ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
「・・・さて、次は俺達の番だな、陸王」
「そのようだね、吠君」
角乃と真白――あの二人の決着を見届けた直後、山の空気はまだ熱を含んでいた。粉じんは落ち切らず、折れた枝がどこかで乾いた音を立てる。無人のはずの山奥は、静かすぎて逆に耳が痛い。だからこそ、次に来る音が、いやでも想像できた。
俺達もまた、すぐに対決の準備をした。
一歩、立ち位置を確かめる。
一歩、互いの距離を測る。
テガソードを構える指先に、変な汗が残っているのがわかった。
この戦いが終わり、戦い抜けば、願いが叶う。
――ただし叶うのは一人。
喉の奥に、乾いた棘が刺さったままだ。
未だに願いが決まっていない。
そう思った瞬間、胸の底がわずかにずれる。けれど、今の思いは単純だった。理由を並べる必要もない。目の前のこいつと、ちゃんと戦いたい。それだけが、今は確かな重みだった。
互いにテガソードを構えようとした時。
「その対決、待ったァァァ!!」
「っ」
「なにっ」
叫び声が、山にぶつかって跳ね返る。静けさを破るには十分すぎる音量だった。俺達全員が、反射でそちらに眼を向ける。首を回しただけで、空気の温度が変わった気がした。
先程まで無人だったが、そこにはアーイーを引き連れたファイヤキャンドルとブーケがいた。
……いや、いた、じゃない。
“いるはずがないのに、堂々といる”。しかも、場違いなほど元気で、場違いなほど楽しそうに。
「ブライダンがなぜ」
「まさか、戦いの邪魔をしに来たのか」
思わず警戒して呟く。腰が落ちる。視線が尖る。敵だった連中が現れたら、まず疑う。そういう身体の癖は、まだ抜けていない。
だが。
「はっ、そんな野暮な真似をするか」
「えぇ、私達の目的は決まっています!」
ファイヤキャンドルは肩をすくめ、ブーケは胸の前で拳を握ってみせた。どちらも、襲う気配がない。殺気がない。むしろ――妙に晴れやかだ。
それと共にファイヤキャンドルとブーケは互いに睨んだ。
睨む方向、そこかよ。
睨み合いの圧が“喧嘩”じゃなく“宗教戦争”の類に見えて、背中がぞわっとする。
疑問に思っていると、ファイヤキャンドルは俺の後ろに。
ブーケは陸王の後ろに。
そしてアーイー達の群衆も丁度、半分に別れて、その後ろに立っていた。
……整列が早い。やけに手際がいい。あいつら、普段からこういうことやってるのか?
「はぁ?」
疑問に思わず呟くと共に、ファイヤキャンドルは、その手に持つ槍を構える。
槍、と言っても、殺意の角度じゃない。
槍の先端が、ふわっと光る。
次の瞬間、そこに応援団の旗が現れる。
旗。
旗って、お前。
「この指輪の争奪戦のナンバーワンは、俺様の最強のライバル!ゴジュウウルフに決まっているだろ!」
声がやけに通る。山が共鳴する。アーイー達が一斉に息を吸って、「おおお……」みたいな雰囲気を作る。こいつら、合唱隊か何かか。
そんなファイヤキャンドルに対して、ブーケは陸王の文字がある鉢巻きにペンライトを持っていた。
鉢巻き。ペンライト。
どこで仕入れた。いつ作った。早すぎる。
「いいえ!最強は陸王様に決まっていますわ!」
「おっと、これは」
ブーケの言葉を聞いて、陸王は嬉しそうに笑みを浮かべる。
あいつ、こういう“舞台”が来ると目が一段輝く。完全に乗ってる。
「こればっかりはブーケ嬢でも譲れねぇぜ!おい、遠野吠!負ける訳ないだろう!」
ファイヤキャンドルが旗を振るたび、空気が震える。応援のはずなのに、圧が“挑発”のそれだ。
俺は口を開いたまま、閉じるのを忘れた。
「ファイヤキャンドルさんが相手でもこれは曲げられません。陸王様、私は信じています!」
ブーケはペンライトを両手で振っている。光が尾根の影に映って、やたら派手だ。アーイー達も負けじと腕を振り上げ、踊るように跳ねる。
応援の熱量が、戦場の空気を別のものに変えていく。――悪くない。いや、むしろ、心のどこかが軽くなる。
そうして、2人の言葉を聞いて、俺達は笑みを浮かべる。
陸王のほうが先に、口角を上げた。俺も遅れて、鼻で笑う。
「どうやら、この対決。余計に負けられなくなったね」
「それはこっちの台詞だ」
俺の声は少し荒くなる。けど嫌じゃない。
応援されるって、こういう感じか。照れくさいのに、背中が押される。
俺達は、すぐに各々のテガソードにセンタイリングを装填する。
金属が噛み合う音が、同時に鳴る。
指輪がはまる。
息が整う。
視線がまっすぐになる。
「「エンゲージ!!」」
『ゴジュウウルフ!』
『ゴジュウレオン!』
変身の光が山肌に反射して、木々の影が踊る。装甲が組み上がり、体が一段重くなる。心臓が機械のリズムに引っ張られ、逆に落ち着いていくのがわかった。
俺達が変身を完了すると共に、そのままゆっくりと構える。
早足で詰めない。焦って飛び込まない。
互いの呼吸を、互いの目で読んでいる。
「「いざ掴め!ナンバー!ワァーーーーンッ!!」」
同時に、ファイヤキャンドルとブーケは各々が叫ぶ。
“同時に叫ぶ”ってなんだよ。
妙に息が合ってるのが腹立つ。
その叫びに背中を押され、俺達は互いに歩み寄る。土が鳴り、砂利が潰れる。距離が削れていく。
「ゴー!ゴー!ゴジュウジャー!!」
それと共に、俺が先に名乗りをあげる。
自分でも驚くくらい、声がよく出た。
「燃え上がる炎は勝利の灯火!はぐれ一匹 ゴジュウウルフ!お前は俺の獲物だ!」
「いけぇ!遠野吠!」
俺の言葉と共に、ファイヤキャンドルが周囲を燃やす。
燃やすと言っても、殺す炎じゃない。応援の炎だ。――なのに熱い。地面の小枝がぱちぱち鳴って、空気が赤く揺れる。
応援のテンションで山を燃やすな。加減しろ。いや、加減するな。どっちだよ。
だが、それと共に陸王もまた前に出る。姿勢が美しい。足運びが舞台のそれだ。
「ファンの愛に見せるのは華麗な勝利!僕は みんなのゴジュウレオン!僕は 何度でも立ち上がる!」
「陸王様ぁぁぁ!!」
同時に、奴の後ろにいるブーケを初めとしたアーイー達もまたより派手なパフォーマンスをする。
ペンライトが増えてる。いつの間に増えた。
旗も増えてる。どこから出した。
足踏みのリズムまで揃っていて、山が小さく震える。応援というより、もはや儀式だ。
そうして、まさしく合戦前のように構える。
俺は一歩、陸王も一歩。
視線がぶつかり、笑いが消える。
応援の熱だけが背中に残る。
「「ナンバーワンバトル!READY!GO!!」」
2人の言葉を合図に、俺達の戦いの火蓋が切って落とされる。
山の静けさが割れた。
次に鳴るのは、拳か、刃か、意地か。
どっちにせよ――見せてやる。ここにいる全員に。