸元へ突き刺さるように撃ち抜いた。衝撃が遅れて爆ぜ、トパーズの輝きが一瞬だけ乱れる。踏ん張っていた足が砂利をえぐり、重い身体が仰け反る。
「ぐっがぁぁぁ!!」
叫びと共に、空中に舞い上がるのは、彼の持つゴジュウティラノの指輪と、彼の持つセンタイリングだった。敗北の証みたいに光が弾け、宙を回転しながら、吸い寄せられるようにゴジュウイーグルの元へ向かう。手を伸ばさなくても、勝者へ帰るべき場所を知っているかのように、リングが一直線に滑っていく。それが意味をするのは、ひとつしかない。
『WINNER!ゴジュウイーグル!』
勝利の音声が採掘場に響くと同時に、戦いの熱がすっと抜けた。光が収まり、変身が解ける。禽次郎は荒い息を吐きながらも、倒れた暴神の元へすぐに駆け寄った。砕石を踏む足音が、さっきまでの轟音とは別の現実味を連れてくる。
「竜ちゃっ!大丈夫かっ」
そうして、先程まで戦っていた相手を起こす。暴神は眉をしかめ、胸の奥を確かめるように息を吸い、ゆっくり吐いた。痛みを噛み殺す仕草は見せないが、身体の芯に残る衝撃を受け止めているのが分かる。
「えぇ、勿論。それにしても、負けましたよ、禽次郎さん」
言い終えると、口の端に笑みが浮かぶ。悔しさより先に、納得がある笑みだった。禽次郎の喉が一度鳴り、視線が落ちる。
「・・・すまない」
詫びは、勝者としての礼儀だけじゃない。全力でぶつけたことへの、どうしようもない重さが混じっていた。だが、暴神は首を横に振る。土埃を払うでもなく、まっすぐ前を見たまま言い切る。
「何を謝る事はない。少なくとも、私はあなたに負けてしまった事に対して、何の恨みはありません」
そうして、暴神はそのまま立ち上がる。膝に一瞬だけ力を込め、崩れそうな身体を“信仰心”で支えるように、背筋を通した。
「何よりも、私はテガソード様の僕。ならば、この指輪争奪戦を最後まで見届けます。ですが」
言葉の切れ目で、採掘場の風がふっと頬を撫でた。暴神の表情が柔らかくなり、次に浮かべたのは戦場の顔ではなく、どこか朗らかな笑みだった。
「最後まで禽次郎さん。あなたが勝ち残る事を願っております」
それを聞いた禽次郎は、目を見開き、驚いたように瞬きをする。けれど、すぐに息を整え、胸の奥に火を灯すみたいに頷いた。
「あぁ、その願い、確かに叶えてみせるぞ」