ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーVS戦姫絶唱シンフォギア ユニバース大戦 作:ボルメテウスさん
響の声が山に跳ね返る。
その直後、レクスの赤黒い装甲がぴくりと揺れた。半歩分の苛立ちが、空気を重くする。次の一撃は、さっきより速い。そう確信できるほど、圧が変わった。
――なのに。
喉の奥で、別の言葉が燃えていた。
禽次郎の灰。真白の消え方。あの笑い方。
掌の指輪が熱くて、痛くて、握り潰したくなる。
「……っ」
息が詰まる。
ここで終わらせない。守る。生きる。
そんな言葉を並べても、胸の底に残る黒い塊が動かない。
レクスがこちらを見た。
笑いが戻る。子どもみたいに軽い。
「ねえ、優勝者。願い、言えば?」
口調がふざけているのに、目が冷たい。
「君は“叶えられる”んだ。なら――何を願うの?」
掌の熱が、刃みたいに尖る。
言葉が勝手に形を取って、喉まで上がってくる。
「……俺の願いは――」
言いかけた瞬間、陸王の手が手首を掴んだ。強くない。逃げられない強さ。
角乃が半歩、前へ出る。竜儀の喉が鳴る。響たちの布陣が、さらに一段、守りを濃くする。
それでも、言葉は止まらなかった。
止めなきゃいけないと分かっているのに、怒りが先に出る。
「目の前に禽次郎と熊手を殺した奴がいるのに……俺が願うのは、あいつの――」
復讐。
その輪郭が言葉になる前に、響が一歩踏み込んだ。
「それは本当に吠君自身の願いなの!」
声が鋭い。怒鳴り声じゃないのに、胸を叩かれる。
響の拳は下ろされていない。レクスへ向けたまま、目だけでこっちを射抜いてくる。
「その言葉、吠君の口から出たら……吠君、戻れなくなる」
息を吸う音が短い。
「怒っていい。悔しくていい。私も、許せない。……でも、復讐を願いにしたら、吠君の“未来”まで持っていかれる!」
レクスが小さく笑った。
「へえ。いいね、喧嘩」
楽しそうに、肩を揺らす。
「そうそう。願いは歪む。歪めば、もっと面白い」
翼が短く告げる。
「敵の言葉に乗るな」
クリスが歯を食いしばり、吐き捨てる。
「あいつ、待ってんだ。お前が壊れるのを」
マリアが一拍置いて言う。
「願いは、あなたを生かすためにある。あなたを壊すためじゃない」
調が淡々と釘を刺す。
「復讐は終わりを作れない」
切歌が拳を握り、声を震わせる。
「吠さん……お願いデス。そこで止まってくださいデス」
陸王の手が、手首から離れない。
その手の温度が、やけに現実的だった。
「吠君」
陸王の声は穏やかで、軽口の形を捨てている。
「君が願いを選べる場所を残したい。――それが僕の願いだ。君を、レクスの土俵に乗せたくない」
角乃が静かに言う。
「私の願いは、加害者にならないこと。……線引きはする。けれど、君の心を焼き捨てる線は引かない」
竜儀が低い声で吐く。
「俺の願いは、厄災を当然にさせねぇことだ。怒りを燃料にするな。芯にしろ。……いやさか」
響が、もう一度だけ言った。
言い聞かせじゃない。手を差し伸べる声。
「吠君。私たちはここにいる。置いていかない」
拳がわずかに揺れる。
「だから――吠君も、自分を置いていかないで」
喉の奥の熱が、すっと形を変えた。
怒りが消えたわけじゃない。黒い塊がなくなったわけでもない。
ただ、その塊を“願い”として投げつけた瞬間、俺が俺じゃなくなると分かった。
掌の指輪が熱い。痛い。
でも、いまの痛みは、逃げるための痛みじゃない。踏みとどまるための痛みだ。
息を吸う。砂の匂い。焦げた金属。
視線を上げ、赤黒い目を真正面から刺す。
「……分かった」
拳を一度、開く。
指輪の重みが、掌の上で揃う。真白の「2代目」が、棘じゃなく芯になる。禽次郎の灰のざらつきが、誓いになる。
「決まったぜ、テガソード。俺の願い」